勝利した磐田・シャムスカ監督は試合後、苦戦したことを認めた。「この天皇杯の2回戦でジャイアントキリングはたくさんあった。大きなクラブと対戦するクラブは必ず高いモチベーションで挑んでくるし、てこずってしまった」
後半途中までは“ジャイキリ”が起こり得る展開だった。磐田は前田遼一が腹痛、伊野波雅彦が2014FIFAワールドカップ後の休養のためにこの試合を欠場。攻守の要を欠き、さらに前半の決定機を決めきれなかったことでややバタついた。15分には松井大輔がポスト直撃のミドルシュートを放ち、26分には小林祐希がGKと1対1になるが、いずれも得点ならず。スタンドからはため息が漏れた。
後半途中まで0-0のまま進んだが、前田に代わり1トップを務めた金園英学のゴールで流れを手繰り寄せた。磐田の先制点は61分。敵陣右サイド・松井大輔のクロスに飛び込んだ金園が藤枝の選手に倒され、PKを獲得。自らキッカーを務め、冷静にゴール左に決めた。「(藤枝の)GKが先に動いたので、キックの方向を変えた」と同選手。このゴールでチーム全体に落ち着きが生まれた。
対する藤枝も健闘は見せた。「前半はプラン通り。前線からプレスをかけることを意識し、相手のリズムを崩そうという狙いでゲームに入った」(水島武蔵監督)。ヤマハスタジアムの空気にのまれず、序盤からファイトあふれるプレーを見せた。磐田の最終ラインがボールを持つと、選手間でタイミングを合わせてプレッシングを発動。後方、中盤を絡めたビルドアップに課題のある磐田を慌てさせた。
体を張った守備を続けつつ、シンプルな攻撃から決定的なチャンスも作った。37分には左サイドから攻撃を仕掛け、最後はエース・大石治寿が左足で惜しいシュート。70分にはCKに飛び込んだ満生充がバー直撃のヘディングシュートを放つなど果敢に磐田ゴールを目指した。
しかし、試合終了間際に金園英学にダメ押し点を奪われ、万事休す。最後のワンプレーまで攻め続ける姿勢を見せたが、あと一歩及ばなかった。チーム最多となる4本のシュートを打った大石は「(磐田相手に)何ができたかというより、得点を取れなかったという思いが強い」と唇をかみ締めた。
試合後、敗れた藤枝・水島監督は悔しさをにじませながらも、ポジティブにゲームを総括した。「最後まであきらめず、点を取りに行く姿勢を出せた。選手たちは負けて悔しい思いをしているが、この試合がいい経験になったと言えるように今後に繋げていければ」(同監督)。細かい部分で磐田にクオリティーの差を見せられた部分もあるが、運動量や球際、攻守の切り替えといった部分では全く引けを取らなかった。
一方、より多くの課題を残したのは磐田。3回戦進出というノルマは達成したが、この試合で出番を得た金園英学、菅沼駿哉がさらにアピールしなければチームの底上げには繋がらない。比較的スタメンを固定しながら戦う今季の磐田ではあるが、公式戦初ベンチ入りを果たした大卒ルーキー・小川大貴ら若手の奮起がリーグ後半戦のカギとなる。
以上
2014.07.13 Reported by 南間健治
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