30度を軽く超えたこの日、ジリジリと日差しが照りつけるピッチで効率的かつ効果的なプレーをした鳥栖が、F東京を破ってヤマザキナビスコカップ予選リーグ最終戦で勝利を収めた。決勝トーナメント進出はならなかったが、3連勝で中断期を迎えることとなった。彼らにとっては、ほぼ完璧な展開だったと言えるだろう。
試合序盤からピッチの至る所で激しい局地戦が繰り広げられた。互いに、強度の高いプレーを続け、バチバチと体を当てあった。それによって試合は膠着。互いに、相手の隙をうかがう展開となった。
そんな中、鳥栖が44分に試合を動かした。左サイドに攻撃の起点を築き、その間隙をぬってMF藤田直之がゴール前へと飛び出す。2度のシュートは、F東京GK塩田仁史に阻まれてしまったが、最後は安田理大が押し込んで先制点を挙げた。安田は「普段決めないから見ている人にとっては貴重なゴールになったのでは」と言い、笑った。
その後、前半終了間際、F東京FWエドゥーに最終ラインを抜け出されたが、GK林彰洋がセーブして1−0で試合を折り返した。
後半、鳥栖は57分に池田圭がゴール前へと飛び出してGKと1対1に。これを落ち着いて決めてリードを2点に広げた。
時間の経過とともに、両チームが徐々に間延びし始める。すると、試合終盤はカウンターの応酬となった。F東京は、それを見越したように普段よりも早くマッシモ・フィッカデンティ監督が動く。50分に武藤嘉紀を、57分には米本拓司をピッチへと送り出した。これによって、システムも4−3−1−2から、カウンター向きの4−1−2−3へと変更。これが奏功し、ゴール前で多くの決定機をつくった。だが、フィニッシュの精度を欠いてゴールネットを揺らすことができず。試合はそのままのスコアで動かず、鳥栖は2−0の完封勝利を収めた。しかし、神戸が仙台に勝利したため、鳥栖も予選リーグでの敗退が決まった。
シュートの本数はともに11本を数え、決定機もほぼ同数か、もしくはF東京に分があったかもしれない。だが、鳥栖が確実に得点を重ねたのに対し、F東京はアタッキングサードに入ってからのプレーに大きな課題を残した。
F東京MF高橋秀人は「人と人の間に潜り込んで、スキを突いて縦に強く来る」という鳥栖に対し、「自分たちのフォーメーションの利点を生かせなかった」と語った。さらにこう続けた。
「トレーニングをして認識するだけじゃなく、今何が足りないのかを探さないといけない。それを本気でやらないと。自分たちだけでなく、周りのクラブも成長する。成長スピードで相手を上回らないといけない」
鳥栖はF東京が人数を揃える中央を避け、サイドから攻撃を組み立てた。先制点はまさにその形だ。普段よりもロングフィードは控え、サイドへとボールをうまく逃がしたことが勝因だろう。試合後、豊田陽平が「相手にスカウティングされても、それ以上のモノを出せるようになった」と胸を張ったのもそのためだ。
それに対してF東京は、公式戦3連敗で中断期を迎える。指揮官が送ったメッセージをピッチで表現しようとはしていたが、この3戦はそれが結果に結びついていない。それは「内容と勝点が伴っていない」(フィッカデンティ監督)リーグ戦でも同様のことが言えるだろう。中断期でやるべきことは、ワンプレーへのこだわりだ。パスの受け方、ポジション取り、ラインの上げ下げ、状況に応じたコーチングなどなど、課題を挙げればきりがない。そうした細部をさらに詰めなければいけない。それが出来なければ、またいつものため息の多いシーズンを過ごすハメになってしまう。
以上
2014.06.02 Reported by 馬場康平
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