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【J1:第23節 甲府 vs 鳥栖】レポート:サポーターが勝たせた勝利。ファン・サポーターの思いに勝利で応えることができたJFK甲府はイチガンになるきっかけも掴んだ。(14.09.14)

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「夢叶う小瀬」をキックオフから歌い続けた甲府サポーター。試合を見ながらそのことに気がついたのは5分くらい過ぎた時。1分に甲府のクリアミスから鳥栖に決定機をプレゼントしてしまい、ヒヤっとしてから心が落ち着いた頃。そのまま約10分間歌ってから「ジョウフク、コーフ」のコールを入れて、すぐに「真っ赤な太陽」を歌い始めた。このまま前半の半分は休みなく歌っていたと思う。ゴール裏のサポーターの青赤の面積はここ数試合より広くなり、色も濃くなっていた。彼らから言葉にして聞かなくても、試合後に声を出せないくらい歌い、歩けないくらい跳ねる覚悟でピッチの選手の背中を押すつもりになっていたことは分かった。その思いはメインスタンドにも伝わっていて、拍手で加わるファン・サポーターの姿が増えていた。

ピッチではケガのリハビリが長引いた河本明人が第10節以来の出場のチャンスに躍動した。これまでの甲府に足りなかったドリブルでの局面打開を何度も仕掛けた。メッシのようにはいかないけれど、セーブしないで”行けるところまで行くだけ”的な思い切りの良さがチームに活力をもたらせたと思うし、河本自身の技術の壁を破ることにもなるはず。鳥栖の選手はJ1でトップクラスの体力があるのでダウンにつながるほどではなかったけれど、体力を削ぐジャブにはなっていたはずだ。

鳥栖は天皇杯の疲れにプラスして移動疲れもあったと思うが、大エース・豊田陽平がヘディングで勝てていなかった。普通は味方のゴールキックならFWが勝てなくても目くじらを立てないけれど、鳥栖の選手は豊田が勝つことを前提に動くこともあるから、豊田は一定の確率でヘディングに勝つことを期待されている…はず。甲府のDFの佐々木翔に聞くと、そういう認識はないようで、「思ったようにボールが来なかったんじゃないんですか」と言うが、“豊田がヘディングで勝てていない”という見た目の印象は残った。もちろん、それが鳥栖の攻撃の全てではないので、金民友、早坂良太、水沼宏太の2列目がカウンターで見せる迫力は「甲府に勝ってほしい」と思って見ている人には充分な脅威だったし、ボランチの高橋義希、藤田直之の粘っこいボールハントには甲府の攻撃の芽をザクザクと刈り取られていた。ただ、「鳥栖に勝ってほしい」と思って見ている人はもっと厳しい印象を持ったであろうという想像はできる。鳥栖のシュートも決定機も少なすぎたし、ミスが多過ぎるという印象ではないだろうか。スタジアム観戦でなく、ボールのある場所が大きく映るテレビ観戦なら特にこの印象は強くなりがち。甲府も同じくらいのミスがあったので、お互いにミスをミスで助け合うサッカー独特の展開も何度もあった。しかし、中2日で120分間天皇杯を戦ったチーム同士――天皇杯には出場しなかった選手もいるが――では精度の低下があるのは仕方がない部分もあったのではないだろうか。お互い負けているだけに、勝利だけがもたらすことができるアドレナリンも水曜日には出ていない。

前半をラブ・オールで終え、ハーフタイムに残留争いのライバルの途中経過をチェックすると大宮があの鹿島に1−0とリードしていて、「あらっ」。なんとなく下位のチームが勝つ流れができていそうで不安になったまま後半を迎えた。甲府のサポーターは後半も歌い続けた。サポーターを”12人目の選手”というが、この日は13人目もピッチに立たせたくらいの魂がこもったサポート。喉も身体も相当に疲れたと思う。試合内容としてはまだまだだったが、彼らの気持ちが53分のコーナーキックで形に現れた。

