リーグ戦の前半が終了し、ちょうど一区切りしたところで迎えるこの試合。リーグ戦とは違うトーナメント大会の序盤戦ということで、チーム状況によって挑み方、考え方は様々だろう。しかし、このカードは東京Vvs北九州というJ２クラブ同士の対戦となる。それだけに、来週からのリーグ後半戦ヘ向けて弾みをつけるためにも、多少はあるにせよ、両者とも大きくメンバーを変更してくることは予想しづらい。
特に東京Vは、リーグ戦21試合を戦い、3勝7分11敗20位と、結果を残すことができなかった。内容的にも、複数得点がなかなか奪えず、アタッキングサードでのアイデアの少なさ、意識のズレなど、連携面に課題が見られる試合が少なくなかった。その意味でも、とにかく試合数をこなし、チーム全体の共通意識を高めることが、結果を出すための得策と言えよう。まして、先週のリーグ第21節では、三浦泰年監督は「前半戦の21試合で積み重ねた経験、経過、プロセスを後半に生かし、１つでも多く勝利につなげていければなと思います。私自身が、目指すものを信じてやっていかなければ、そこに結果は出ないと思っていますので、強気で、自分自身を信じて、選手を信じて、選手も自分自身を信じてやっていくことが非常に大事だと思います」と語っている。“積み重ね”とは、一体何か。その答えを、勝利という形の中で証明したい。

前半戦の最も大きな反省点であり、現在も継続中となっている課題が、この場でも何度も書き続けている通り「得点力」だ。当然、選手たちの口からも、同じ言葉が聞かれる。中でも、深刻に受け止めているのが、平本一樹だ。「決定力の問題は、完全にFWの責任。申し訳ないなと思っています」。それでも、徐々にではあるが、ケガ復帰後初スタメンだった第19節vs栃木戦以降は、プレーをしている中で手応えを感じつつあるという。ただ、「その回数をもっともっと増やしていかないとダメ」とも平本。これまでは、テンポよく崩せている場面には、平本、永井秀樹、南秀仁の3人の関係がほとんどだった。だが、先週の第21節vs山形戦では、そこに安西幸輝、安在和樹、ニウドと絡んでいく人数も増えてきていた。あとは、チームの柱が指摘する通り「回数」を増やすことができれば、自然と決定的なチャンスの数も増えてくるに違いない。「点をとって、絶対に勝ちます！」背番号25の宣言を信じたい。

対する北九州は、現在リーグ戦5位とプレーオフ圏内に位置する。まずはしっかりとした守備でリズムを作り、チャンスがくれば素早く攻撃に転じてゴールを奪うというスタイルが確立できつつあることが、好結果の要因ではないだろうか。ただ、一方で、そのスタイルの象徴と言えるのかもしれないのが、上位チームで唯一得失点差が「−１」という点だ。序盤戦こそ、複数得点で勝利する試合が多かったが、第15節以降、1点以上奪えていない。前線には池元友樹、原一樹といったテクニックも得点能力も高いFWが揃うだけに、そこへいかに効果的なボールを入れることができるのかが1つの鍵を握りそうだ。
また、北九州を古巣とするGK佐藤優也は、「よく知る相手」として、渡大生と冨士祐樹の名を挙げる。「良い選手だって知ってるからこそ、良さを出させないために試合前からいろいろやっていきますよ（笑）」と、さまざまな駆け引きをしながら、対戦を楽しみたいと話す。

両チームの前回対戦は5月11日第13節だった。その試合は、前半14分に決まった常盤聡（東京V）のスーパーゴールが決勝点となり、1-0で東京Vが勝利している。今季3つのみの白星を挙げられた試合の中の１つだけに、東京Vは「相性はいい」と思っているだろう。再び上位から勝利し、自信をもって後半戦を迎えたい。逆に、北九州の選手たちにとっては、リベンジしておきたい相手のはず。借りは早いうちに返しておきたいというものだ。

見方によっては、前半戦を終えて一区切りしたことで、何かを変えるいいタイミングでもあると言えよう。大幅なメンバー変更はなくとも、改善を要する位置の人の入れ替え、戦い方の新たなチャレンジなどは十分考えられる。リーグ戦後半戦を占う意味でも、そうした部分に注目してみるのも面白いかもしれない。

以上


2014.07.12 Reported by 上岡真里江