8月20日を経た両チームの表情は大きく異なる。
天皇杯3回戦、愛媛はJ1で3位につける川崎フロンターレと対戦。格上相手に第27節松本戦から全選手を入れ替えて臨んだ愛媛は「ボールはある程度持たれると思っていた」と石丸清隆監督が振り返ったように、流麗な川崎Fのパスワークに押し込まれる展開を強いられたが、しっかりブロックを作って対応。ゴールを割らせなかった。そして34分に高卒ルーキー表原玄太が決めたゴールを守りきって、見事ジャイアントキリングに成功。「チーム状況があまりよくなかったので、フレッシュな選手に入れ替えた中で勝てたことはチームの底上げにつながる」と石丸監督は満足げな表情を見せた。新たな刺激がチーム内に生まれ、さらなる勢いをつけようとしている。川崎F戦から中3日でのゲーム。誰が試合に出てくるかも含めて、非常に楽しみな一戦になることは間違いない。

そして水戸はJリーグ王者・サンフレッチェ広島と対戦することとなっていが、広島市を襲った土砂災害のため、試合は延期に。チームはその日に水戸に戻ってきた。試合を行っていないのだから、表情は以前と変わっていないように思えた。
だが、「モチベーションもフィジカルも広島戦に照準を合わせていた」（内田航平）だけに「延期が決まって、少しですけど、（気持ちが）落ちたところはあります」と内田は吐露した。それが如実に出たのが、試合2日前の紅白戦であった。開始早々にDFのミスから失点を喫すと、その後も全体的にミスが多く、攻撃の形を作れなかった。柱谷哲二監督の怒声がグラウンドに何度も響き渡った。メンバーを入れ替えても一向に内容はよくならず、結局主力組は0対2で負けてしまったのだ。紅白戦後、柱谷監督は全選手を集めて檄を飛ばし、足早に練習場を後にしたのであった。

その後、選手同士でミーティングを開催し、意見をぶつけ合った。「試合が終わったわけではない。もう一度試合に向けて気持ちを整理していこうと確認しました」（内田）。選手だって人間である。やはり、心の底から楽しみにしていた試合が延期になった時、気落ちしてしまうのは仕方ないだろう。試合するはずだった日に試合ができなかったことにより、コンディションも作り直している最中にある。ただ、問題はここからだ。いつまでもこのままではいけない。リーグ戦5試合勝利がないこの状況を打破しなければならないし、そして、上昇気流に乗るきっかけをつかまないといけない。

2日前の練習後、「チームの雰囲気は悪くない」と細川淳矢は言いきり、「チームをよくしようと前向きに話し合えているし、こういう悪いものが出た時こそ、チームはまとまりやすい。逆にいい方向に向かうと僕は思っています」と力強い口調で続けた。今季最悪と言えるほどの内容を披露した紅白戦からチームは生まれ変わることができるか。
結果を出せていない状況は続くものの、前節東京V戦を含めて決して内容は悪くない。それどころかいずれも相手を圧倒する内容を見せており、「あとはゴールだけ」（吉田眞紀人）という状況が続いている。しっかりと気持ちを立て直し、ゴールへの執念をむき出しにして6試合ぶりの勝利を目指す。
「この雰囲気を変えるのは自分たち。きっかけをつかむのも自分たち次第」と西岡謙太は自らを奮い立たせるような口調で口にした。快進撃へのきっかけとなる勝点3を、一丸となってつかみ取れ。

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2014.08.23 Reported by 佐藤拓也