予想外の天皇杯初戦敗退が決まったとき、カシマスタジアムの空気は形容しがたいものだった。もちろん、ホームのゴール裏から強烈なブーイングが鹿島の選手を襲った。しかし、起きてはならない結果が起きてしまった衝撃は、選手からもゴール裏に集ったサポーターからもありありと感じられ、その乏しい現実感が幻でも見ているかのような錯覚を引き起こす。もし、空気に色があるのなら怒りの赤ではなく蒼。ソニー仙台のゴール裏をのぞき、顔面を蒼白にする人の群れがあった。
あれから1週間が過ぎ、鹿島アントラーズは再びカシマスタジアムでの試合を迎えようとしている。悪夢のような記憶を払拭するには、勝つこと、そして優勝をサポーターに見せることでしか達成できない。
対戦するのは大宮アルディージャ。前節、3連覇を狙う広島と対戦し、前半に3失点を喫しながらも後半は逆に3得点と盛り返し引き分けに持ち込んだ。特にデビュー戦でいきなり2得点した新外国人のムルジャには大きな注目が集まる。まだコンディションは完璧ではないようだが、得点力の高さをデビュー戦から発揮したと言えるだろう。反転しながら鋭く右足を振り抜いた2点目のゴールなどは、才能の片鱗を伺わせた。ズラタンと家長昭博が絡む攻撃陣は要注目だ。
鹿島の攻撃陣で注目したいのはやはりダヴィだ。前節は、後半になってシュート3本を放ったが前半は0本に抑えられてしまった。F東京の中盤が3枚だったため、鹿島は前半から多くのクロスをダヴィに送ったが、ダヴィの動きとクロスが合わず、ほとんどチャンスにならなかった。唯一の得点となった豊川雄太のボレーシュートはダヴィがクロスに潰れたことで生まれただけに、その場でクロスを待つダヴィの頭に合わせるのか、それともクロスにダヴィが飛び込んでいくべきなのか、細かな修正が必要だろう。赤崎秀平が左膝内側靱帯を痛め離脱しただけに、ブラジル人FWにかかる期待は大きい。
とはいえ、攻撃を支えるのは守備。狙いとする攻撃を仕掛けるためにも守備が重要だ。前節、鹿島は前から奪いにいく守備が久々に見られた。ホームでの試合ということもあり、今節もそうした戦いが継続されるだろう。夜は涼しくなる鹿島であれば、夏場と言えど体力を気にして戦う必要はない。しかし、大宮も前から行くプレスを持ち味の一つとする。お互いに同じような戦いを志向するならば、中盤は激しい潰し合いとなるだろう。また大宮には3バックというオプションもある。戦局に応じて戦い方を変えてくるはずだ。
リーグ戦第16節を迎えるが、鹿島はホームのカシマスタジアムで3勝4敗と負け越している。天皇杯の悔しさを晴らすためにも勝ち続けなければならない。
以上
2014.07.22 Reported by 田中滋
J’s GOALニュース
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