6位から2位に滑り込む奇跡の逆転劇を狙った鹿島だったが、やはり3敗した代償は重かった。3-0で清水を下すも9年ぶりに決勝トーナメント進出を逃した。
鹿島としては、他会場の結果を自分たちでは操作することができない以上、ひとまず目の前の清水を順位で上回ることが最低限の目標だった。その目標が3点差以上での勝利。ダヴィ、カイオ、小笠原満男を外し、先発の平均年齢が23歳という若いイレブンは、先制点を目指してピッチに散る。しかし、普段であれば小笠原と柴崎岳のゲームコントロールが冴え渡る中盤がうまく機能しない。最終ラインからのビルドアップがままならず、なかなか清水の陣内に侵入することができなかった。そのため、序盤のペースを握ったのは清水。特に大前元紀と吉田豊が支配した左サイドからの攻撃でチャンスを掴んだ。
「スタートは非常に良かったと思います。しかしながら、守備のミスから相手の1本目のシュートで1点目を決められ、1-0とリードを取られました」
試合後、アフシン・ゴトビ監督がそう振り返る。清水の側からすれば、先制点は試合の流れと無関係に唐突に決まった印象を受けたことだろう。しかし、前節から続く背景があった。
「この場で我慢の限界という表現を使ったことが功を奏したというか、今日の試合を見てもらえれば僕の作戦勝ちだったと思います」
敗将とは対照的なトニーニョ・セレーゾ監督は満足そうな表情を浮かべていた。前節の試合後、セレーゾ監督はゴールを目指すプレーが少ない土居聖真に対し「我慢の限界」と強い口調で指摘していたのである。
16分、植田直通が奪い返したボールを受け取った土居は、迷うことなくゴールへ振り向き、右足を振り抜いた。「なにも考えてなかったというか、勝手に…」というシュートは、ゴール左隅に突き刺さるすばらしい得点だった。
この1点で落ち着きを得た鹿島の選手たちはゲームの優位に進めるようになる。26分には、ダヴィに代わって先発した赤崎秀平が2点目を決めリードを広げる。3点差以上で勝利する可能性を一気にたぐり寄せる得点に、試合のボルテージはあがった。さらに、前半終了間際に清水に与えられたPKを大前元紀が外したこともそれを助長した。
しかし、試合の流れは明らかに鹿島に傾いているのに3点目がなかなか入らない。65分には、鹿島もPKを得たが、遠藤康のシュートは無情にもゴール左へと外れてしまう。その後も柴崎のシュートがポストに弾かれるなど、チャンスを逃す場面が続いた。
ようやく3点目が入ったのは90+3分。インターセプトした昌子源がそのまま持ち上がり、カイオとのワンツーパスで左サイドを抜け出すと、逆サイドで待つ遠藤にグラウンダーのクロスを送る。今度は遠藤も枠を外さずゴールに流し込んだ。だが、時を前後して3位の神戸が仙台からリードを奪い、鹿島の決勝トーナメント進出の可能性は消えてしまった。
結果的には両チームとも次のステージに進むことはできなかった。特に3連勝のあと3連敗した清水には痛恨。ノヴァコヴィッチを欠いた前線に石毛秀樹を起用したが、先制点を奪われたあと攻撃の形が定まらなかった。
鹿島も決定力不足が響き、勝てる試合を落としてきたことが大きく響いた。前節からシュートが決められず責任を痛感する遠藤は「リーグ戦、天皇杯、どっちも獲るつもりでいきたい」と、巻き返しを誓っていた。
以上
2014.06.02 Reported by 田中滋
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