今回の移籍に関わった関係者への謝意と自らの決意表明を簡潔に済ませたあと、それと同じくらいの時間を費やしたのは、6月28日にホームで行われる磐田戦「県民応援デー」の告知だった。「たくさんのサポーターの方に足を運んでいただき、応援していただければ僕らの力になるので、そちらのほうもよろしくお願いします」。セッティングされていた場内マイクが要らないくらいによく通る、芯のある低音を会場内に響かせた。山岸範宏、山形の一員としての第一声だった。
2001年から浦和ひと筋でプレーしてきた36歳の山岸が突如、山形のユニフォームに袖を通すことになったきっかけは、開幕から出場を続けてきたGK清水健太の全治8週間の負傷。5月以降は複数失点がなくなり、守備の安定期を支えてきた守護神の離脱を「非常事態」と捉えたクラブ側が、頂点を知る経験値の高い山岸に白羽の矢を立てた。
第2種でトップに登録されたばかりの山形ユース・摂津颯登を除いても、清水が戻ったあとのGK陣は4人になる。石井肇テクニカルダイレクターは、清水のこれまでのパフォーマンスを高く評価していた一方、「4人でしのぎを削ってやっていく。そういうピリピリ感が欲しい」と山岸加入の化学反応にも大きな期待を寄せていたが、その山岸を誘う際にも「ポジションは空けてないよ」と明言したという。「レッズで見ていたのは、都築と激しいポジション争いをして、奪われて、奪い返して、また今年は西川(周作)が入って、チームのなかでのポジション争いを繰り返してきている。プロとしての厳しさを持っている選手なので、ぜひそこを吹き込んでもらいたい」。
「キャリアのなかで大きな分岐点だとは思いましたので、悩みましたけれども、自分が成長するための新しい挑戦、自分がひと回り大きくなるための挑戦という覚悟を決めて、この移籍を決めさせていただきました」。移籍を決めた理由を山岸はそう説明した。36歳は山形でもチーム最年長。その経験値の高さはチームにプラスの影響を与えることは間違いなく、周囲からはそれを期待する声は早くも高まっているが、山岸が一大決心をもって、人生で初めてクラブの垣根を越えた理由はそこではない。「サッカー選手である以上、チームのために試合に出て自分のパフォーマンスを発揮するというものは最大限の目標ですから、当然競争はあります。自分もその競争を一からチャレンジしていく覚悟で来ています」
心に燃料をくべて、山岸の新たな挑戦が始まった。
以上
◆山岸範宏選手 浦和レッズより期限付き移籍加入のお知らせ(リリース)
◆県民応援デー! >>>イベント情報(山形公式サイト)
6月28日(土)J2 第20節 山形 vs 磐田(18:00KICK OFF/NDスタ)
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2014.06.19 Reported by 佐藤円
J’s GOALニュース
一覧へ【J2日記】山形:36歳、新たな挑戦(14.06.19)
会見に出席した石井肇テクニカルダイレクター(左)と山岸範宏選手の横には、「県民応援デー」の告知ボードが飾られていた
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