横浜FMの鉄人サイドバック、ドゥトラの引退前最後のホームゲームだったこの一戦。“神戸のマルキーニョス”との因縁対決もあり、ニッパツ三ツ沢球技場のスタンドは、試合前から非常にテンションが高かった。
その後押しを受けた横浜FMが、開始3分までに中村俊輔が左サイドで起点となり、自ら狙ったものも含め、3本のシュートを放つ。序盤から横浜FMが押し込んだが、神戸はカウンターで応戦。ボールを持つたびに大ブーイングの集中砲火を浴びたマルキーニョスが4分、13分とゴールを強襲。しかし2本ともGK榎本哲也の正面へ飛んだ。
18分には、マルキーニョスは右サイドへ流れて、ドゥトラと注目のマッチアップを迎える。結果的にこの勝負で勝ったのはマルキーニョス。「迷わずに入れた」クロスが、ドゥトラが懸命に伸ばした左足に触れることなく、ゴール前の際どいコースへ飛ぶ。栗原勇蔵が下がりながら辛うじてクリアしたが、こぼれ球を拾ったのはフリーのペドロ ジュニオール。シュートを打たせまいと飛び込んだ中町公祐を冷静に切り返してかわし、左足で先制ゴールを奪う。
だが、その3分後、今度は横浜FMが反撃。FKからのクリアボールを拾った兵藤慎剛が胸トラップから「イメージ通り」の抑えの利いたボレーでゴール左隅を揺らし、すぐさま同点に追いつく。
やられたらやり返す――。そんな展開に“三ツ沢劇場”は、さらにヒートアップ。36分には横浜FM、中村のパスを受け、左サイドからペナルティーエリア内に侵入した齋藤学が、ゴール至近距離からシュート。一方の神戸も39分にペドロ ジュニオールが強烈なミドル。GKが弾いたボールをシンプリシオが頭で押し込んだものの、これはオフサイド。一進一退の攻防が続き、両チームに決定機も訪れたがゴールは生まれず、1-1のまま前半終了を迎えた。
後半に入っても、前半同様にポゼッションでは横浜FMが優位に立ち、神戸はカウンターで活路を開こうとした。試合を振り返ると横浜FMにとっての最後の決定機となったのは49分のシーン。兵藤の横パスを中央で受けた小椋祥平の右足ミドルは、右ポストを直撃した。
神戸のラストチャンスは、日本人のヤングコンビが演出した59分の場面。左サイドで森岡亮太がスルーパスを出し、DFの背後に飛び出した小川慶治朗がシュート。GK榎本にブロックされるも、ルーズボールを再び小川が蹴り込む。しかしながら、榎本のセーブに阻まれた。
ここまでは攻守が目まぐるしく動いたが、その後、神戸の運動量が落ちたのと、横浜FMが新戦力のラフィーニャとFW藤田祥史を投入し、攻撃のギアをより踏み込んだのが重なり、ほぼ一方的な横浜FMペースへ。中断明け後のテーマである「やり切る攻撃」はある程度できたが、精度を欠いて結局ドロー決着に。シュート数も16対7と大きく上回り、前節のC大阪戦に続き「勝ち試合」(小林祐三)を逃した印象を残した。
一方、神戸は終盤、足が止まったことを考えれば、「勝点1は悪くない結果」(ペドロ ジュニオール)だろう。「コンビネーションとかがもっとあったら、さらに怖い」(栗原)チームだけに、今後もJ1の台風の目になる存在だと感じさせた。
なお、試合後にはドゥトラの引退セレモニーが行われた。本人はスタンドからの「ドゥトラ〜、オブリガ〜ド♪(ありがとう)」の大合唱を、感無量な様子で聞き、最後は胴上げ。40歳の偉大なサイドバックは笑顔を浮かべながら、宙に舞った。
以上
2014.07.24 Reported by 小林智明(インサイド)
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