富山の出来は悪くなかった。むしろ良い部類だった。序盤から札幌に攻められはしたが、守りには集中力が感じられた。攻撃でも執拗に裏を狙い、こぼれ球を拾って攻め込む時間もつくっていた。50分に先制点を許すまでは。その後は攻撃を組み立てることができなくなり、83分に追加点を奪われて勝負は決した。ミスからあっけなく失点し、それを挽回する力がない。J2残留へ必勝を期した試合でも今季の課題が露呈した。だが、まだ可能性は残されている。戦いは終わっていない。
札幌はFW前田俊介が3試合ぶりに先発して攻撃を操った。彼がボールを持つと周囲が一気に動き出してゴールに迫る。FW都倉賢との2人で起点となり、富山を揺さぶった。34分に前田がドリブルでペナルティーエリア内に進入。直後にもFW中原彰吾が都倉とのワンツーから好機をつくった。41分には前田のスルーパスから都倉が狙い、シュートが左ポストを直撃した。
しかし富山もDFパク テホンやDF池端陽介が都倉のポストプレーに厳しく対応。パスワークにも粘り強くついていって決定機は与えなかった。球際でみせた気迫だけではなく、必要なプレーに徹する姿からも勝利への想いの強さが伝わってきた。攻撃も記録上のシュート数こそ少なかったが、裏へのボールやアーリークロスで仕掛け続け、相手守備陣に緊張をしいる場面が多くあった。同17分にFW苔口卓也のシュートからゴール前の混戦に持ち込む。同39分にはMF内田健太のアーリークロスが際どくゴールを襲った。後半の開始直後にはゴール前でFW宮吉拓実が起点となり好機をつくるがシュートを打ち切れなかった。
札幌は後半、やや中央に偏っていた攻撃の修正を図るとともに、縦パスからのスピードアップとシュートを狙う意識を高めたという。同5分に左ウイングバックのMF石井謙伍がMF上里一将のロングパスで裏に抜け出し、GKとの1対1を制して先取点を挙げた。石井は「前半から富山の対面の選手に下がって対応されていたので、あの時間は最終ラインに近づいて裏を狙っていた」と話す。マーカーの隙を見逃さずにスタートを切り、一発で均衡を破った。
富山の安間貴義監督は「大きな出来事だった」との表現でこの失点を残念がった。「うちの前線3人はスピードがあり、スペースがある時に活躍できる。(先制点を許して)個人能力の高い札幌の選手にスペースを埋められてしまい、なかなかフィニッシュまで持ち込めなかった」。余裕の出た札幌にボールを回されて劣勢が続き、FW白崎凌兵の投入と同時にフォーメーションを変更したが効果的な攻撃を繰り出せない。80分、MF田中寛己の右からのクロスが飛び込んだ苔口に合いかけたのが最大の好機だった。
札幌は83分、カウンターからMF菊岡拓朗が都倉にスルーパスを通して2点目を奪い勝利を決定づけた。アウェイで勝点3を加算し、6位との差を5から3へと縮めた。富山は21位讃岐との勝点11差は変わらず残り試合は5。次節はアウェイで2位松本と対戦する。望みをつないでいくには勝つしか道はない。
以上
2014.10.20 Reported by 赤壁逸朗
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