残留へ向け、残り試合をもう1つも落とせない状況が続いている東京Vだが、前節、5試合ぶりに黒星を喫してしまった。幸運にも、今回は残留争いの相手となっている讃岐も敗れたことで、勝点差は「5」のまま。窮地に追い込まれることだけは切り抜けることができた。その讃岐を下したのが、今節の相手・愛媛である。ライバルが倒せなかった19位チームに勝利し、「自分たちの方が上」と、メンタルの部分から少しでも優位に立ちたいところだ。
まず、前節からの最大のプラス材料は、中後雅喜の出場停止が明けることだろう。前節、せっかく76分という良い時間に、平本一樹、安在和樹、鈴木惇のコンビネーションが生んだ良い形で先制し、勝ち試合に持っていくべき流れだったにもかかわらず、同86分、88分に失点し、逆転負け。冨樫剛一体制になり、結果が出てきた要因の一人であると言っても過言ではないであろうプロ10年目の彼の豊富な経験は、やはり今の若い東京Vには必要不可欠だということが改めて浮き彫りになったと言えよう。「(前節で言えば)リードしてる状況から、どうやって試合を進めていくか。チーム内でバラバラだったと(TVで見ていて)感じた。自分が入って、声をかけたり、はっきりしたプレーをすることで、試合展開に応じた意識統一ができればと思います」と、中後自身も自らの役割をしっかりと受け止めている。「あいつの展開力やフリーで持った時のクオリティの高さはチームに欠かせない」と、平本も全幅の信頼を口にし、期待を寄せている。
敗戦というタイミングも含め、今一度確認したいのがリスタートの守備ではないだろうか。冨樫監督も常に強調してきた通り、前半戦は特にセットプレーからの失点が最大の課題となっていたが、新監督就任以降、「練習でもやられていなかった」。だが、ついに前節、CKから冨樫体制初失点。もちろん、短絡的に敗戦の原因のすべてがそこにあったわけではないが、やはり、あの失点から北九州に勢いを与え、2分後の追加点までも生んでしまったという敗戦への流れ、そして、4試合負けていなかった最大の要因が守備の安定だったことを考えれば、再確認は必要不可欠だろう。その中で、「セットプレーそのものもそうだけど、その前の、CKやFKを与えてしまうまでのところからしっかりと反省することができた」と、冨樫監督は今週のトレーニングでより質の高い見直し、改善ができたと手応えを口にする。そして、「(4試合ぶりに失点して)悔しいけど、この反省をどう残り5試合につなげるか。良い薬になったと思っています」GK佐藤優也は、より強固なDF構築を追及していくためのいいきっかけにすることを誓った。
一方、攻撃面では「ゴールに迫る形も、迫力をもってできている部分も増えてきている」など、選手たちからも前向きな言葉の方が多く聞かれる。もちろん、新体制6試合で3得点、複数得点なしという数字を目の前に、決して楽観することができないことは言うまでもない。だが、前節も2トップを組んだ平本、前田直輝のコンビネーション、そこに安在、澤井直人が絡んだ形など、それぞれの個性を生かしあっての崩しの数が増えてきたことは確かと言っていいだろう。ただ、いずれの形にも、平本が絡んでいることは確かであり、この試合でも間違いなくキーパーソンとなるだろう。
愛媛は、第34節、35節で3位磐田、1位湘南という上位チームに連敗を喫したが、以降は前々節、前節と連勝し、今節は今季2度目の3連勝を目指す。
愛媛のストロングは、高い得点力だろう。総得点48点は、4位北九州(46点)、5位千葉、6位山形(ともに47点)をも上回る、まさに上位クラスと言える。その中で、特に好調なのが西田剛だ。現在9得点は、自己キャリアハイの数字を更新中である。1トップとして、中盤からの精度の高いクロスボールやラストパスからのチャンスをきっちり決められる決定力は、東京Vにとってまさに驚異である。そして、2シャドーにいるチーム得点王の河原和寿、8得点を挙げている堀米勇輝も好調だ。特に、堀米には注目したい。足元も上手く、絶妙なラストパスでゴールを演出することもできれば、自ら裏へ抜け出し、ゴールを決める得点感覚にも優れている21歳の躍動感あるプレーは必見だ。
チーム全体としても、ワイドを使いながらの攻撃と、ボランチ原川力から入る、中央でのキレのある縦パスからの形と、崩しのバリエーションが豊かである。距離間よく、ゴール前で体を張ってピンチを防げている東京V自慢の守備を打ち破ることができるか。そのあたりの攻防がこの試合の大きな見どころとなりそうだ。
以上
2014.10.24 Reported by 上岡真里江
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