先週の天皇杯2回戦では「北関東ダービー」に相応しく、栃木はライバル群馬と120分の死闘を繰り広げた。最終的にPK戦で敗れたことで心身のコンディションが心配されたが、「あそこまで行って負けたので疲労は1.5倍ある。でも、(試合まで)1日多いから、回復するはず。(敗戦に関しても)うまく消化できている」と、キャプテン廣瀬浩二は激戦の傷跡が残らないことを強調した。また、チームメイトから疲労は感じ取れず、むしろ「あの悔しさを忘れずに、千葉戦に臨もうという雰囲気を感じる」と廣瀬は続けた。気持ちの切り替えはできており、リーグ戦に集中できる態勢は整っていると見ていいだろう。
夏場に弱い栃木。例年、リーグ前半戦をいい形で終えながら、夏場に急降下する嫌いがある。その体質改善に取り組まなければ、現状の7位から上昇してプレーオフ圏内に突入することは難しい。
「毎年、後半戦はいい成績が出せていない。いい加減それを克服して、新しい段階へと踏み出したい。そのためには、千葉戦が大事になってくる」(廣瀬)
ありがたくないレッテルを剥がす作業は、リーグ後半戦の初陣となる今節の千葉戦から始まる。
開幕戦では千葉に2-0で快勝。今季から阪倉裕二監督が導入したハイプレスがハマったことが、その勝因として挙げられる。
「J2ではプレスをかけると簡単に蹴るチームが多いけど、千葉は細かくつないでくる。そこでプレッシャーがうまくハマった感覚がある。相手の嫌な守備がまたできれば、栃木にもチャンスはある」
確信に満ちた言葉を並べたのは、エース瀬沼優司だ。前から果敢に瀬沼が追い、相手にロングボールを蹴らせ、それをDFラインが跳ね返し、泥臭くセカンドボールを回収しまくる。また、パスコースを限定したことで、何度もインターセプトできた。相手の中盤を無力化し奪ったボールから浅いラインの背後に働きかけ、先制弾を得た試合展開はほぼ完璧だった。3月の試合では、思い描いたとおりにプランが遂行できたと言える。今回も、その再現を狙う。そのためには、やはりハイプレスのハマり具合が重要になる。千葉は先の天皇杯2回戦でも、格下の長野にハイプレスから失点を喫している。前から行く姿勢を失うことなく、「そこ(取りどころ)を見逃さないようにしたい」(GK鈴木智幸)。
鈴木淳監督の解任、関塚隆監督の就任。監督交代という劇薬を使用した千葉は、ただいま公式戦2連勝中とその効果が如実に表出している。特に2トップのケンペスと森本貴幸の好調さが際立つ。体が絞れた森本は全盛期のシャープさを取り戻しつつある。万全ではなかった前回の栃木戦でさえ途中出場でリズムを作った。公式戦3試合連続ゴールに加え、今節はチャンスメイクも期待される。
一方、相棒のケンペスは左サイドバックの中村太亮とのホットラインから、膨れ上がったヘアースタイルのように大爆発を虎視眈々と窺っているはずだ。ブラジル人FWの高さと強さを生かすには、J2屈指の構成力を誇る中盤をフル活用し、十八番のサイドアタックを繰り出せるかが、キーファクターになることは間違いない。新指揮官の下、栃木戦から低迷した前半戦の挽回を期す。
「(順位が上がるか、下がるか)どっちに転ぶか分からない順位」
瀬沼は現状の7位をそう捉えている。数チームがわずかな勝点差の中にひしめく状況を、端的に表現している言葉だ。前半戦での連敗は1度きり。だが、連勝もたったの1回。栃木が混戦を抜けきれない原因は、火を見るよりも明らかだ。それだけに、「連勝を重ねていければ、プレーオフに近付く」(瀬沼)と、誰もが把握できている。天皇杯で先に進めなくなったのは残念だが、見方を変えればリーグ戦に集中できるとも言える。夏の暑さにも、忌まわしい過去にも負けず、21試合+αに向けて栃木は突き進む。指揮官はもちろん選手たちも、今季は最後の最後までファン・サポーターを楽しませるつもりでいる。
以上
2014.07.19 Reported by 大塚秀毅
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