この日の勝利は、サポーターが勝たせた勝利だと思う。10年くらい前、あるサポーターが「今日は俺達が勝たせます」と言うのを聞いた時はピンとこなかった。ただ、そういう思いで共に闘っていることだけは理解できたし、気持ちの凄さに敬意を持ったことを覚えている。でも、初めて「サポーターが勝たせた」と思う試合に巡り合った。クリスティアーノが蹴ったコーナーキックのボールは鳥栖のDFの頭に当たってちょっと角度が変わり、1メートルも離れていない盛田剛平の方に飛んだ。盛田は本能で反応して頭に当てた。こんなのは至近距離から思いっきり投げられたピンポン球をかわすボクシングの練習みたいな反応。サッカーではこんな練習はしないから本能一発勝負。盛田は「とっさに(頭に)当てた感じ。強いボールを打てたという手応えはあった」という。セットプレーで点を取るのが伝統的に上手いクラブではないし、狙った形でもない。でもゴールネットは揺らした。

甲府が先制した直後から鳥栖のクロス攻勢があったし、豊田に代えて谷口博之をワントップに入れて動きを増やしてロングボールを活かしてきた。(早く終われ、早く終われ)と心の中で念じながら試合を見ていた甲府のファン・サポーターは少なくないはず。でも、こういう時の時計は1分間が90秒くらいあるもの。鳥栖のクロスが入るたびにヒヤヒヤしながら、GK荻晃太がボールキャッチするとホッとし、(晃太、痛がって倒れてろ)と心の中で指示をするが、正統派GKの荻はすくっと立ちあがってボールを投げるか蹴ってしまう。そのボールが鳥栖の選手にすぐに渡ってしまうことが稀にあるのは修正点ではあるが、ここ数試合の荻はスーパーセーブで何度もチームを助けてきており、信頼感は高まっている。今年の甲府がリーグ戦で挙げた勝点3は全て無失点の試合。「失点したら勝てないと思っていた」と話した荻の思いはフィールドプレーヤーのミスを自分の反応で帳消しにするプレーに出ていた。

第22節終了時点で15位の甲府(勝点21)、16位のC大阪(勝点20)、17位の大宮(勝点16)、18位の徳島(勝点12)の4チームのうち、徳島以外の3チームが勝ち、14位の名古屋(勝点24)、13位の仙台(勝点25)、12位の清水(勝点25)の3チームのうち仙台と清水が敗れた第23節。C大阪と大宮の歯車が噛み合い始めそうな感じがする中、甲府としてはすぐ上の何チームかを残留争いに巻き込んでいきたいのだが、仙台・清水と勝点1差に迫ることができ、次節に向けて活力が生まれる結果となった。

試合内容としては課題はあるが、甲府にとっては9節ぶりのリーグ戦勝利を挙げることがをできたことに価値がある。勝てない時は、いい所よりも課題が目についたりして余計な摩擦が増えるが、これでひと段落の一週間を過ごすことができる。よ〜くよく考えてみれば、甲府がJ1リーグで鳥栖から挙げた初勝利が第23節。この勝利は甲府がJ1残留に向けて、「みんなで頑張ろうぜ」と声を合わせることができる自信やきっかけとなる勝利。5月17日の第14節の柏戦で3−0で勝利して以来見放されていたリーグ戦の勝利は格別で、深夜の時間帯に山梨の居酒屋の売り上げは伸びたはず。ワールドカップで約2カ月の中断期間があったこともあるが、これだけ長期間勝利がないとチームとファン・サポーターの信頼・友情が少し冷えそうになることもあったが、温め直すことができた勝利でもあるだろう。そして、何よりもよかったのはファン・サポーターの思いにチームが勝点3という結果で応えることができたこと。コアなファン・サポーターには、チームがJ2に落ちようが10連敗しようが、その状況を楽しみに変えて応援してくれる人が少なくないと思うが、やっぱり思いに応えることができたのは嬉しい。この先も難しい試合ばかりだし、いい内容で勝てる試合はないかもしれない。それでも、ホーム・山梨中銀スタジアムで勝点3を挙げることができて、ストレスを少し減らして次節に向けて準備できることは大きい。鳥栖は順位を2位から3位に下げたことよりも、監督交代でチームが後退していると周囲から言われることがストレスになると思うが、その流れを断ち切るために勝利を重ねることが必要だった。しかし、次の試合に勝つために前に進むしかない。

以上


2014.09.14 Reported by 松尾潤
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