ワールドカップによる中断期間が明け、約2カ月ぶりに再開するJ1リーグ。ACLによる延期分となる第12節で、Ｃ大阪と川崎Ｆが顔を合わせる。この一戦は、Ｃ大阪にとって、再始動後に就任したマルコ ペッツァイオリ新監督のもとで臨む、最初のリーグ戦。そして、7月7日にスイス・バーゼルへ移籍することが決まり、この川崎Ｆ戦後にセレモニーが行われる予定の若き生え抜きエース、柿谷曜一朗を、快く送り出すための大事な試合となる。

昨シーズン1月末、新体制会見およびサポーターズコンベンションの中で、Ｃ大阪のエースナンバー「8」を、森島寛晃氏、香川真司、清武弘嗣に次いで、背負うことが発表された時から、約1年半。サポーターの大拍手と大声援を力に、人一倍強い想いでＣ大阪を愛し、Ｃ大阪のために戦い、走り続けてきた育成生え抜きのトップランナー、柿谷。日を追うごとに様々なプレッシャーを受けながらも、言葉だけでなく、そのプレーで、結果で、応え続けた。昨シーズンは、前線での獅子奮迅の活躍を見せ、J1で3番目に多い21ゴールを獲得。盟友の山口蛍と共にＪリーグベストイレブンを受賞するなど、チームの3年ぶりとなるACL出場を導いた。今季、激動のシーズンを迎え、J1では苦戦しながら、ACLノックアウトステージの扉を開いたのも、柿谷のゴールからだった。この1年で瞬く間に日本代表に不可欠な選手にもなり、森島氏、西澤明訓氏以来となる、Ｃ大阪在籍選手としてのW杯出場も達成した。桜のチームメイトから全幅の信頼を受け、様々な苦況も乗り越えながら、クラブと共にたくましく成長してきた4代目「8」番。彼の新たな旅立ちのときを、今度はクラブが、勝利という形で飾りたいところだ。

柿谷曰く「今までサッカーをやってきた中でこれ以上ない仲間」が、彼の想いも背負って、新たな戦いに出る。しかも、ペッツァイオリ監督のもとで、約1カ月間、新たなチームスタイルを作り上げてきたなかでの、J1相手の公式戦初陣。その仕上がり具合も注目される。

さて、Ｃ大阪も、川崎Fも、12日（土）に行われた天皇杯2回戦では、延長戦にもつれる激闘で、120分の戦いを繰り広げ、なんとか3回戦に勝ち進んだ。そこから、中2日での、タイトな日程で試合に挑むため、この蒸し暑い日々も考慮に入れた、体力勝負の試合となるだろう。ただし、Ｃ大阪が現状のベストメンバーを並べていたのとは対照的に、川崎Ｆは天皇杯では中村憲剛、レナトがベンチ入りせず、大久保嘉人、小林悠、大島僚太らもサブスタートと、中断前のリーグ戦から大幅にメンバーが入れ替わった中で試合を行っていた。川崎Ｆには敵地への移動というハンデもあるとはいえ、互いのコンディションも、勝敗の鍵を握りそうだ。

Ｃ大阪にとって、川崎Ｆの対戦では、様々な因縁もある。Jリーグでの初対戦となった2000年1stステージでは、延長Ｖゴールの末に川崎Ｆが勝利。Ｃ大阪のステージ優勝が目前で立たれた瞬間でもあった。06年の最終節でも、Ｃ大阪は川崎Ｆに敗れ、そこでJ2降格という悔しい現実も味わった。ただ、10年のJ1復帰以降では、3勝5分けとリーグ戦で負けなし。12年の最終節では、終了間際の横山知伸（現大宮）のゴールで引き分けに持ち込み、ギリギリでJ1残留を自力で決めたのも、記憶に新しい。今回の会場、キンチョウスタジアムでのオープニングゲームも川崎Ｆ戦（0-0）だった。そして、12年のヤマザキナビスコカップ予選リーグにて、3-2と勝利している試合では、決勝点を決めたのが、柿谷だった。あの時から約2年。今回は、Ｃ大阪のレジェンドの1人でもある、大久保を擁した相手との対戦。また、Ｃ大阪にとって、区切りとなる、記憶に残るような試合になることを期待せずにはいられない。

チケット完売、満員札止めの中での、キンチョウスタジアムでの試合。Ｃ大阪が新たな門出を勝利で祝い、低迷脱却の足がかりをつかむのか。それとも、勝てば3位浮上の可能性もある川崎Fが、リーグ屈指の攻撃サッカーを発揮して、06年以来となるＣ大阪戦勝利をつかむのか。『圧力鍋』と称される舞台は、間違いなく、最高の興奮空間となるだろう。

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2014.07.14 Reported by 前田敏勝