本物なのか、それとも偶然なのか。
3試合で9得点。天皇杯を入れれば、4試合で14得点。中断前は平均得点1.23という数字に甘んじていたとは思えないほど、広島はゴールを量産している。だが、その試合内容から考えれば、決して「必然」だったとは思えない。5得点をあげた柏戦も3得点の大宮戦も、シュート数は共に9。3試合の平均シュート数は9.3本と、平均3得点をあげているチームとは思えない数字が残る。得点と比較して、チャンスの数は決して多くないことを、この数字は証明しているといえよう。
もちろん、いくらシュートを撃ったとしても決まらなければ意味がない。だが、安定して得点を量産していくためには、チャンスの数そのものを多く創り、シュートの本数を増やしていくことがベターであることもまた、言うまでもない。しかし、それが今の広島はできない。
このチャンスの少なさも、3試合7失点という失点数の多さも、源泉をたどればビルドアップの不安定さにいきつく。縦パスを出す・受けるというタイミングが合わなかったり、横パスのつなぎをひっかけられたり。GK林卓人にプレスをかけられ、最終ラインからのつなぎが難しくなったり。もちろん、過去にもそういう事例は存在したわけで、ブレずにやり続ければ、必ず精度はあがっていく。怖いのは、「難しい」と判断しすぎて蹴る回数が多くなり、結果としてボールをつなぐ精度が落ちていくことだ。
簡単にボールを蹴ってしまうことでセカンドボールを拾われ、またも放り込まれる。この繰り返しによって守備陣が疲弊し、最後は崩れ落ちるかのような失点劇が現実化する。ビルドアップの不安定さによってボールを持つ時間が圧縮され、結果としてDF陣に精神的なゆとりを与えられていないことも、最後に踏ん張りきれない要因と見る。つなぐのは確かに局面ではリスクを呈示してしまうが、大局を見れば間違いなく「いい守備」につながっていく。ボールポゼッション率が高い浦和や川崎Fの失点が少ないのは、ある意味で当然の帰結だ。
そして甲府が狙っているのは、まさに広島のビルドアップをカットしてのショートカウンターだろう。昨年の小瀬での対決では、いいパスカットから繰り返しショートカウンターを繰り出してゲームを支配し、広島を疲れさせて攻撃も単発に抑え、完封勝利を収めた。得点こそセットプレーと強烈なミドルシュートの2点だったが、鋭いカウンターからあと2点くらい奪ってもおかしくない展開だった。クリスティアーノや阿部といった潜在能力の高い前線のタレントを揃えているだけに、速攻がはまれば広島の守備を瓦解させることも現実味を帯びてくる。
ただ、ビルドアップが安定しない中でも広島の得点が増えたのは、サイド攻撃が有効に作用しているからだ。「クロスをあげるワイドのプレーと、中で合わせる僕らとのタイミングがあってきた。キャンプやトレーニングマッチなどで意識して取り組んできたことが、公式戦の舞台でうまく出せていると思います」とは3試合で2得点3アシストと結果を残している石原直樹の言葉。実際、ワイドのポジションでプレーする清水航平が2アシスト、柏好文は1得点をはじめ3得点に絡む活躍を見せており、全9得点中7得点がサイドからの攻撃がゴールにつながっている。今や広島の攻撃の中心はアウトサイドと言ってよく、クロスやサイドでのドリブルの回数などは、Jトップクラスの数字を記録している。
特に古巣との対決を「本当に楽しみにしています」と意気込む柏好文は、現在絶好調。前節・柏戦でも対面のキム・チャンスを時間と共に完全制圧し、角度のないところからのシュートを豪快にたたき込んでサポーターの度肝を抜いた。他にも清水や山岸智、天皇杯で活躍したパク・ヒョンジンに加え、ミキッチの復帰も現実味を帯びており、ワイドの人材は多士済々。彼らを自由にさせてしまうと、いかに甲府のCBが集中力高く守っていても、失点を回避することは難しい。そこは必ず城福浩監督もケアしてくるはずで、シャドーを務める石原克哉や水野晃樹、さらに阿部拓馬といったアタッカー(ジウシーニョは今節出場停止)にも、サイドで低い位置まで戻り、数的優位をつくる守備を要求することは十分に考えられる。
優勝争いに何としても踏みとどまりたい広島と、なるべく早く降格圏から脱却したい甲府。どちらにも必要なのは勝点3だ。過熱必至のサバイバルゲームにおける最大のホットエリアが、両アウトサイドとなることもまた、必然である。
以上
2014.07.26 Reported by 中野和也
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