ホーム大分が『総力戦』と銘打って、ファン・サポーターはもちろん大分県民を巻き込み大々的に盛り上げる試合が1年に1度ある。それが今節の熊本戦となる。今年で4年目を迎える総力戦だが、今週はクラブスタッフ総出で県内の主要駅でチラシを配布するなど、尻上がりに盛り上がりをみせている。あるスタッフによると「(試合3日前の時点で)2万3000人の観客数が見込めている。目標の3万人にどれだけ近づけるか楽しみ」とのこと。歓声やどよめきでドームが揺れる非日常空間での『バトル オブ 九州』大分vs.熊本戦は今節の注目カードだ。
ホームの大分は前節、『鬼門のアウェイ』で愛媛と対戦し2−1で勝利。不安視された後半立ち上がり15分の『魔の時間帯』での失点を防ぎ、ラドンチッチ、為田大貴のゴールで逆転。これまでの『二重苦』を払拭した。
ただ、内容を振り返ると決して喜べる内容ではなかった。特に前半は「魂が抜けていると言われても仕方のない内容だった」と若狭大志が振り返るように、手は抜いていなしし、運動量もあったが、狙いが見えなかった。アリバイ守備・アリバイ攻撃に終始した45分は田坂和昭監督の逆鱗に触れた。ハーフタイムでは、これまで指揮した4年間で最大級の荒々しい檄が飛んだようだ。
後半は見違えるようなメンタルの充実で逆転に成功したのは言うまでもないが、戦術的には後半からピッチに立ったラドンチッチの存在は大きい。前線でターゲットになり、そこでボールを収まる回数も増えた。それに伴い他の選手が連動して厚みのある攻撃を仕掛けられるようにもなった。「前半は足元ばかりのパスが多く、大胆さがなかったが、後半は戦い方が明確だった」(為田大貴)。実際、ラドンチッチをめがけてロングボールを放り込むシーンが増えた。しかも、その空中戦では負けることはなく、セカンドボールを拾って二次攻撃へと仕掛けられるため、確実にチャンスは多くなり、攻撃の勢いを生んでいる。とはいえ、今後は高さと強さを備えたストライカーへのマークは厳しくなるのは容易に考えられる。「その時は僕らが、いかにラドンを利用するか」と為田が話したように、いろんなバリエーションの仕掛けが試されるときだ。7月にラドンチッチ、林容平が加わり、前線は目に見える結果を残さなければ試合に出ることができない状況だ。厳しいポジション争いが得点力を増した要因であり、今節は誰が先発の座を射止め、どんな結果を出すのか楽しみである。
そして、完全アウェイに乗り込む熊本は、前節ホームで札幌と対戦して0−2で敗戦。連勝を逃し、ジャンプアップするチャンスを逸した。ただ、「選手は最後の最後まで力を振り絞って、ゴールを奪おうと走ってくれて、その点では決して悲観する内容ではなかった」と小野剛監督が振り返ったように、球際のバトルで力強さは出た。積極的な守備の意識は大分戦で十分活かされるはずだ。今季、シーズン前のプレマッチを含め大分と対戦した際、熊本の球際の強さは大分の選手に苦手意識を植え付けている。それは新加入の林も同じで「熊本はかなり走るチーム。僕の中では湘南と同じようなイメージ。なんで今の順位にいるのか分からない」と警戒している。
攻撃陣では巻誠一郎が加わり、J2で92試合35点と結果を出しているアンデルソンも加入。駒は揃い、フィットすれば脅威である。大分同様に前線のポジション争いが活性化したことで、誰で出場しても遜色なくプレーできるのは強みだ。また、対大分とは過去7戦で2勝5分と負けていない相性の良さがある。
いずれにせよ、これまでの7戦のように1点を争う見応えのある試合になりそうだ。
以上
2014.09.05 Reported by 柚野真也
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