3歩進んで2歩下がる。昔の歌で聞いたことのあるフレーズだが、今の清水はまさにそんな状況にある。第27節・C大阪戦、天皇杯準々決勝・名古屋戦と良いサッカーで連勝した後、前節の横浜FM戦では今の良い面を出せずに完敗。だが今回は、ホームで後退することはできず、何としても前に進まなければいけない戦いだ。
残留争いをしている清水のようなチームにとって、今の状況がいちばん難しいところではないだろうか。良くなってきたなと思ったところで一度つまずいてしまった後、ここで自信を失わずに良いときのサッカーを取り戻し、結果に結びつけられるのか。あるいは、自分たちを疑う気持ちが生じ、受け身の戦いになったり、肝心の勝負どころで弱さが出たりしてしまうのか。その違いによって、今後の運命も大きく変わってくるだろう。
それを占う意味で前節の横浜FM戦を振り返ってみると、清水にとっては、前から奪いに行っても奪いきれずにジリジリと押し込まれ、ようやく奪ったボールはなかなか前につなげず、すぐに奪い返されてしまうという展開が続いた90分間だった。つまり、その前の2試合でやれていたサッカーとは真逆のような戦い方になってしまった。
ただ、その原因は「相手(横浜FM)をリスペクトしすぎていた面もあったし、コンディションも良くなかったのか全体的に動きが重く感じた」(大榎克己監督)という面が大きいため、気持ちの切り替えで修正できる部分も多いはずだ。もちろん、中3日の戦いで肉体的疲労は心配だが、新潟も同じ条件だし、何よりホームで戦えるという大きなメリットがある。コンディショニングの面では、スタッフ陣も今回はかなり気を使っており、出足の鋭さやハードワークという面では修正できる条件が揃っている。
あとは、前回ホームで3-0の完勝を成し遂げたC大阪戦のような気持ちの強さを見せられれば、前からアグレッシブに守備に行き、奪ったボールから素早く複数の選手が絡んでゴールにつなげるというC大阪戦と同様のサッカーができるはずだ。当然、サポーターもそのことはよく理解しているので、今回もC大阪戦と同じような最大限のサポートをしてくれるだろう。
一方、中3日で長距離移動してくる新潟のほうは、前節の甲府戦は勝ちきれなかったものの、3試合連続無失点中(2勝1分)と、守備の安定感は相変わらず。第27節の川崎F戦では今季初の3得点を挙げており、新たな2人のFWのうちラファエル・シルバはケガで前節を休んでいるが、195cmの指宿洋史はかなりチームにフィットしてきて、チーム状態は上向きと言えるだろう。また、この試合に勝てば残留がほぼ決まるという状況もあり、アウェイで堅い守備を継続しながらも、勝点3を狙いにいく意識は高いはずだ。
また、甲府戦では「勝点1を取りに来ているチームを崩すことは難しい」(柳下正明監督)という面があったが、今回の清水は勝点1でOKという気はないし、引いて守る意識もない。その意味では前節よりもやりやすい面もあるだろう。
その新潟のキーマンは、やはりボランチのレオ・シルバ。攻守にわたって新潟の中心となっている彼に対して、清水の選手たちも「レオ・シルバをうちの中盤がいかにつぶせるかというのがポイント」(本田拓也)と警戒感を強めている。その意味では、清水の中盤たちが、レオ・シルバに自由を与えないように90分間プレスをかけ続けられるかという部分が大きな注目点となる。
もちろん、清水が思惑通りに主導権を握れたとしても、そこから新潟の堅守を崩すのは簡単ではない。だからこそ、奪った後いかに速く攻めきれるかが大きなポイントになるだろう。また、チーム全体のハードワークという部分は、新潟も非常に自信を持っているところで、球際の強さもかなりのもの。清水としては、その戦いで負けないことも大前提となる。
そう考えると、やはり清水の選手たちがどれだけ身体の切れを取り戻し、ハードワークできるかが最大のポイントになることは間違いない。「エスパルスを支えてくれている全ての人たちのために戦う」というのが、今の清水のキーワード。その気持ちをどれだけ戦う力、身体を動かす力に変えられるかに注目したい。
以上
2014.10.21 Reported by 前島芳雄
J’s GOALニュース
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