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【J1:第26節 大宮 vs 清水】レポート:生き残りをかけたオレンジダービー。一体感に包まれた大宮、迷える清水から大きな勝点3を奪取。(14.09.28)

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アディショナルタイムは4分だったはず。しかし手元の時計が95分を過ぎてもゲームは続いた。1点を追う清水の猛攻。ホームゴール裏の歌う「大脱走(無敵大宮)」と、アウェイゴール裏から鳴り響くサンバが混ざり合い、オレンジ一色に染まったNACK5スタジアムは異様な熱気に包まれる。たまりかねて大宮・渋谷洋樹監督が第4の審判に詰め寄ろうとした瞬間、主審の長い笛が響いた。その場に座り込む本田拓也。仰向けに倒れる三浦弦太。お祭り騒ぎのホームゴール裏と、静まり返るアウェイゴール裏。生き残りをかけたオレンジダービーで、大宮は順位を一つ上げ、清水はついに降格圏に転落した。

ここ6試合で18失点の清水は、先制点を与えたくないという思いが強すぎたのか、スタートから大宮の攻勢をまともに受ける形になった。大宮はラインを押し上げ、セカンドボールをほぼ回収し、攻撃につなげる。清水は大宮のボランチ、特にロングキックの名手カルリーニョスに自由を与えすぎた。カルリーニョスのサイドチェンジから左サイドで泉澤 仁が勝負するのが、大宮のねらう形。泉澤の応対には石毛秀樹が当たったが、試合を通じてこの1対1は常に泉澤が勝ち続けた。9分、カルリーニョスのサイドチェンジから泉澤がボールを受ける。その外を中村北斗が駆け上がる。泉澤のパスから中村が左足でクロスを送ると、ズラタンがニアで頭を振って流し込んだ。

この先制点には、大宮の試合への良い準備が表れている。これまで泉澤と中村の関係は、泉澤が縦に突破するために中村は後ろでサポート、あるいは中に入っていくという役割だった。ただ、同じ3バックの徳島戦ではそれで手詰まりになることが多かったことから、今日は「(自分が外を)周ったら簡単に使ってくれと言っていた」(中村)。それに加えズラタンも、「今日は典型的なFWは自分一人なので、2トップでやっている時より、より長くペナルティエリア内にいるように意識した」ことが、ゴールに結実した。

しかし、その後も大宮の時間帯が続いたが、攻撃でフィニッシュに持ち込めずに清水のカウンターを受けるうちに、「オープンなゲームになって、全体的なリズムが崩れた」(渋谷監督)。清水は守備で前からのプレスに後ろも連動し、両ウイングバックが高い位置を取ることで、大宮の両サイドハーフが引っ張られる。結果、ズラタンと橋本晃司の前線が「相手の選手に対してプレッシャーが上手くできず、パスコースを限定できなくなった」(金澤慎)ために、今度は逆に大宮が清水のボランチに自由を与えることになった。清水のパス回しに守備ラインを下げられ、セカンドボールを拾えなくなり、間延びしたブロックの間にパスを通され始めた。それでも、前節・川崎F戦の敗戦から、「チャレンジしたところのカバーをしっかりすること」(渋谷監督)という反省を選手もしっかり実行し、ピンチは度々あったが清水に決定機は作らせず前半を終えた。

後半も清水の攻勢が続く。50分、清水は三浦弦太から河井陽介へ素晴らしい縦パス。家長昭博と今井智基の間で受けた河井から、外を駆け上がった水谷拓磨へ。水谷からリターンを受けた河井がクロスを送ると、一瞬で横山知伸のマークを外したノヴァコヴィッチがフリーで折り返し、本田拓也が見事なバイシクルシュートを決める。同点ゴールに勢いづいた清水は、さらに攻勢をかける。石毛は守備に回ると泉澤をまったく止められなかったが、高い位置で攻撃に絡むと縦への突破で大宮の脅威となり、逆に泉澤も守備に回るとポジショニングとプレスに行くタイミングの拙さを露呈した。57分、58分と連続して清水は大宮の左サイドを突破し、決定的なクロスを送る。このまま続けば、清水の逆転ゴールも時間の問題だった。

