「札幌さんはいいチームです。でも、今日のパフォーマンスにおいて我々が戦っていける、相手よりもベターなプレーができるというところも見せていけたと思います」。試合後、福岡のマリヤン プシュニク監督は多少の満足感もにじませながら、そう振り返った。
両チームともに9本ずつのシュートを放っての1−1という最終スコア。この部分だけを見ると引き分けは妥当なものに感じてしまいそうになるが、どちらが試合をコントロールしていたかというと、その部分については明らかにアウェイの福岡に分があった。そういうドローゲームだった。
この日の福岡は前節の山形戦で採用した4バックのシステムから、中盤を厚くした3バックに変更。出場停止や負傷者もあったことから先発メンバーもガラリと代わり「戸惑いも多少選手にあった」と札幌の財前恵一監督は話した。
「札幌さんの主力選手をブロックし、彼らに中盤でのプレーをさせませんでした」ともプシュニク監督。具体的な意図こそ明かさなかったものの、試合を見る限りでは、札幌のセンターバックがビルドアップをしようとしたタイミングで付近のパスコースをすべて消し、後方からボールをつなごうとする札幌のその第一歩目を徹底して封じていた印象だ。無理してショートパスをつないできた場面では一気に挟み込み、パスコースが無いからとアバウトなボールを蹴ってきた場合にはDFラインが跳ね返す。福岡の3バックは身長193センチのイ グァンソン、185センチの古賀正紘、186センチの山口和樹と長身選手がズラリと並んでおり、縦に蹴るならばよほどいいボールでない限りは難しい状況。結果、前線の内村圭宏はサイドに逃げてしまう場面が多くなってしまい、「前半はちょっとサッカーにならなかった」と財前監督は振り返る。厚い中盤と長身DF。福岡の戦略は見事にハマっていたと言える。
後半は展開力のある砂川誠が投入されたことや福岡の運動量が若干落ちたこともあり、札幌も盛り返す。砂川が左右にボールを動かし、そうして福岡の守備網を広げたことで前半は封じられていたビルドアップも少しずつ形になる。56分には奈良竜樹が縦に思い切って入れたパスが河合竜二を経由してうまく内村に届く場面も生まれた。と同時に左右MFが内側に入る場面を増やし、スペースを作ってはサイドバックの攻撃参加も促す。徐々にではあるがホームチームもリズムを生み出していった。
ただし、この日の札幌は守備のところでも若干ながら歯車が噛み合わなかった。後半の45分間だけで4点を奪って快勝した前節は、中盤でのマンツーマン気味の守備が見事に機能し水戸を圧倒した。この福岡戦でも同じように人への対応を重視。ブロックを作るよりもマークを受け渡しながら守備を行う局面を増やし、それが機能して守備は概ね安定していた。しかしながら、福岡の攻撃陣が流動的にポジションを入れ替えたり、後方からタイミングよく選手が飛び出してくるようになると、それらにひとつひとつマークをつけていくうちに中盤の選手が最終ラインに吸収されてしまう場面が頻発。結果、全体が間延びし後手を踏み続けると、82分、自陣深くでボールを動かされ、最後は途中出場の石津大介に蹴り込まれてしまう。
試合全体を通して見ると、ホームチームがペースを握る時間帯ももちろんあったが、やはり前述したように福岡が主導権を握り続けてコントロールした試合だったと言っていい。札幌をしっかりと研究し、プラン通りに時計の針を進めていった。だが、惜しむらくは「こちらのほうが決定機は多かったと思うので、決めるべきところをしっかり決めていれば、違う結果になっていたと思う」とGK神山竜一が悔やんだように、決定機をフイにする場面がいくつかあったことであり、そして、それが災いして勝点3を奪えなかったことである。90分+3、前線に居残っていた札幌のセンターバックのパウロンが右足でシュートを決め、試合は引き分けに終わる。
「それが起こり得るのがサッカー」。
プシュニク監督は試合のフィナーレを振り返った。そう、チャンスをフイにし続けたチームには、一瞬の隙からの失点という落とし穴がどこかで待っている。論理的には説明のつかない、サッカーのひとつの姿と言えるだろう。ただし、そうは言っても札幌が1点差のまま持ちこたえ、最後まで相手ゴールに向けて懸命にチャレンジしたからこそのドローだったという側面もあるはず。内容では福岡が上回ったものの、札幌もまた最後に辻褄合わせができるポテンシャルを有していたということだ。
あらためて総括をすると、繰り返しになるが、アウェイの福岡が狙い通りの戦いで展開をコントロールし続けた試合だった。ホームの札幌にとっては常に後手を踏み続けた歯がゆい試合だった。しかしながら、得た勝点はどちらも同じ1。どこが勝っても、どこが負けても不思議ではない今シーズンのJ2の状況を考えると、引き分けで得る勝点1の意味というのは決して小さくないような気がする。様々なシチュエーションや心理状態、重圧のなかで試合を重ねる厳しいリーグ戦においては、最終的な拠り所になるのはやはり勝点でしかない。両チームの選手、サポーターには色々な思いがあることだろうが、勝点を積んだ事実には価値を見出すべきだろう。
以上
2014.06.01 Reported by 斉藤宏則
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