この一戦に敗れれば、徳島はその日のうちにJ2降格が決まってしまうかも知れない。13位・仙台から16位・清水まで4チームの結果待ち(その4チームのキックオフは徳島のゲームより全て後の時間)となり、もしその結果によって生き残りの勝点ラインが31へ引き上げられると、まだ6戦を残しながら目指したJ1残留は叶わぬ夢になってしまう──。非常に厳しい状況。しかしそれが逃れられない現実である。
そのため徳島に残された道は言うまでもなく一つだけ。迎える神戸に勝ち切るしかない。とにかくチームは終了のホイッスルが鳴った時、神戸よりも大きな数字をスコアボードに灯しておかなければ。(引き分けても可能性は残るが、その場合も他会場の結果で残留勝点ラインが31になれば、得失点差の関係から降格決定にほぼ等しい立場になる)
その使命からして当然この一戦のカギを握るのは高崎寛之らアタッカー陣だが、とは言え得点の可能性が持てる徳島の攻撃は間違いなくいい守備あってのもの。事実今季ここまでを見ても、好機に繋がる仕掛けが出来た時には多くの場合その前に光る守備があった。それをスタートとしてチームはチャンスを作り出したと言えよう。そうしたところから、何より得点が求められる今節ではあっても真に注目すべきは守りの方。組織全体でどれだけいい守備を展開できるかが徳島の運命を決めるポイントにきっとなるはずだ。
そしてそこに欠かせないと思われるのはやはり、高い位置でのボール奪取。自陣深くからの遅攻や一発のロングフィードではなかなか形さえ作らせてもらえないと過去の苦い経験からもう十分分かっているのだから、どうしても得点が欲しいこの一戦では相手ゴールに少しでも近い場所でボールを奪ってひとつでも多いフィニッシュシーンを生み出すことが不可欠であろう。その連続実践がとてつもなく消耗の激しいハードワークで、さらにそれには小さくないリスクも付きまとうと分かっていても、だ。
ただそうした戦いが必要と考えれば、契約上の理由でエステバンがこのゲームに出場できないことは痛い。鋭い読みと出足でこれまで幾度となく相手陣内でのボール奪取を見せてきた彼の不在はかなりの痛手と言えるだろう。それだけに、その代役としてピッチに立つと予想される斉藤大介の出来が重要となるのは明らか。彼にはキャプテンシーを発揮し、守備における前への積極性をチームへ与え続けることが強く要求される。
簡単には勝たせてもらえない厳しい戦いが続くことは開幕前から予想され、実際その通り徳島はここまで相当苦しいシーズンを強いられてきた。しかし今季ホーム初勝利も挙げられていない今のまま降格が決まってしまうようではファン・サポーターも悲し過ぎるし、この土俵際で踏ん張らなければチームとしてJ1初挑戦が辛い記憶だけのものになりかねない。
果たして徳島の選手たちはどれほどの意地とプライドとパワーを見せてくれるのか!?一瞬たりとも目を離さずそれを見届けたい。
対し神戸については、徳島相手に取りこぼせないというのが本音であろう。首位・浦和とは難しい勝点差が開いてしまったが、ACL出場権(3位以内)はまだまだ射程圏内。上位との直接対決も多く残っているとあって、今節きっちり3ポイントを積み上げることにより追い上げへの勢いを得たいに違いない。さらに加えて、神戸はこの一戦を守備の立て直しのキッカケとしたいはずである。公式戦10試合でずっと続いてしまっている失点をなくすことがチームのギアを上げるスイッチになるのは恐らく間違いないのだから。経験豊富な増川隆洋を中心にそこへどのような改善を施してくるのか注目される。
以上
2014.10.17 Reported by 松下英樹
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