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【ヤマザキナビスコカップ 甲府 vs 浦和】レポート:勝って決めたのはリーグ戦首位の浦和。甲府は健闘では満足しないレベルの戦いを身につけ、最終節の結果を待つ(14.05.29)

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あの2点目がメインスタンドから一番遠いところから決まったのを見た瞬間、(こういう流れから決めるのがすごい…)と思った。抗議でゲームが止まった後の70分過ぎのプレーだったが、浦和の選手はトラップミスやキックミスなしでゴール前の李忠成にクロスを入れる。ボールをキープしたまま粘る李に甲府の選手がシュートブロックしながら囲むようにたかるが、ペナルティエリア内なので強くは行けずクリアができない。そして、ガラ空きのファーにフリーで走りこんできた梅崎司にパスを出された。「交代カードが見えていて『自分か』と思っていた。一発(チャンスが)来ないかなあと狙っていた。落ち着いてシュートを打てた」と言う梅崎。ボールは荻晃太の脇を抜けてファーに決まる。ここ最近は平均1点打線だった浦和の2点目が、ホームで浦和に勝って決勝トーナメント進出を決めるという山梨中銀スタジアムの夢を砕いた。

前半立ち上がりの甲府は公式戦3連勝してきた試合に比べて、少し受けたというか、裏を狙うボールが少なかった印象があった。浦和に押された印象のまま8分にCKから那須大亮にヘディングで先制点を決められてしまう。“イイトコメガネ”をかけてもここ3試合の甲府の前へのよさが見えてこない立ち上がり。しかし、最近の甲府の強化部・スカウトは素晴らしい。2014年の大卒ルーキーの稲垣祥、チーム内に先輩の“ショウ”が2人もいるのでニックネームは“ゴロー”が、エンジンとなって前への圧力を出し始める。失点もきっかけになったと思うが、“イロメガネ”で見ても稲垣はよかった。なんといっても攻守にアグレッシブで、クリスティアーノがファーで「俺にパス出せよ」ってな感じで大声出していても、迷うことなく自分でミドルシュートを打つし、F東京U-15出身だけに予測でボールを奪うプレー、ガ、スマート。山本英臣系のユーティリティ性のある中心選手になってくれそう。
ボランチの稲垣の後ろではセンターバックの山本が奪ったボールを失わずタメを作って供給していく中で、甲府が主導権を握る時間を増やし始める。29分には興梠慎三のシュートミスに助けられる場面もあったが、35分の稲垣の飛び出しは決定機だったし、アディショナルタイムに石原克哉が突いた浦和のバックパスのミスも決定機。「決めてナンボ」ではあるが、42分の興梠のシュートを含めてイーブンに打ち合った前半の印象。

甲府はアディショナルタイムに悔しい思いを満タンにして後半を迎えている。浦和が相手とはいえ、前半の甲府なら1点差でそのまま負けるようなことはないとも思っていた。後半もチームとして浦和の攻撃の芽を刈り取り、甲府の攻撃の起点にしていく。そして、53分に最近は機動力も向上している盛田剛平がアシストしてクリスティアーノの同点ゴールが決まる。公式戦6試合連続無失点だったJリーグ最大のビッグクラブ・浦和から取った価値あるゴール。2−1にしてもらいたいくらい価値あるゴールで1−1の同点に追い付いた。このゴールは山梨中銀スタジアムにやってきた9074人の感情を揺さぶった。直後にペトロヴィッチ監督は55分に今年公式戦初先発の矢島慎也に代えて李を投入する。浦和は技術の高さを活かしたパスワークで甲府のゴール前に迫ることもあったが、後半の主導権は甲府のまま1−1でスコアが動かない時間が続いた。

後半の中盤になるとオープンな展開になっていき、ミラーゲームの様相。どっちに入っておかしくない展開の中、決めたのは浦和。これが冒頭のシーンで、ペトロヴィッチ・レッズのすごさ。アディショナルタイムを含めて甲府には20分近い時間が残されていたが、勝つには2点が必要。サッカーに2ランホームランはないから重い重い2点…。今年、浦和から2点以上取っているのは柏と神戸と徳島。この3チームの仲間入りをしなければいけないこの状況で冷静に戦えていた選手もいたが、慌てて技術や判断のミスをしてしまう選手がいたことも事実。城福浩監督は3枚目の交代カードでストッパーの青山直晃を下げてFW河本明人を投入する勝負に出る。

86分にはクリスティアーノが名前にロナウド(レアルマドリード)を足したような感じで仕掛けて、ファーの稲垣にクロスを入れるが合わない。アディショナルタイムには左から阿部翔平が入れたクロスにニアで河本が入るが合わず、中央で盛田が飛びこむがバウンドしたボールを上手く頭でミートできずに枠の上。奇数チームで戦う予選リーグの難しさだが、メンタル面ではもう1試合残っている浦和と最終節がお休みの甲府の違いもあるだろう。甲府はもうちょっとのチャンスを活かして同点に追いつくことができずに、浦和が気分良く最終節に原口元気を送り出せる状況を作らせてしまった。

ただ、甲府にはいいこともあった。浦和相手に健闘したことではない。もう健闘では満足しない選手が増えていることが1つ目のいいこと。2つ目は、ここ最近、入場者数の減少が目立っていたのだが、この夜素晴らしかったのはユアスタよりもカシマよりも山梨中銀スタジアムが一番入場者数が多かったこと。浦和のファン・サポーターも大勢来てくれたが、甲府のファン・サポーターも確実に増えていることがよかった。今年のJ1リーグで1番目か2番目に予算が少ないチーム状況で一定の結果を出しているのに、応援してくれる地元の人が増えないようでは現場のコーチングスタッフや選手の意気が上がらない。決められなかったことは残念だけど、悔しさと自信をいいバランスで持って中断期に入ることができるだろう。

ただ、甲府のヤマザキナビスコカップの夢は終わりではない。こうなったら最終節は浦和を応援するしかない。甲府には予選リーグ突破の可能性はまだ残されている。次節、山梨県内全ての神社仏閣の総力を結集して浦和(対名古屋)の勝利と徳島(対柏)の勝利か引き分けを祈るしかない。ライバルチームの負けや引き分けを願うようではフォースの暗黒面に陥るかもしれないけれど、原口のラストゲームで浦和は勝ってくれるだろうし、第3節で浦和を苦しめた徳島のありのままの勢いがあれば柏から勝点1以上を奪える可能性も充分にあると信じるしかない。
浦和と徳島がフォースとともにあらんことを。

以上

2014.05.29 Reported by 松尾潤
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