しかし大宮は選手交代で流れを変える。64分、橋本に代えて渡邉大剛を投入し、家長がトップ下、渡邉が右サイドハーフの形になった。「相手のCB、ウイングバック、シャドーの選手の後ろでしっかりボールを受けて起点になること」という指揮官の意図を、渡邉がしっかり実行した。いきなり66分、今井のオーバーラップを使い、渡邉がペナルティエリア内でシュートを放つ。「(試合に)入ってみると思ったよりもかなりスペースがあって、間で受けて自由にやれた」と渡邉が語る通り、それまでの攻勢から清水は守備への切り替えが遅れ、再び大宮に攻勢を許す。そして73分、大宮は渡邉の右コーナーキックから家長の右足ボレーで勝ち越しに成功。「セットプレーは普段から黒崎コーチが攻撃を指導しているが、そこの動きから取れた」と、渋谷監督は満足そうに振り返った。

再び追う立場となった清水だが、対照的に、水谷を下げて高木俊幸を投入し、河井陽介を左ウイングバックに移した采配はまったく効力を生まなかった。76分には河井を下げイ キジェをピッチに送り、4-1-4-1の布陣で攻めに出ようとするが、大宮にとっては逆にシステム上のミスマッチが希薄になって守りやすくなった感さえある。大宮はすかさずボランチに和田拓也を送り、清水のインサイドハーフを抑えにかかる。さらに87分には中村に代えて福田俊介を投入し、高橋を左サイドバックに出して守備を強化するとともに、福田の高さで清水のパワープレーに対抗する。だからアディショナルタイムが多少長くても、それほど危険だったわけではないが、それでも一秒でも早く勝利を確定したいほど、大宮にとっては絶対に落とせない試合だったのだ。

清水は大宮に勝点で並び、得失点差で上回られ、C大阪が浦和に勝利したことで17位に後退した。前節のG大阪戦でもそうだったが、先制されてから、それを取り返すためにようやく試合内容が良くなるというところに、チームとして自信のなさが表れている。つい1カ月前の大宮もそうだった。失点を恐れて、慎重にというより受け身で試合に入ってしまう。この試合、清水の初シュートは29分だった。引いてガッチリ守ってカウンターのチームならそれでも良いが、清水はそういう戦いをするチームではないだろう。「うちはみんながしっかりボールをつないで、全体が押し上げて攻撃をするサッカーしかない」(大榎克己監督)のであれば、試合開始から全員が相手ゴールへ向かう意思を、守備局面でも持たせることができなければ、今後も厳しい戦いが続くだろう。

大宮も降格圏脱出はならなかったが、チーム得点王のムルジャ不在の中、試合前の準備、ベンチワークが、これ以上ないくらいハマっての勝利は、チームに勢いをもたらす。もちろんまだ浮かれるわけにはいかないが、多少は浮かれたくなっても無理もない。それはただ勝点3を積み上げただけではなく、監督の采配、選手の粘り強いプレー、その粘りを生んだサポーターの後押しと、すべてが一体となって挙げた勝利だったからだ。

家長の勝ち越し弾が決まった直後の情景が忘れられない。弾けるような笑顔でベンチに駆ける家長。真っ先にベンチを飛び出して家長と抱き合ったのは、その約10分前に「正直、満足してピッチを去ったわけじゃなかった」という橋本だ。そこにベンチメンバー、ピッチの選手が駆け寄り、歓喜の輪が広がる。それはおそらく今シーズン、初めて起こったものだった。この一体感を最大の収穫として、大宮は次節、因縁の甲府戦に挑む。

以上

2014.09.28 Reported by 芥川和久
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