千葉は６月14日の第18節・京都戦で３−０の勝利を収めたが、81分に千葉に勝利をグッと引き寄せる追加点を奪ったのが兵働昭弘選手だ。その試合で兵働選手は53分のケンペス選手の先制ゴールをＣＫのキッカーとしてアシスト。千葉は優位に試合を進めたが、後半は京都の反撃を受ける時間帯もあった。同点に追いつかれて引き分けることもあり得ただけに、兵働選手の豪快なミドルシュートの追加点は貴重なものだった。

背番号10をつけ、主力としてダブルボランチの一角で活躍する兵働選手だが、今季の開幕時はスタメンではなく、開幕から４試合は交代出場が続いた。第５節・熊本戦で今季初のスタメン出場のチャンスを得ると、１分にこぼれ球からグラウンダーのミドルシュートを打って最初の決定機を作り、積極果敢にゴールを狙う姿勢を見せた。その姿勢に牽引されるように千葉はアグレッシブに戦い、熊本戦を３−０で勝った。
兵働選手は続く第６節・水戸戦では20分に直接ＦＫを決め、今季初ゴールで先制点を奪取。一度は水戸に追いつかれたものの千葉は２−１で勝ち、兵働選手は試合後の取材エリアで旧知らしいテレビ関係者に「やっとスタメンで出られるようになったよ」と笑顔を見せた。スタメンで出られずにいた悔しさを吹き飛ばすかのようなゴールだったのだが、実は後日、兵働選手に話を聞いた時に水戸戦でのゴールについてこんなことを言っていた。
「あの時はＦＫが決まった瞬間にスタジアムがシーンとしていたから、自分としては『あれ〜？』っていう感じだったんです。千葉のゴール裏のサポーターはＦＫが決まったゴールが逆サイドだったから、たぶんすぐにわからなくて『今の入った？あ、入ってる。入った！』っていう感じだったと思います」
水戸戦ではタイムラグがあってからの歓声だったが、京都戦ではシュートが決まった瞬間に大歓声があがった。また、兵働選手は以前から「セットプレーから得点できればチームが優位に立てる」とも話していて、京都戦の先制点のアシストも狙いどおりだった。

ゴールを演出する兵働選手の左足だが、生まれつきの利き足だったわけではないようだ。
「たぶんサッカーを始めた時から左足でボールを蹴っていたと思うけど、僕の兄貴が左利きだったので真似したと思うんです。僕はいつも兄貴を見て育ってきたので。だから、兄貴は手も左利きだけど、僕は手は右利きなんです。でも、足が左利きでよかったです。左利きの選手は少ないので重宝されますからね」
だが、レフティが重宝されるとはいえ、持ち前の才能に加えての努力なくしては今の兵働選手はない。最近、兵働選手が言っていることの１つが「サッカーに年齢はまったく関係ないと思うし、取り組み次第でどうにでもなると思う」というもの。兵働選手の特長の１つに視野の広さがあるが、それについてはこんなふうに話している。
「紅白戦みたいなゲーム形式じゃなくても、ポゼッション練習や単純な普通のボール回しでもある程度周りを見るような癖をつけていれば、視野の広さは鍛えられるんじゃないかと思います。そういうふうにやっていればワンタッチの技術も磨けるし、全てが試合に繋がる。この練習ではこういうことを意識してやろうと考えてやれば、もっとサッカーがうまくなると思います。言われたことをただこなしているだけではダメ。僕もプロ１年目の時は全然考えずに毎日必死にこなしていたけど、もうそういう歳でもないですから。僕は今ももっともっとうまくなりたいと思っています」

ベテランの域に入りつつあっても成長を目指す兵働選手が、試合中に見せる姿にはちょっと初々しいものもある。ルール改正で現在は試合中にユニフォームのシャツをパンツの中に入れていなくてもかまわないが、兵働選手を見ると常にきっちりと入っているのだ。
「言われてみれば確かにそうですね（笑）。それはもう癖だと思います。練習だとシャツは出しているけど、試合では以前から絶対入れていた。自分でもなぜかはよくわからないけど、シャツが出てきたらちゃんと入れますもん。試合はシャツを入れるものだっていう感じですかね。そういうところで注目されてもいいですよ」
茶目っ気たっぷりにそう話した兵働選手だが、やはりその左足と視野の広さが生み出すゴールシーンに注目したい。多くの得点とアシストを期待しています。

以上

2014.06.19 Reported by 赤沼圭子