負けたくて試合に臨む選手はいない。勝利から得られる報酬や名誉などのためだけに戦っている選手もいないはず。試合開始を告げるホイッスルが鳴ると、“勝ちたい”というアスリートの本能がすべてを司る。しかし、そこに至るまでの過程には、それぞれの温度差があるのは事実。コンディションやプレッシャー、その試合に賭ける個人の想いなどでモチベーションに差があるのは、ある意味いたし方のないことである。アスリート以前に人間なのだから。そして、そこに“与えられた役割”が加わると、さらにプレーが複雑になる。“求められる役割”や“期待される役割”もあるのだから、プロフェッショナルなアスリートは大変である。
鳥栖は、3連勝中で首位で今節を迎えた。大宮は、前節のさいたまダービーにいいところなく敗れ17位で今節を迎えた。しかも、アウェイとなるベストアメニティスタジアムである。
「鳥栖には代表候補が4名いて、首位でこの試合を迎えることだったり、中断前最後のリーグ戦だったり、相手が下位に甘んじていることだったり、もしかしたら今日も勝てるのではないかという思いが芽生えているのではないかというところで」立ち上がりから集中力を保つのは難しい試合になると尹晶煥監督(鳥栖)は読んでいた。対する大熊清監督(大宮)は、「今回はボールの出所にプレッシャーを掛ける役割で行ったのが大きな違いです。もともと長いボールを使うチームだったが、そこを待ち受けるか潰しに行くかというところで、勇気を持って出所を消しに行けた」とシステムと相手ボールの抑え所を変更して臨んだ。観ている側には感じ得ないプレッシャーを持ちつつ試合に臨んだ鳥栖と、前節からの戦い方の変更をチームの約束事(役割)として臨んだ大宮。序盤から“らしくない”ペースとなった鳥栖に対し、“与えられた役割”をこなし続けた大宮という構図で試合時間は流れた。
8分には、藤田直之のクロスに豊田陽平が合わせる。
12分には、豊田のプレスから奪ったボールを水沼宏太が狙う。
16分位は、池田圭のクロスに豊田がシュート。
65分には、金民友のクロスからこぼれたところで豊田、水沼が詰める。
74分には、FKから水沼が強烈なシュート。
92分+5分には、金民友のシュートがわずかにバーを越えた。
これらのどれかが決まっていれば、鳥栖が首位のまま中断期に入れたことだろう。
大宮は前節から打って変わって、前線からアグレッシブにボールを奪いに来た。
3分には、長谷川悠がファーストシュート。
27分には、CKから富山貴光がヘディングシュート。
48分には、右サイドからのクロスに長谷川がヘディングシュート、前線の高さと個の強さを生かして鳥栖ゴールに迫った。「圧力を掛けたことが、攻撃のアクションが出た」内容で試合を進めた。
終わってみれば、48分の長谷川のヘディングシュート、83分の豊田のPKであげた1得点ずつでドローの結果となった。
前述した鳥栖の決定機いずれかが決まっていれば鳥栖が勝てた試合だった。多くの選手が口にした「決めるべきところで決めていれば」という内容。大宮も攻めはするものの、あと一工夫が欠けているように感じた。特に試合終了までの10分間ほどは、パワープレーに出てもいい時間帯だったように見えた。DF福田俊介が入った時は、パワープレーの予感もしたがDFラインに入ったことで勝点1を狙いに来たのだろう。これも、置かれている状況からの選択として理解した。ここ数試合の大宮ではないことは、示すことができたと思う。
「負けていた状態から追いつくことができたことを前向きにとらえたい」と安田理大(鳥栖)が試合後に語った。選手たちは、すでに次のヤマザキナビスコカップに向いている。「攻撃では前にある程度人数がいて、サポートもできたし、距離感もいつもより良かった」と振り返ったのは家長昭博(大宮)。今後の戦い方に一つのヒントを得たようだ。両チームとも、勝ち切れるチャンスを逃しはしたが、貴重な経験値を積んだ試合と言えた。
シュートを外したくて打つ選手はいない。抜かれたくてチャレンジする選手もいない。誰もが、勝つために試合に臨んでいる。しかし、味方と相手に分かれたところに争点が生まれ攻防が始まる。サッカーには、判定勝ちも優勢勝ちもない。サッカーは、点を取るスポーツなのだから。
以上
2014.05.18 Reported by サカクラゲン
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