前回の対戦(3月23日・第4節)で名古屋に負けた神戸は、対戦成績で8連敗になった。2008年のJ1リーグ第12節から11試合連続で勝利から遠ざかってもおり(0勝2分け9敗)、相性という点では名古屋の優勢と言える。だが、現状で言えば、必ずしも神戸が不利とは言えない。むしろ流れは神戸にあると言ってもいい。
名古屋は前節の新潟戦に敗れ、リーグ連勝が3でストップ。司令塔のレアンドロ・ドミンゲスが退場処分を受け、今節の神戸戦には出場できないという状況でもある。新加入の川又堅碁、スピードスター永井謙佑を軸にした速いカウンターは脅威だが、古巣対決となる神戸のCB増川隆洋は「今の神戸は同じ相手に2連敗するチームではないと思う。今回はホームでもあるし、しっかり勝ち切りたい」と自信をのぞかせている。メンタル面で名古屋に苦手意識はないようだ。
その上で、増川が警戒するのはかつての同僚でもある永井のスピードだ。「名古屋には勢いがあるけれど、その原動力はやっぱり永井だと思う。得点にもよく絡んでいるので、神戸としてはスピードに乗らせないことが大切。何人かが加わって彼をスピードダウンさせる必要はあるでしょうね」。今節の一つの見方としては、永井が走り回っていれば名古屋ペース、走れていなければ神戸ペースと言えるかも知れない。
攻撃面では、名古屋の長身CB・田中マルクス闘莉王をどう外すかが一つのポイントになりそうだ。神戸の司令塔・森岡亮太は「普通に中央へボールを放り込んでも跳ね返されると思う。まぁ、今の神戸はそんなサッカーじゃないですけれど…」と話す。前節の広島戦では左右の幅を使いながら中央にスペースを作り、そこを効果的に攻めた。先制点のシーンでは、森岡からのスルーパスを枝村匠馬がスペースに走り込んで受け、相手DF裏へ抜けた小川慶治朗へスルーパス。この流れからマルキーニョスがきっちりゴールへとつなげた。この流れるようなパスワークが生まれたのもボールポゼッションしながら、広島の守備を前後左右へ揺さぶり続けた結果。名古屋(清水から期限付き移籍)から途中加入した枝村が「神戸の方が名古屋よりボール保持率は高いと思う」と話すように、今節も神戸がボールを保持し、名古屋がカウンターを狙うという展開が予想される。
こういう展開になった場合、神戸のキーマンはやはり日本代表の森岡だろう。持ち味のスルーパスに加え、前回の代表初招集の際には直前のC大阪戦で決勝ゴールを決めるという勝負強さも見せている。本人も「(今回も)いい感じで勝って代表に行きたいと思います」と話すように、再び自らの“祝砲”で代表へ合流するつもりだ。
他にも、神戸には好材料が多い。前節から運動量の豊富な小川慶治朗と左サイドバックの相馬崇人が復帰。今週の練習では、奥井諒や茂木弘人らケガ人も完全合流しており、CB岩波拓也もアジア大会から戻ってきた。前節の広島戦で今季初スタメンを飾った北本久仁衛もキレのある動きを見せている。対名古屋8連敗中という悪い流れを断ち切るだけの要素は充分にあると言えそうだ。
残り8節で首位・浦和と勝点差13。初タイトルに向けては厳しい戦いが続くが、神戸の安達亮監督は「優勝も考えているし、ACLは当たり前のように思っている。仮に勝点で並んでも得失点で負けては意味がないので、もう少し大胆に戦う必要はあるかなと思っています。システムを含め、そういう戦いをやらないといけないタイミングかなとも思う」と言う。神戸にとって“鬼門”の名古屋戦は、リーグ終盤に向けての大きな山場。今節の勝利で“常勝気流”を呼び込みたいところだ。
以上
2014.10.04 Reported by 白井邦彦
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