いきなり北九州の攻撃が牙をむいた。原一樹と池元友樹の2トップが動きながら前線で起点を作ると、右の小手川宏基、左の渡大生がポジションを変えながら、裏への飛び出しを狙う。ボランチの鈴木修人も前掛かりにポジションを取って、岐阜に圧力をかけてきた。3分には原が強烈なミドルを放つが、GK時久省吾がセーブ。その後も北九州が攻撃を続けるが、この日の岐阜は非常に冷静だった。圧力に慌てることなく、4バックがしっかりとポジションバランスをキープして、マークのずれを生ませなかった。特に宮沢正史とヘニキのダブルボランチは運動量が多く、チャンレンジ&カバーもスムーズで、さらに左MFの高地系治がそのチャレンジ&カバーに加わって、スライドも的確に行ったことで、北九州は徐々にボールがうまく回せなくなる。逆に岐阜は34分、宮沢から中央に入った高地につなぎ、高地の浮き球の縦パスを受けたFW中村祐輝が、FW難波宏明とのワンツーで抜け出すと、強烈なシュート。僅かに外れたが、この一連の流れは非常にスムーズで、全体が連動しているからこそできたプレーであった。
岐阜の高い連動性の前に北九州も黙っていたわけではなかった。この連動を断ち切るように、北九州は渡と小手川をワイドに開かせ、岐阜の守備陣を押し広げてから、中央を狙うスタイルに切り替えてきた。35分には右サイドバックの星原健太のクロスに、中央で池元がスライディングシュートで合せるが、これは枠の外だった。
まさに一進一退の攻防がピッチ上で繰り返された前半。両チームとも攻守の切り替えが早く、非常にコンパクトな中での戦いとあって、非常に面白い展開であった。
0−0で迎えた後半も、前半の『熱』を維持した状態で試合は展開。両チーム高いラインを引き、ボールを動かしながら打開策を模索し合う。その中で効果的な崩しを見せたのは岐阜だった。
57分、宮沢がボールを奪うと、DF三都主アレサンドロ、高地と繋ぎ、高地の縦パスに中村、難波、スティッペと小刻みにパスを繋いで、スティッペのラストパスに反応したのはDF益山司。益山が放った強烈なシュートは、DF渡邉将基の気迫のスライディングブロックに阻まれたが、ボランチのインターセプトから、左サイドバックが起点となり、4人を経由して、フィニッシュが右サイドバックという、まさに全員が連動をした見事な崩しだった。
そして、直後の61分、岐阜に先制点が生まれる。益山の右からのクロスを、中央で中村がつぶれ、ファーサイドでフリーになった高地が技ありのダイレクトハーフボレーを、逆サイドネットに突き刺した。さらに66分には難波の突破を、DF前田和哉がファウルで倒し、一発レッドで退場。北九州が数的不利となった。
流れは完全に岐阜だった。しかし、北九州がここから4位につける所以を見せる。左サイドバックの冨士祐樹がセンターバックに入り、右サイドハーフの小手川が左サイドバックに入った。これは一見、守備固めのように見えるが、攻撃力のある小手川を左サイドに置くことで、常に左からもカウンターを仕掛けられるように、反撃の糸口を狙っていたものであった。しかも、それを選手たちが独自で判断をしたことに大きな意味があった。
「10人になって、自分たちの判断でポジションを変えた。僕もサイドバックに下がってやった方がいいと判断をしました」(小手川)。
「あそこでセンターバックの選手を入れるよりも、小手川を左サイドバックに入れた方が攻撃力を発揮できると思って、ベンチから指示を出そうとしたら、選手たちが勝手にそうやっていたので、何も言わなかった。選手の判断の賜物」(柱谷幸一監督)。
ピッチとベンチの意図が完全に一致したことで、北九州はこの絶体絶命のピンチから反撃に転ずることが出来た。70分、ボランチの風間宏希から、オーバーラップを仕掛けた星原へパス。星原はスルスルと右サイドをドリブルで駆け上がると、中央にマイナスのクロス。これに対し、岐阜は両センターバックの動きがかぶってしまい、ファーサイドの最も警戒すべき原をフリーにしてしまっていた。原はボールを受けると、冷静にシュートを突き刺し、北九州が同点に追いついた。
1−1になったことで、北九州は当然のように守備固めに回った。80分、85分、87分と次々と守備的なカードを切って守りを厚くすると、そのまま逃げ切る形で、試合をドローで決着させた。
勝ちきれなかった岐阜と、執念で追いついて守りきった北九州。同じ勝点1でも明暗は分かれたが、試合内容は今年の中でも指折りのナイスゲームだった。共に運動量があり、コンセプトを忠実に守りながら、非常に締まった試合を見せてくれた。岐阜としては一度絶対的優位の立場に立ちながらも、勝ちきれなかったのは痛いが、内容を見ると成長の跡がしっかりと見られた試合だっただけに、意味ある勝点1であった。この1をさらに意味あるものにするためにも、次のホーム・京都戦(6/1)は同じようにいい内容で、勝点3を取りに行かなければならない。次なる試合の準備は、もうすでに始まっている。
以上
2014.05.26 Reported by 安藤隆人
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