少ないチャンスを得点へと結びつけた栃木が５試合ぶりの白星を手にした。北九州はこの試合でも先制点を献上。ボールを動かすスペースはありながらもスイッチの入るのが遅れ、引き分けに持ち込むこともできなかった。

ボールを持っていても繋がらない。繋ぐ相手がいない――。30度近い暑さと強い日差しの中で始まった試合、北九州はその状態を続けてしまうことになった。ワンボランチに変えてきた栃木とのミスマッチからスペースも十分にあったが、その中盤を省略するように長いボールやクリアが飛び主導権を握ることができなかった。もっとも栃木も湯澤洋介のミドルシュートや重松健太郎の直接フリーキックなどはあるものの、ペナルティエリア内に持ち込んでの勝負には至らず、前半は両チームに得点を感じさせるシーンに欠けてしまった。

スコアレスで前半を折り返し、試合が動いたのは59分。重松の右からのコーナーキックにドゥドゥがマークを交わして頭を出し、栃木としては５試合ぶりの先制点を手にした。「マークはされていたが少し前に出て良い状態でシュートを打つことができた」とドゥドゥ。このゴールで流れを呼び込んだ栃木はその４分後には湯澤がドリブルで中央突破してＧＫと１対１となる決定機を作り出したり、77分にも近藤祐介がドリブルで打開してシュートまで持ち込むなど追加点のチャンスを何度も掴むようになる。惜しむらくはこうした時間帯のチャンスが得点に結実せず、阪倉裕二監督（栃木）が「欲を言えば２点目を取るチャンス、カウンターのチャンスが何回かあったのでそのあたりの精度を高めていかないとなかなか勝ちきるチームにはなっていかない」と省みることになったが、反撃したい相手の機先を制することで試合を優位に運ぶことには繋がった。

４試合続けて先制点を奪われる形になった北九州は67分に井上翔太を入れて中盤での組み立てとフィニッシュの改善を狙い、83分には風間宏希を下げてボールの収まる柿本健太を投入。それが一つの形となったのは88分。敵陣中央の井上が外に開いた原一樹にボールを預けると、すぐにペナルティエリア内に入って折り返しをダイレクトにシュート。流動性を高めたことでようやく見えてきた決定的なチャンスだった。８試合ぶりに出場のＧＫ鈴木智幸の好セーブと集中力の高かったドゥドゥのディフェンスで同点とはならなかったが、もやもやとしたゲームの中ではスタジアムが沸く瞬間にもなった。

試合はこのままスコアが動かず栃木が１−０で勝利した。勝点３まであと一歩の試合が続く中、要となってきていた西澤代志也を欠いたこのゲーム。栃木はシステムを組み替えたり、メンバーを入れ替えたりと大なたを振るって白星を掴んだ。試合後の記者会見の冒頭、阪倉監督は「選手たちは暑い中でもしっかりと意識を持ってやるべきことをやってくれた」と選手を称えていた。まだチームの目指すサッカーの完成形を見たとまでは言えないだろうが、先制点を挙げたことで自分たちの流れでゲームを運ぶことに成功。今後はリードした展開で追加点を奪うための手だてを探す作業が加わってくる。それはチームとしてひとつ次のステップに進んだということでもあろう。

北九州はプレビューで触れた先制点問題をこの試合でもクリアできなかった。勝点を引き寄せようにも１点も奪うことができず、チームは次節に向けて多くの課題に向き合わなければならない。イエローカードを４枚も出すなどラフプレーが続いていることもリズムを狂わせた要因の一つだが、ゲーム中では特にスペースがありながらも使うことができず、前に送り込むだけになった場面の修正が急がれる。「ボールが入ったところであまり収められず、自分たちもフォローで押し上げられなかった」とは鈴木修人。状況判断を早めることはもちろん、ボランチとサイドハーフ、サイドバックなどポゼッションを担う選手間の距離であったり、動き出しの意思統一であったり、この試合を原点回帰のタイミングとして見直していきたい。

なおこの試合では前半終了間際に市川恵多（北九州）が守備時に交錯して負傷退場しているが大事には至っておらず、練習にも復帰する見込みである。

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2014.06.01 Reported by 上田真之介