前々節からシーズン後半戦に入り、東京Vは磐田、松本と、上位との対決が続いた。結果、勝利、ドローと、どちらも勝点を重ねることができている。前半戦21試合を3勝7分11敗、勝点16で終えたことを思えば、上々の2巡目スタートだと言えるのではないだろうか。息つく暇なく、3試合目となる今節も、京都というタレント揃いのJ1昇格候補の筆頭チームが相手である。「強いチームとやれることで、自分たちも力をより発揮できるところはあると思う」との南秀仁の言葉が象徴するように、毎試合出場メンバーの平均年齢が23歳前後の若いチームにとっては、強敵であればあるほどチャレンジャー精神が掻き立てられるというもの。後半戦最初のホームゲームということも含め、相手の名に怯むことなく、是が非でも勝点3を手にしたい。
前述の南のコメントを、もう少し続ける。
「強いチームは、自分たちのスタイルでどんどん攻めに出てきてくれるから、こっちも攻撃に行きやすいところがある。まして、京都は下(足元)でつないで崩してゴールを取るスタイル。うちもそういうサッカーを目指しているから、どっちが良いサッカーをできるのか、楽しみです」
当然、両者の間には20位(東京V)と7位(京都)という順位の差があることは重々承知だ。それでも、決して臆することはない。スタイルの似たチーム同士の攻防が、まずこの試合の一番の見どころだ。
その中で、三浦泰年監督は、「相手の4バックの裏のスペースにいかに抜け出し、そこにボールが供給できるか。そこからペナルティエリアに侵入し、フィニッシュで終われるか」を、ポイントに挙げる。当然、現在得点ランクトップを走る大黒将志、三平和司ら能力高い京都の攻撃陣への守備対応も重要だが、「そればかりを考えすぎても、臆病になるだけ。それよりも、こちらの攻撃のところ」だと強調する。ここ2試合良くなりつつある、選手が良い距離間でリズムとテンポをもった自分たちのサッカーがこの試合でもできるかがカギとなる。
注目は、FW杉本竜士だ。2試合連続ゴール中であり、前節では自身初のフル出場を果たすなど、勢いにのる。だが、「90分もプレーしてるんですよ。それなら2点決めなきゃ。もちろん、点だけが仕事ではないですが、FWなら複数得点取らなきゃダメ」と、何一つ納得していない。「キレイなゴールなんていらない。GKとの1対1やこぼれ球に詰めての得点など、必然で地味なゴールがほしい」。まして、今節の敵将は2年前に自分をトップチームへ引き上げてくれた恩師・川勝良一監督である。「1年目の自分は勘違いしていた。この2年で(期限付き移籍など)いろいろあって、精神的に成長できたことで、サッカーに対する考え方も変わった。今の自分を見てほしい。しっかりとプレーして、恩返しをしたい」。その思いを結果でも表せるか。期待したい。
川勝体制になり、リーグ戦4試合目となる京都は、前節でリーグ戦初勝利を挙げ、徐々にスタイルが顔を出しつつある。最も特徴的なのが、駒井善成のサイドバック起用ではないだろうか。前節も、1列前の左サイド三平との縦関係は良く、三平を追い越す動きや機を見て攻撃の枚数としてゴール前に顔を出すなど、持ち前の攻撃力が十分生かせている印象を受ける。また、逆の右サイドバック石櫃洋祐のクロス、右サイド伊藤優汰の中に切り込んでいっての左足シュートなど、いずれも精度が高く、積極的にビッグチャンスを作る。そして、中央では工藤浩平が圧巻の視野の広さとパス精度でゲームをコントロール。「ボールを持っていない時間は、常に頭を動かして、いつでもゴールを狙っている(東京V・杉本)」という大黒の動きに合わせたパス1本で、一撃を生む。また、前節から加わったドウグラスも初出場で早速ゴールを決めるなど、多彩な攻撃パターンを持つ。あとは、フィニッシュの精度ということだろう。
前述のとおり、東京Vの三浦監督も自チームの「攻撃」をポイントに挙げている。東京Vも複数得点がテーマとなるだけに、打ち合いになれば試合は一段とおもしろくなりそうだ。前節、すでに3点を挙げ2点リードしていたにもかかわらず、後半アディショナルタイムに入っても最後の最後まで攻め続けた京都の攻撃陣の奮闘は見事だった。夏場の連戦でコンディション的にも厳しいだろうが、90分間+α、終了の笛がなるまで “次の1点”を奪いに行く、熱くアグレッシブな闘いが見たい。
以上
2014.07.29 Reported by 上岡真里江
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