4カ月余り前とはいえ、記憶はいたく鮮明だ。今季唯一であるからに他ならない。
湘南と愛媛は5月の第15節、ニンスタで相対した。パスカットから素早くカウンターに繋げ、7分に先制したホームの愛媛はその後、重心を後ろに傾ける。湘南も猛攻を仕掛けてゴールを目指したが最後まで枠を捉え切れず、0−1で敗れた。快進撃を続けていた湘南の開幕連勝記録は14で途切れ、この愛媛戦の敗戦が今季リーグ戦で喫した唯一の黒星である。
「自分のミスから失点して負けた。悔しい想いしか残っていない」キャプテンの永木亮太はくだんのシーンに触れつつ振り返った。
彼らはしかし、今季初の敗戦を次に繋げた。奏功しなかった終盤のパワープレーを見直し、自分たちのサッカーはロングボールに頼るものではないと再確認した。かつてならひとつの躓きが勝てないトンネルの入り口となってもおかしくなかったが、翌節の東京V戦で難しい展開ながらも1−0で勝利し、再び連勝街道に復帰した。すぐに立て直した修正力は、「長い目で見るとチームのレベルは着々と上がってきていると思う」と永木が語った数年越しの成長の一端と言えるかもしれない。
湘南に苦い記憶を残した愛媛は前節、新体制となった磐田に0−2で敗れた。そのまえは岡山と千葉に引き分けており、今節は4−0で勝利を収めた第31節山形戦以来4試合ぶりの勝利を目指す。
目下19位と、今季の彼らの足跡のなかではもっとも低い位置にあるが、一方で上位陣のそれと遜色のない得点44が目を引く。チームトップの10得点をマークし、湘南との前回対戦でも決勝点を挙げている河原和寿をはじめ、堀米勇輝と西田剛もそれぞれ7得点と、3トップが結果を残す。前節は出場停止だった村上佑介もアシストを重ねて存在感を示している。しっかりブロックをつくる構えが予想されるなか、前回の対戦を踏まえても、先制点の行方は両者にとって勝負のひとつのポイントとなろう。
他方、湘南の曹貴裁監督はスコアレスドローに終わった前節の岐阜戦を振り返り、「GKとDFの連係やラインの上下はよかった」としつつ、相手ディフェンスのギャップを突くことやクロスに対して点で合わせる動きなど、攻撃面の課題に触れた。そして決定力を高めるためには、ゴールまでのプロセスが80、決めるところが20ではなく、それぞれが50、すなわちいずれも等しく大事だという意識の必要を選手たちに話したという。こうした前節の課題を踏まえ、「自分たちを試すいい機会」と今節の愛媛戦を位置付けた。
同日13時にキックオフを迎える2位の松本が引き分け以下となった場合、湘南は結果次第で今節にも優勝が決まる。「唯一負けている相手に勝って優勝したい。引いた相手を崩すという課題もクリアして勝点3を取りたい」永木は一戦を見据えた。周囲の状況はともかく、まずは目の前の勝点3に集中する。21チームすべてから勝利を挙げて来季へ向かうことが「過去最強」にはふさわしい。
以上
2014.10.03 Reported by 隈元大吾
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