連日の酷暑が気力を奪うように、連敗もまた精神と肉体を蝕み、酷く体に堪える。流れが悪い中でも前節の栃木はアウェイで松本を相手に、一時は1-1の同点に持ち込んだ。しかし、喜びも束の間、船山貴之に決勝弾（恩返し弾）を浴び、連敗はついにクラブワーストタイの５にまで伸びてしまった。

J2参入元年以来の苦しみを味わっている真っ只中、今節は「怪物のようなチーム」（阪倉裕二監督）湘南を迎え撃つ。状況は極めて厳しいが、「連敗中だけど強いチームに勝てれば、上に行けるチャンスになる。どれだけやれるか楽しみ」と、赤井秀行は首位撃破に胸を躍らせている。逆境だからこそ出せる力があるはずだ。この一戦に全てを捧げ、今度こそ悪しき流れを断ち切れるか。

圧倒的な強さを誇る湘南に先制点を献上すれば敗戦に直結する。それだけに、リードされる展開は是が非でも回避しなければならない。となると、直近の課題である、セットプレーの守備の改善が求められてくる。松本戦ではある程度、思い通りに試合を進めながらも、セットプレー崩れからのミドルシュート2本に泣いた。FKとCKの際にマンツーマンからゾーンに変更してからは、一発でやられる回数は激減した。だが、今度はゾーンの泣き所である、弾いた後のセカンドボールから失点を喫するケースが増えてしまった。なかなか水漏れは止まらない。あっちを塞げばこっちが開くことが繰り返されているこの事態に大久保哲哉は、「難しいけど」と前置きした上で次の３つの改善点を挙げた。
「跳ね返したらプレッシャーをかける。プレッシャーを掛けた人は一発でかわされない。クリアを大きくする」
「細かいところにどれだけこだわれるか」（阪倉監督）。そこに問題解決の糸口が隠されている。

湘南が突風の如くゴール前に飛び込んで来られるのは、「一人ひとりの間合いがいい」（赤井）からに他ならない。縦パスをスイッチにして人数を掛けてくる相手に対し、収まり所（主にウェリントン）をどれだけ潰せるかがポイントになる。タイトなマークで抑え込めれば、前傾姿勢になっている分だけ、「２、３人を置いていける」（赤井）。「この前は引いて守った時にうまくハマった手応えがある」とは大久保。本来はリトリートするチームではないが、耐える時間が長くなることが予想されるだけに、守る時間帯ではしっかり守り、相手を引っ張り出せるかが重要になってくるだろう。０-０の時間を継続させ、焦れて前に出てきたところを仕留めたい。カウンターを発動させるには奪ってからの最初のパスが重要になり、新潟から加入して日が浅いとはいえ本間勲の個の力に期待せずにはいられない。

１１戦無敗で首位を堅持している湘南だが、直近の３試合はいずれもドローと勝利には恵まれていない。だが、試合内容が低調なわけではなく、前節の岡山戦も勝点３を掴んでも不思議ではない試合をしていた。勝点を２つずつこぼしてはいるが、「何も下を向く理由はない」と曹貴裁監督。指揮官は選手たちのパフォーマンスに関して一切の不満を抱いておらず、むしろ誇りさえ感じている。今節も走力で栃木を凌駕し、素早い攻守の切り替えからゴールに迫る、あるいはゴールを守る基本を怠らなければ、勝点は積み上がるのではないだろうか。強いて留意する点を挙げるならば、前回の対戦で失点を食らったカウンターだろう。ウイークポイントである３バックの両端に起点を作られ、そこからショートカウンターを繰り出されただけに、同じ過ちは犯さないようにしたい。

攻守の核だった、瀬沼優司とドゥドゥ（柏での登録名はエドゥアルド）。チーム状況がどん底の時に主力2人を引き抜かれた栃木だが、新たに本間、西川優大、荒堀謙次（契約上、今節は出場できない）を迎え入れた。チームトップスコアラーと最終ラインの要の流出をなんとしても食い止めなければならなかったが、済んでしまったことを悔いていても仕方がない。新戦力が停滞気味だったチームに、新鮮な風を吹き込んでくれる可能性も多いにある。讃岐を蘇生させた古田寛幸が好例だろう。ネガティブな思考を排除し、ポジティブな姿勢で強敵に挑みたい。「次のゲーム（湘南戦）は困難だが、（勝つのは）無理ではない」（阪倉監督）のだから。

以上

2014.08.16 Reported by 大塚秀毅