F東京は23日、ホームの味スタで徳島と対戦し、4−0の快勝を収めた。33分に河野広貴のゴールで先制すると、52分にエドゥーがPKを決め、77分には武藤嘉紀がだめ押し点を挙げた。さらに、アディショナルタイムには途中出場の渡邉千真がネットを揺らし、徳島を圧倒。13試合負けなしのクラブ記録を更新し、5試合ぶりの勝利を手にした。
試合後の監督会見の席で徳島の小林伸二監督は、試合を決定づけた失点を悔やみ、「すべてが2点目」と肩を落とした。大量失点を招く引き金となったのは、確かにこのPKによる2点目だった。しかし、本当に価値があったのは、やはり先制点だ。
試合開始から自陣のスペースを埋めて守る徳島に対し、F東京は攻めあぐねていた。徳島の守備網にくさびを打てず、ブロックの外でパスを回す時間帯が続いた。しかし、F東京はコレクティヴなカウンターで徳島を切り裂き、待望の先制ゴールをもぎ取ったのだ。
最終ラインがクリアしたボールを武藤が左サイドのタッチライン際で拾った瞬間だった。逆サイドを全速力で背番号22が駆け上がっていった。武藤がそれを視野に捉えると、ボールを届けた。
パスを受けた羽生直剛は、相手DF3人を引きつけ、中央から右サイドへと流れたエドゥーへと縦につなげた。エリア内に侵入した背番号「11」は強引に縦へと突破。中央に折り返し、それを河野が押し込んだ。
このシステムの利点を生かした完璧なゴールだったと言えるだろう。そして、それを可能にしたのが、インサイドハーフの羽生と米本拓司だ。ゴールの起点となった羽生とともに、米本も武藤がボールを持ち出す瞬間、しっかりとパスコースを確保していた。2人は、守備から攻撃へと切り替わる瞬間を見逃していなかったのだ。そして、これは偶発的なカウンターなどではない。羽生は言う。
「俺たちのポジションが攻撃に絡もうと、ヨネとは話していた。前線の3人+αの攻撃ができないと、攻撃の幅が生まれない。そういう意味では、エドゥーのアシストの前パスに絡めたので、そうしたプレーが1つ形にできたことは大きい」
F東京は4−3−3システムと4−3−1−2システムを併用している。ともに前線に3人を配置し、中盤は3人で広大なスペースをカバーしている。そのため、中盤の3枚は、ベーシックな4−4−2システムよりも運動量が求められる。どんなに苦しくとも、彼らは走り続けなければいけない。その中でインサイドハーフの歯を食いしばった頑張りがこの得点を生んだのだ。
そして、先制点を奪ったF東京は後半、システムを相手と同じ3−4−2−1に変更し、守備の穴を埋めた。徳島は、これによってほぼノーチャンスとなった。ゲームを完璧にコントロールしたF東京は確実に勝利をモノにした。5試合ぶりの歓喜には、羽生と米本の頑張りが隠れていた。
忘れてはいけないのは、これが中2日の連戦だったということだ。今年、齢35を迎えるベテランMFが、それをやり遂げたのだ。試合後、年下のチームメイトたちはイキな働きをした羽生に声を掛けたという。
「あいつらからは『ようやった』と言われましたよ」
そう言って顔に笑いジワをつくる殊勲者は、「頑張りますよ」と、すでに中3日で行われる次に目を向けていた。
以上
2014.09.24 Reported by 馬場康平
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