台風12号の影響によって大雨がピッチを叩く中で行われたこの試合。ここまで7試合勝ち星のないホームの長崎も豪雨のごとく立ち上がりから岐阜のゴールを襲い掛かった。ただし、これまでの試合と同様に圧力を持って相手ゴールに迫るもクロスやシュートの質が低く、この日もゴールを脅かすほどの攻撃には至らない。
一方、この日の岐阜はナザリトや関田寛士の出場停止や三都主アレサンドロの負傷などベストな布陣を敷けないながらも、ラモス瑠偉監督は前節の岡山戦である程度の手応えを感じたであろう3バックシステムを採用。3−5−2で長崎戦に挑んだ。ただし、前半は長崎のスペースを生かしたコンビネーションプレーに戸惑い、「マークがはっきりしない」(ラモス監督)ことで何度もピンチを招いてしまった。
ただし23分、これまで我慢していた岐阜にビッグチャンスが訪れる。長崎のDF山口貴弘がバイシクルでクリアしようとしたところ、これが岩崎陽平の顔面にヒット。判定はPKに。これをナザリトの出場停止を受けて3試合ぶりの先発となった難波宏明が迷いなく決めて先制。このシーンについてラモス監督は「難波はチャンスに決めてくれた。PKの時もすぐボール取りにいってくれたので自信あるなあと思いました」とベテランの頑張りを讃えた。
しかし、長崎サポーターからはすぐに「長崎オーレ」の大声援が巻き起こる。これまで以上に中盤で激しくぶつかり合う展開に、長崎は32分に奥埜博亮が反転してシュートするも枠を捉えず、38分にはスティッペが混戦の中からシュートするもGK正面とツキがなく、41分にも神崎大輔がラインの裏に抜け出してシュートするもDFに阻まれるなど、なかなか同点に持っていけない。前半終了間際にはチームが理想として掲げる、恐れないパス回しで岐阜の中盤を混乱に陥れラモス監督を怒らせるも、結局得点には至らなかった。
後半に入り、長崎はスピードのあるイ・ヨンジェをピッチに送り出すとより攻勢を強め、何度も観客も沸かす。60分には奥埜が岐阜のGK川口能活がゴールを飛び出した後シュートもDFに阻まれ、スタンドはため息に包まれた。
その後も、長崎はどうにか同点に追いつこうと、佐藤洸に変え、深井正樹を投入。DFの高杉亮太も前線に上がったままで岐阜に圧力をかける。「(長崎は)残り15分で3−5−2のデメリットであるサイドを、4人ぐらい並べて攻めてきた。(中略)スペースも使ってきて、2列目から飛び込まれると(岐阜は)ついていけなくてパニックになった」(ラモス監督)が、長崎は焦りもありミスが連続する。
すると、アディッショナルタイムにGK中村隼が痛恨のファンブル。これにまたしても難波がつめて2−0。4月20日以来のホーム戦の勝利はまたしてもおあずけとなった。
試合後、高木琢也監督は「忘れないでほしい お前たちは 長崎を背負って戦うことを」と歌うゴール裏のサポーターに歩み寄り、対話。おそらく何かを確認しあったのだろう。高木監督は深々と頭を下げ、まだ諦めていないサポーターからは「高木琢也」の大合唱が巻き起こった。得点がとれない事や勝てない事で自信を失っている長崎だが、まだ誇りだけは失っていないことが分かったシーンだった。
試合後の会見で、高木監督は「(この結果は)普通じゃない(中略)これを受け入れられる自分がいるかいないか。これを受け入れて、逆になにくそという気持ちでやれるか。とにかく敵も見方も常に自分の中にあるっていうことだけはわかっているつもりですが、本当にわかっている人は現状として少ないと思います」と話し、自己意識の変化をチーム全体に改めて求めた。
良い時ばかりがサッカーではない。チームもサポーターも真価が問われるのはまさにこれからだろう。
以上
2014.08.04 Reported by 植木修平
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