浦和は首位をキープしているとはいえ、先頭集団は勝点2差で4チームがひしめく混戦模様。ここでローカルライバルの大宮を退け、頭ひとつ抜け出る弾みとしたい。
前節のF東京戦は失点数の少ない2チームの対決とは思えないほどの乱打戦となった。浦和は一時2点のビハインドを背負う苦しい展開を強いられたものの、最終的には引き分けに持ち込んだ。イタリア人監督が指導する堅守の相手から4ゴールを奪えたことは自信にもなっただろう。
ただ、その一方で4失点も許したという事実から目を背けるわけにいかない。槙野智章も「守備陣にとっては改善点の多い試合だった。課題を改善して、とにかくゼロで抑えたい。F東京戦のような守備だと失点してしまう」と反省する。
相手の優れた個人技を称えるべきゴールもあったが、自分たちで招いた失点もあった。特に最近はリスクを軽視したアタックや、不用意なオフサイド狙いを含めた軽率な判断が原因で簡単に裏を取られてピンチを迎えることが増えてきているので、守備への高い意識をもう一度強く持ってプレーする必要があるだろう。攻撃ではこの3年で磨き上げてきた連携で相手を崩し、守備では今シーズン取り組んできたものを思い出す。そういう戦いを見せたい。
対する大宮はこのところ9試合勝ち星に恵まれず、直近の5試合は1分4敗と黒星が大きく先行。順位も17位と降格圏に沈み、残留ラインの16位・甲府とは勝点5差と最低2試合分の差がついている。
不振の原因となっているのは不安定な守備。無失点で乗り切ることができたゲームは、今季21試合でわずかに2試合とかなりの脆さを見せている。しかも、失点した19試合のうちで2失点以上したケースは実に17試合。一度失点すると歯止めも効かない。
今季は苦しい戦いを強いられているが、だからといって浦和が簡単に勝ち星を計算できないのが大宮の怖いところだ。最近のさいたまダービーでは3連勝と浦和が結果を出しているものの、その前は4試合勝つことができなかった(1分3敗)。ホームでは7年も白星を挙げられなかった時期もあった。
さいたまダービーは浦和が低迷した2011年を除けば、基本的に浦和の方が上位にいるという図式で行われてきたが、大宮は浦和と戦う時だけはそれまでの不調がにわかには信じられないほどの強敵に変化してきた。興梠慎三は「レッズとやる時は大宮がいつも以上に強くなるという印象がある」と語り、柏木陽介も「勝てていなかったという印象が強い」と振り返る。
その大宮が浦和に対し、どういう出方をしてくるのかというのはこの試合の最初の注目ポイントになるだろう。前回対戦した時は、浦和対策としてすっかりお馴染みの“5バックにして枚数を合わせる”戦術を敷いたが、ほとんどいいところなく0−2の黒星を喫した。後ろを5枚にするのか、それとも4枚にして臨機応変に対応するのか。今回、大熊清監督がどういう選択をするのか気になるところだ。
大宮の攻撃陣にはズラタン、ムルジャなど個の能力で違いを生み出せるタレントが揃っている。柏木陽介も「外国人の2人は点を取る力を持っている」と警戒する。守備で浦和をある程度抑えることができれば、勝機も見えてくる。
これまでの対戦で浦和側から見て印象的だった試合と言えば、やはり2011年のアウェイ戦だろうか。意地と意地がぶつかり合う熱戦のなかで、原口元気(現ヘルタ・ベルリン)が倒れ込みながら執念でねじ込んだ魂のゴールは見ている者の心を揺さぶった。大宮側の視点で見れば、昨年4月の一戦になるだろうか。戦術的な守備で浦和を沈黙させ、ライバルを倒して無敗記録を更新したのは最高の思い出だろう。
さいたまダービーは白熱の一戦になることも珍しくない。今回も記憶に残る好ゲームになることを期待したい。
以上
2014.08.29 Reported by 神谷正明