約3か月ぶりに日産スタジアムで戦った横浜FMは、2−2の引き分けだったにも関わらず、試合後「大」が付くほどのブーイングを浴びた。
2−0とリードしながら追いつかれ、これで4分1敗と5試合連続で白星から遠ざかったからだ。そのうえ、3試合連続でセットプレーからゴールを許した。勝負にこだわるプロとして「もったいない」では済まされない。「先発メンバーを入れ替える刺激があっていい」(中村俊輔)のかもしれないし、とことん話し合い、練習で突き詰めるしかない。
ただ、前半には光明が差し込んでいた。初先発を果たした1トップのラフィーニャが機能。裏に抜け出すタイミングの良さに安定したボールコントロールをまじえて、前線で起点となる。そして何より前半にシュート4本を放つなど、ゴールを迫る“迫力”は、大きな武器だと思えた。
20分にはゴールゲット。中村、兵藤慎剛と上手く連動し、相手DFを揺さぶり、移籍後初得点をマークした。さらに3分後の2点目にも絡む。三門雄大が縦パスを入れると、後方に齋藤学がいることを察知し、相手を引き連れてスルー。それに反応した齋藤学が軽快なターンで、増嶋竜也を外し、左足でゴールにねじ込んだ。“影のアシスト”を決めたのだ。
出場停止の小椋祥平、小林祐三に代わって出場した三門、奈良輪雄太の2選手も決して悪い出来ではなかった。三門は1点目にも関与。攻撃のスイッチとなる縦パスを入れて、そこから先の3人の連動を発動させた。奈良輪も大胆な攻め上がりを披露。23分には齊藤のドリブルシュート後のこぼれ球をゴール前で詰める決定機を迎えたが、GK菅野孝憲に阻まれる。
逆に柏は、前半の戦いぶりが悔やまれる。2点に絡んだ三門と中町公祐のボランチに圧力を掛けられずにパスをさばかれ、その分、むやみに高いライン設定をできずに引いた最終ラインは、球際のシーンで後手を踏んで2点を献上してしまった。
それでも32分の鈴木大輔のヘッド弾により、精神的に「楽になった」(鈴木)のが大きい。また、ネルシーニョ監督の躊躇ない采配ぶりもプラスに作用。キャプテン大谷秀和の調子がイマイチと見るや後半の頭に渡部博文と交代させ、3バックの一角の秋野央樹をボランチに上げた。61分にはその秋野に代え、小林祐介を投入。「彼の場合はどこのポジションで使っても非常にキレがあるので、ボランチでも非常に落ち着いたプレーと展開力を見せてくれました」とネルシーニョ監督の期待に応える。
65分前後から柏が主導権を握り、左の橋本和、右の藤田優人の両翼が機能し始める。71分の増嶋の同点弾には、橋本が間接的に関わった。クリアボールを拾うと左サイドをドリブルで一気に駆け上がり、鋭利な低空クロスをニアへ供給し、詰めた工藤壮人には合わなかったが、ファーのレアンドロが粘って得点を生んだCKを獲得した。73分の工藤の右ポスト直撃シュートの際には、藤田がくさびのボールを入れ、レアンドロが繋ぎ、工藤がスライディングボレーを放っている。
柏の両翼に高い位置に張り出されたことで、齋藤学と兵藤慎剛が自陣の守備に引っぱられたのも、攻撃に転じたかった横浜FMにとっては痛かった。74分に伊藤翔、84分には藤本淳吾らを投入するも、時すでに遅しの印象だけを残して終了。一瞬の沈黙のあと、冒頭のブーイングが沸き起こった。
以上
2014.08.10 Reported by 小林智明(インサイド)
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