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【J1:第21節 名古屋 vs 柏】レポート:またしても豊田での勝利を逃した名古屋。柏との我慢比べに“負け”、今季リーグ戦での未勝利記録を打ち破れず。(14.08.24)

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またもや勝点3が逃げて行った。ホーム豊田スタジアムでの今季リーグ戦8試合目は、84分まで勝利の権利を得ていたが、踏ん張り切れなかった。名古屋のメンバーは我慢し、粘り強く戦うことはできたが、何かがまだ足りなかったということになる。

名古屋の西野朗監督はリーグ戦での良い流れを継続することを試みた。前節のG大阪戦では61分から新加入の川又堅碁を合流3日目にしていきなり起用。しかもFWではなく4−2−3−1の右サイドハーフという奇策で、結果として5月6日以来のリーグ戦勝利につなげてみせた。この日のスタメンの前線はケネディの1トップの下に右から川又、レアンドロドミンゲス、永井謙佑と並べるG大阪戦と同じもの。3日前の天皇杯3回戦で結果を残した玉田圭司と松田力をベンチに置いてまで、新たな攻撃ユニットの可能性に賭けた。柏もまた天皇杯3回戦で120分間+PK戦を戦ったメンバーから守備陣の3人を入れ替えただけだが、勝った試合の継続と負けた試合の継続ではまるで様相が異なる。その根底にあるのは選手への信頼なのだが、実に対照的だ。

この一戦は名古屋にとって、特に守備陣にとっては我慢の一言だった。柏はレアンドロ、工藤壮人、高山薫の3人が名古屋の4バックの選手間にもぐりこみ、4人が中央に釘づけになるようにプレー。藤田優人と橋本和の両ウイングバックにスペースを与え、攻撃の選択肢を増やそうと意図した。これに対し名古屋の守備陣はボランチを交えたDFラインのスライドなど複雑な対応を避け、永井と川又の両サイドハーフにウイングバックへのケアを委任。「後ろで混乱が起きないようにした」とは楢崎の証言だが、時に6バックのような形で相手の5人のアタッカーに対峙する6対5の局面は、90分を通じてほぼ変わらなかった。当然、本来FWのサイドハーフには重労働を強いる上に、センターバックはギャップで駆け引きを仕掛けてくる中央3人のアタッカーへの対応に追われる。「守ってばかりのところがあったし、相手の時間も長かった」(牟田)。だが、永井と川又が勤勉に上下動を繰り返したことで、試合は拮抗。「前半はこのままじゃダメだって感じはしていた」(高山)と、むしろ情勢の悪さを感じていたのは、攻めていた柏の方ですらあったほどだ。

ディフェンス重視の展開の中、名古屋は先制することでさらに集中力を高めていった。25分、左サイドからのレアンドロドミンゲスのFKを田中マルクス闘莉王が頭で合わせ、一度はバーに弾かれるも再び頭で押し込んだ。これで勢いに乗り、また守備からのカウンターという意識が生まれた名古屋は堅陣を築く。前線4人とダニルソンが激しく相手の中盤を潰しにかかり、サイドに展開されれば永井と川又が快足を飛ばして最終ラインに加わる。攻撃的とは言えないが、ソリッドでまとまりのある守備で柏の攻撃をほぼシャットアウトした。

だが、指揮官が発したハーフタイムの指示が、その様相を変えていくことになる。柏のネルシーニョ監督は停滞する攻撃に関して「ボランチがボールを持った時に縦への崩しが少ない。前の3人が個々に動かず、タイミングを合わせるなりギャップを作りだし、前を向いてパスを受けよう」と指示。高山も「『川又を迷わせるポジションを取れ』と言われた。サイドバックみたいなポジションでボールを受けたりした」と工夫を披露。後半もしばらくは前半同様の展開が続いたが、その内容は徐々に変化を始めていた。

名古屋もまた、指揮官が動きを見せていた。後半序盤から数度、ロングカウンターのチャンスが訪れたものの、前線にはスピードがそれほどあるわけではないケネディ一人。永井や川又はボールを奪った瞬間は最終ライン近くにいることが多いため、ここに速さが欲しいと誰もが感じる局面だった。その思いは西野朗監督にもあったようで、71分にケネディに代えて松田力の投入を決断。川又を本来のセンターフォワードに移し、カウンターとサイドに変化を加えていった。だが、これが誤算を生んだ。

誤算の一つは川又の消耗だ。ピッチの縦幅105mを何度も往復し、後半の中盤に差し掛かる頃の彼には持ち前のダイナミックさは残っておらず。前線の起点あるいはカウンターの急先鋒として期待された動きは少なく、前線に勢いを加えることはできなかった。そしてもう一つ、これが最大の誤算だが、交代によって守備のリズムが崩れてしまった。これは松田の責任というわけでなく、FWの選手が投入されれば、サイドハーフでの起用と言えどもゴール前への侵出を目論むのは当然のこと。川又のパワーが落ちているならば、なおさらにその傾向は強まるのは当たり前だ。しかし6対5のバランスを保っていた守備は崩れる。そして84分、その変化は失点という最悪の結果を呼ぶことになった。

右サイドの守備の枚数が足りない状態での柏のオフェンスで、矢野貴章とダニルソンが3人を見る状態となり、エドゥアルドにスルーパスを通される。受けた高山のシュートは楢崎がセーブしたが、こぼれ球を橋本に逆サイドに展開され、最後は太田徹郎に決められた。「左で崩してこっちにラストパスというイメージでいた。狙い通り」と太田。途中出場の選手に仕事をされるのもまた、ここ数試合の悪い傾向だ。変化への対応力の鈍さは、そのまま終盤の試合運びの流れの悪さにもつながる。アディショナルタイムに訪れた川又と永井の決定機も決められず、試合はそのまま終了。残り6分まで手にしていた勝利を、今季リーグ戦7試合でいまだ手にしていなかった豊田スタジアムでの勝利を、またしても手にすることができなかった。

「結果を出したいスタジアムでした」と語った西野監督同様に、名古屋の選手たちは体力を振り絞って戦った。しかし柏の選手たちはスタート時点ですでに名古屋より疲弊はしていたはずだった。ネルシーニョ監督が「引き分けはポジティブな結果」と語ったのも、ただ終盤で追いついたのではなく、 120分の試合から中2日で臨んだ試合の終盤だったからである。精神力の勝負では我慢が続いた名古屋以上に、柏に軍配が上がったと言ってもいいだろう。

それにしても、名古屋がホームで勝てない。豊田スタジアムではリーグ8試合で2分6敗。瑞穂競技場にしても3月の神戸戦以来、リーグ戦での勝利がない。この結果による順位の変動はなかったが、ホームでここまで勝てないのは順位以上に危機的状況だ。豊田スタジアムでのリーグ戦は残すところホーム最終戦1試合のみ。このままではサポーターに合わせる顔がない。2011年、豊田スタジアムでのホーム最終戦でゴール裏に「今年もHOMEで多くの勝利に感謝」という横断幕が掲げられたクラブが、このまま終わるわけにはいかない。次節(8/20)、聖地・瑞穂で優勝争い真っ只中の川崎Fを叩き、負の連鎖を断ち切りたいところだ。

以上

2014.08.24 Reported by 今井雄一朗
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