立ち上がりは北九州が押し込み、山形はハイプレスをようやくしのぐ展開だったが、10分弱で「ターゲットのディエゴから中島裕希へのスルーパス」のパターンが決まり始めた山形が流れを引き寄せる。9分には中島からパスを受けた秋葉勝が、14分には中島自身が決定機を迎えている。山形のカウンターが形になりかけた18分には逆に北九州にチャンス。冨士祐樹のフィードに飛び出した渡大生に決定的なシュートが生まれる。ここを山岸範宏の好セーブで防いだ山形は、その直後の19分、右サイドから崩しにかかる。秋葉のクロスはファーサイドに流れたものの、ディエゴがいち早く追いつきマイナスのグラウンダーを送ると、ジャストのタイミングで入ってきた松岡亮輔はスルーし、その後方から入り込んだ石川竜也が左足を振り抜いた。シュートが低い軌道のままゴールネットに突き刺さった瞬間、山形の先制点となった。
その後も宮阪政樹のフィードで秋葉が裏へ抜け出したり、スローインをディエゴがダイレクトでサイドチェンジし、またも石川がミドルレンジからキャノン性のシュートを打ち込むなど、山形の攻勢は続いた。右サイドバックでは初先発となった當間建文も、松岡のサポートを得ながら組み立てとフィードの起点として機能していた。その間、北九州の2トップに起点となるはたらきを許していなかったが、「前半の終わる10分か15分前からボールをしっかり動かせ始めた」(柱谷幸一監督)とボール保持率を高めていった北九州は、後半もその流れを持続する。「後半は相手にボールを持たれて、うちがそこに後手後手というか、うまい具合に限定していけなかったので、余裕をもって持たれたり、(ボールに)行けてないなというのは感じてました」と秋葉。北九州は自陣でプレッシャーを受けても少ないタッチ数でフリーで受けた選手が前を向き、優位に展開した。
原一樹のパスを受けた小手川宏基がミドルシュートを放ち、コーナーキックを得た55分から、この試合のターニングポイントとも言える数分間が訪れる。内藤洋平が蹴ったコーナーキック直後に鳴らされた笛は山形ファウルの判定。中央からニアに入ろうとした前田和哉をマーカーのイ ジュヨンがやや遅れて追ったが、バックステップを踏んだ原が2人の間に割って入り、イが伸ばした右手が前田を倒す形になった。イにイエローカードが提示され、PKのキッカーは原。しかし、ゴールマウスの前に立つ山岸は「相手の原一樹も浦和で1年間一緒にやっている昔の仲間なので、いろんなことを考えて判断した」と右に跳んでセーブし、弾いたこぼれ球も3人がかりでゴールラインにクリアした。絶体絶命のピンチはいったん回避されたかに見えたが、直後のコーナーキックで山岸がハイキャッチをファンブル。目の前に転がってきたボールに「考えてというよりも体が反応する感じ」と渡が右足で蹴り込んだ。
同点とされ、突き放したい山形は攻撃のギアを上げていくが、「今日は全体的にそうだったと思うんですけど、イージーなミスがあまりにも多くて、なかなか攻撃にかかれなかったんじゃないかなと思います」(石崎信弘監督)とパスがつながらない場面が目立ち、後半はディエゴをターゲットにしたボールもほとんど相手に拾われた。一方、73分までに池元友樹、大島秀夫に2トップを入れ替えた北九州は小手川、内藤の両サイドハーフが中央のサポートを厚くし、星原健太、冨士の両サイドバックがより高い位置でプレーして山形を押し込んでいた。
79分、スローインを右サイドで受けた大島がキープし、戻したボールを引き取った風間宏希が人の間を抜けるようにカットイン。そのまま真横にグラウンダーのクロスを入れると、池元がダイレクトで合わせた。足元低く飛んできたボールを山岸はギリギリ右手で触るが、弾かれてファーポストの内側へコースを変えたボールは、立ち上がり追いかける山岸よりも早くゴールラインを越えた。同点後に投入した萬代宏樹に加え、山形は山崎雅人、汰木康也と攻撃のカードを次々に切るが、自陣で守る北九州のブロックを崩すことはできず、残りの時間はむしろカウンターからの3失点目を感じさせるものだった。
北九州が先制された試合を勝利に換えたのは、今季これが5度目となる。「後半は0-0のつもりでしっかりボールを動かして先に1点取ろう、1点取ればまた流れが我々のところに来る」。柱谷監督の言葉には過去の裏付けがあり、ピッチ内の選手たちも「後半に逆転勝ちするのは前半戦からすごく多かったので、失点しても逆転できるだろうというのはあった」(渡)と拠り所を信じて戦うことができた。ただし、キャプテンの前田は「そこで今年は逆転してますけど、精神的には苦しいですよね」と明かす。「強くて体力のあるチームなら、やっぱり(0-2で敗れた)湘南戦みたいに無理ですし、逆転できずにもう1点取られて終わってしまうので、上を見た場合には前半ゼロで折り返すというのは重要ポイントですかね」。リーグ戦で3試合連続先制を許しているチームの今後のステップアップを見据えつつ、次節はホームに大分を迎えてのバトルオブ九州(7/26・土・18:00〜)に臨む。
「うちがまず、カウンターから点が取れなかったというのが前半戦の反省としてあって、今日はボールを奪ったあとに、できれば速い攻撃も入れていこうという形でやりました」(石川)。守備が安定感を増し、上位に食い込むためにさらに得点を求める山形としてごく自然な流れではある。そうした意識を明確にしたこの1週間のトレーニングでは、各選手の動きが活性化したのも事実だ。が、そもそもシーズン序盤、カウンターを狙うもののシュートにたどり着く前にミスでボールを失うケースが多く、「縦に急ぎ過ぎる」として、サイドに起点を置いて時間をつくり、ゴール前に人を多く送り込む状態でシュートシーンを迎えようという方向に徐々に修正してきた経緯がある。カウンターでの得点アップを狙うのであれば、少人数で攻めきるための精度を上げる必要がある。と同時に、それが短時間で成果が上がらないのであれば、頻繁に守備に切り替わる状況にも焦れずに対応し続ける覚悟も必要だろう。
石川はもうひとつ、重要な指摘を残している。「同点に追いつかれた、逆転されたとか、点が動いたときに少しパワーダウンすることが全体として見えるから、そこでもうひとつ、点を取り返す気持ちだったり、前からもう一度行こうというところであったり、そういうのがないともう一度逆転するということはないと思います」。今季初めて逆転負けを喫した山形。連勝は昇格を成し遂げるためのただの通過点に過ぎないが、その通過点をまだ越えられずにいる。
以上
2014.07.21 Reported by 佐藤円
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