改めて、犠牲となられた方々に対するお悔やみを申し上げると共に、被害にあわれた方々にお見舞いを申し上げます。
今、広島に必要なのは、具体的な復旧のための行動であり、現実的な復興策と予算である。住宅を亡くした方々に対するサポートや被害に遭われた方々に対する心のケアの問題もある。その上で、人々の心を明るくさせる希望が社会として求められている。
そういう時に役立つのが、やはりスポーツである。実際、クライマックスシリーズ出場が有力となったカープの快進撃は、広島の人々の心を明るく燃え立たせた。マツダスタジアムは連日の３万人超え。チケットは毎試合ソールドアウト。試合日は赤いキャップやシャツで街が埋め尽くされる勢いだ。
筆者も何とかチケットを手に入れ、マツダスタジアムまで応援に向かった。もちろん、身につけたのはカープのユニ。昨年引退した名選手・前田智徳の「１番」を背負い、必勝の意気込みで応援に臨んだのだが、結果は巨人・菅野投手の好投の前に完敗。一緒に行ったウチの奥さんが「こら、すがのーっ。失投せんかいっ」と強烈なヤジを飛ばしたのだが、それもむなしかった。
ただ、カープが負けたのは悔しかったのだが、やはりライブは楽しいのである。ビールを飲み、カープうどんを食べ、さらにビールを飲む。菊地の美しい守備には感嘆の拍手を贈り、チャンスで凡退した選手（あえて名前は伏せます）には、ここで書けないような罵声を浴びせてしまう。7回裏の攻撃時にはジェット風船（これは、カープの応援が発祥なんです。決して甲子園ではないんですよ、と力説してみる）を二つも膨らませ、「それ行けカープ」を大声で歌った。ふと気づけば、電光掲示板で佐藤寿人も一緒に歌っていた。それもまた、誇らしい。
普段、取材しているサッカーの会場では、当然のことながらビールも飲めなければ、手拍子を叩き、歓声をあげることもできない。「Hiroshima Night」をサポーターと一緒に歌うことも、セットプレーのチャンスにタオルマフラーを振り回すこともできない。もちろん、レプリカシャツを着ていくことも無理だ。仕事なんだから。
かつては僕も、スタンドで応援していた人間だから、楽しさはわかる。でも、昔よりも今の方がさらに楽しいと思う。1995年頃のスタンドはＪリーグバブル崩壊の後で本当に寂しかった。今は、声出しサポーターの数も増え、スタジアムでも様々な演出が行われるようになった。伝統あるプロ野球からはまだまだたくさんのことを学ぶ必要があるが、Jのスタジアムの娯楽性も以前に比べればずいぶん高まっていると確信している。
僕が育った長崎は、かつてプロスポーツに縁のない土地だった。今でこそ、V・フォーレン長崎が頑張っているが、少年時代は年に１度のプロ野球遠征が唯一のプロスポーツ体験だ。僕が広島という街に行きたいと願ったのも、そこにカープがあるから。プロスポーツが身近に存在する環境に憧れていたからだ。
今回のような災害が起きた時、よく「サッカーなんて、やっていていいのか」「野球なんてやっている場合なのか」という気持ちになる。確かに、現実的な復旧に役立つわけではない。だが、「人はパンのみに生きるにあらず」である。物質的なことだけでは満足できない。希望や夢、そして共感。それがあるから、人生を歩いていける。
プロスポーツがない場所に育ったからこそ、プロスポーツが希望の灯を点してくれることがわかる。そのスポーツの環境整備に財政面での重要な役割を果たしてくれるtotoの重要性もわかる。僕が毎節、totoやBIGに投資しているのも、決して６億円が欲しいからではない。スポーツの環境整備に役立てたい、その一心からだ。決して、マンションのローンを払ってもめっちゃお金が余るとか、会社の借金を返してもまだまだ余るとか、そんな邪心はない。本当にない……、まあ、少しは許してほしいが……。
totoを買って、買い続けて、来たるべき広島の新スタジアム（まだ話は具体的に進展していないが）建設に役立てたい。カープがそうであるように、サンフレッチェもまた広島の希望。その希望を具体的な形として表現するための場所＝スタジアムがいかに大切か。それもまた、カープの応援で実感したことである。
以上
2014.09.22 Reported by 中野和也（広島担当）
