時折雨が強く降り、気温22.3度ながら湿度81%と選手の体力的には厳しい状況の中で行われたこのゲーム。東京V・三浦泰年監督が「前半の立ち上がりから試合が終わるまでタフな試合だった」と振り返るように、両チームの選手がハードワークを続け、試合終了のホイッスルの直後には数多くの選手がピッチにへたり込む状況だった。一方で、中盤での攻防では数多くのパワーが掛けられたが、三浦監督が「サッカーの魅力」と述べるゴールシーンに対するパワーは不足し、両チームの現状を反映したスコアレスドローに終わった。
前半にペースを握ったのは横浜FCだった。ロングボールを織り交ぜて相手のDFラインに揺さぶりをかけつつ、第18節の札幌戦から取り組んでいるボールサイドに人数を掛ける守備から攻撃への切り替えで優位に立つ。昨年まで東京Vに在籍していた小池純輝が何度となく東京Vが嫌がるスペースを利用し、チャンスメイクする。一方で、東京Vも立ち上がりはDFラインに不安定さがあったが、ニウドを中心にして横浜FCの攻撃を徐々に遅らせることに成功すると、守備のリズムを整えていく。結果として、前半のシュート数は横浜FCが7本に対して、東京Vは4本。数字に表れるように、横浜FCがやや優勢ながら、両チームに決定機もあったが、それを決め切るだけのゴール前での精度と冷静さを欠いてゴールを割ることはできなかった。
状況を打開するために先に動いたのは横浜FC。内田智也に代えて小野瀬康介を投入すると、小野瀬は広く動きニウドを外す形でのチャンスメイクを試みていく。一方、東京Vは永井秀樹を高い位置に上げて2トップ気味にし、さらに69分に常盤聡を投入し明確に2トップにする。するとすかさず、横浜FCは2トップに対して3バックで受ける形にして、なおかつワイドでの攻撃を増すために西嶋弘之を投入。山口素弘監督は「何が何でも勝点3を取るということで多少のリスクを考えながら3枚にした」と振り返ったが、両チームともよりゴールに近づくためのギアチェンジのためのベンチワークを見せる。これで試合は前半の膠着から一転してオープンな展開となる。ともにゴールを狙う積極性を見せつつアップダウンの激しい展開となるが、一方で高湿度というコンディションもありゴール前での精度を両チームとも欠いてしまう。それぞれに、最後の崩しの形は頭に置いたプレーをするが、シュートも本数は前半よりも少ない横浜FCが2本で、東京Vが3本に留まった。そして、この構図のまま試合はタイムアップを迎えた。
両チームにとって、浮上のためには勝点3が必須だった試合。それだけに、スコアレスドローという結果は、この日の天候のように晴れ間が見えない状況を象徴していた。横浜FCにとっては、何度となくペナルティエリア付近まで進入し、クロスを上げていいたし、切り崩しのプレーのアイディアは見えていたが、それを成功させるためのプレーの精度の問題は解消されなかった。この日はボランチの位置に入り、低い位置から攻守を支える立場になった寺田紳一は「決めるオーラというか、俺が決めてやるという選手がもっと必要」と述べたが、ゴールに対する貪欲さを攻撃陣で共有できるかが大きな課題。この日も、ニウドを中心とした東京Vの執拗な守備にパスのタイミングを失うシーンが多かったが、より判断を早くして、ゴールから逆算したチームでの動きを無駄にしない迫力を増すことが必要だ。
東京Vは、守備という点では立ち上がりこそ不安だったが、永井秀樹がニウドをサポートし、ニウドが前向きに守備できる時間を作ることで、守備全体を安定させて、ショートカウンターにつなげる形を作り出せたことは1つの収穫と言える。ただし、南雄太のファインセーブに阻まれたとはいえ、こちらもゴールを決め切るオーラには少し欠けてしまった。三浦監督がこの試合で掲げていた「強気」というテーマについて、今後の試合に伸ばしていくことが重要になるだろう。
両チームにとっては、欲しい勝点3を得ることはできなった。その意味では不満が残った試合とも言える。両チームに残ったゴールへのパワー不足をいかに解消するか。次節に向けて課題は残った。
以上
2014.06.29 Reported by 松尾真一郎
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