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【J1:第19節 大宮 vs G大阪】レポート:両GKの美技の応酬に、明暗分けた先制点。好調G大阪、大宮を降して5連勝を飾る。(14.08.10)

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試合前、今日はいやに記者の数が多いなと思った。大宮とG大阪、それぞれの番記者だけでは、記者室が満席状態までにはならない。代表ウオッチャーやスポーツ紙系の記者が、その人口密度を上げていた。
彼らが集まる理由は二つあった。一つは相手がG大阪であること。遠藤保仁、今野泰幸といったワールドカップ出場組に加えて、宇佐美貴史、東口順昭らの代表候補がいる。新しい日本代表監督も決まり、4連勝と絶好調のG大阪が連勝を伸ばせば、喜びに弾んだコメントが聞けるに違いない。
もう一つは、大宮の前節仙台戦の翌朝、一部スポーツ紙により大熊清監督の解任報道が出たことである。同日の昼には鈴木茂社長自らがそれを否定したが、もしこの試合で大宮が敗れるようなことがあれば、解任騒動が再燃しかねない。
試合は、彼らの思惑通りの結果となった。

大宮の試合の入りは、敵将・長谷川健太監督も認めるように「素晴らしかった」。G大阪の浅い守備ラインの裏を狙い、5分にはこぼれ球をムルジャがミドルシュート。9分にはカウンターからムルジャ、ハーフウェーラインでボールを受けると米倉と西野をかわして独走し、強烈な一撃。さらに20分、橋本晃司の左からのクロスを中央でヘディング。最初のミドルはともかく、2本目、3本目は東口さすがのスーパーセーブだった。
大宮は守備でも最終ラインを押し上げ、中盤とのラインをコンパクトに保ち、対して間を使わせない守備ができていた。ただ、G大阪もそこは折り込み済みだった。リーグ前半戦は、「僕らがつないでくるという前提で前からプレスをかけてくるチームに対して、ムキになってつないでいた」(今野)が、この日は逆に大宮の押し上げた最終ラインの裏をシンプルに狙った。「常に裏を狙っている」(今野)、パトリックがもたらした効果である。
14分、最終ラインまで下がった家長昭博の裏を簡単にオ ジェソクが突破し、折り返しに阿部浩之が合わせるが、こちらも江角浩司がスーパーセーブ。15分には右サイドに開いたパトリックのクロスから、こぼれ球を遠藤保仁がシュート。クロッサーに寄せきれない左サイドの守備とクロス対応の不味さという、徳島戦で露呈した大宮の弱点はG大阪も知っていた。さらに18分、大宮の左サイドの裏へのロングボールでパトリックが抜け出し、コーナーキックを獲得。遠藤のキックにパトリックが頭で競り勝ち、からくも江角が逆コーナーに逃れた。
両GKの美技によって、前半も半ばまでは互角の締まった試合だった。しかし、大宮が27分にフリーキックのこぼれ球を今野に押し込まれて先制を許すと、大宮としては「良い形で入っただけに失点がこたえた」(和田拓也)。「点を取られたことで消極的になった」と富山貴光も振り返るように、序盤にしつこく狙い続けた最終ラインの裏への意識が希薄になった。というよりも、前線が裏を狙う姿勢を示しているのに、後方から入るのは最終ラインと競り合うようなボールで、そのセカンドを拾う選手もおらず、チグハグだった。クロスを入れようにもサイドの高い位置までボールを運べず、中央で奪われてカウンターを浴びる。「裏を狙うことによってバイタルエリアも空く」(今野)と、40分ごろからは、守備ブロックの間を通され、宇佐美にバイタルエリアを自由に使われ、いわゆる『チンチンにされる』場面さえ頻発し始めた。

逆にG大阪は余裕がある。攻守を素早く切り替えて、大宮に効果的なカウンターを発動させず、しっかり守備ブロックを作ってしたたかに追加点を狙う。51分にまたしても大宮の左サイドの裏をパトリックが突き、宇佐美が江角の頭上を打ち抜く。その後のG大阪は完全にゲームをコントロール。大宮にはブロックの外で回させるが、しっかりスライドしてクロスを自由には上げさせず、上げさせても東口と2枚のセンターバックでしっかり対応した。大宮は橋本に代え、「中盤のテンポと幅を上げるために」(大熊 清監督)カルリーニョスを投入するが、「幅を使ってからのバリエーションが少なく」(大熊監督)、決定機を作るには至らない。
84分ごろからは今井智基の負傷により途中出場したエアバトラー福田俊介を前線に上げてパワープレーを試みるが、「クロスを入れる選手がいなかった。(高橋)祥平や、(中村)北斗さんが足を痛めていたので(渡邉)大剛さんに上げさせたかったが、どうやって二人にフリーで蹴らせるか」(和田)、そこの共通意識が不足していたために効果は薄かった。後方からのロングボールを跳ね返され、大宮の作るチャンスよりも、G大阪から浴びるカウンターのピンチのほうがはるかに脅威は大きい。もちろん、すかさず藤春廣輝を投入し、しっかりサイドを消したG大阪の守備の集中もまた見事だった。

大宮は5月6日以来、ナビスコカップを合わせてもJ1相手の勝星が一つもない。リーグ再開後はすべての試合で先制点を取られ、複数失点を喫している。「追う試合を何試合も続けるのは、精神的にキツいものがある」とムルジャは嘆く。今までは「取られて追いつくという形が、不本意ながらもずっとできていた」(和田)が、この日はとうとう完封されてしまった。先制点を奪われたことは確かに小さくないが、むしろそれによってすっかり攻守のバランスを崩し、組織がバラバラになってしまったことが問題だ。前半の半ばまでのようなプレーを継続できていれば、2点目をそう簡単に与えなかっただろうし、G大阪に簡単にゲームをコントロールされることもなかったはずだ。
試合後のG大阪のミックスゾーンは華やかだった。テレビカメラの砲列と人垣を前に、宇佐美も今野も、この試合のことよりも代表についての質問に答えている時間が長かったように思えた。きっと遠藤も東口も同様だっただろう。対照的に大宮のミックスゾーンは閑散としていたが、監督会見場ではいつもの何倍ものカメラが大熊監督にフラッシュを浴びせ、通路では多くの記者が鈴木社長を取り囲んでいた。5連勝で5位に躍進した、代表候補を多数抱えるチームと、5月6日以来勝ちなしで17位に沈むチームと、そこには残酷なまでのコントラストが描かれていた。

以上

2014.08.10 Reported by 芥川和久
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