ともに激しくボールを奪い合う一戦は1-1で引き分けた。前半5分、名古屋が永井謙佑のゴールで先制。新潟はその6分後、田中達也の今季初ゴールで追いついた。後半は新潟が決定機をものにできず、名古屋が懸命にしのぐ展開でホイッスルを聞いた。

精悍な顔立ちが一段と引き締まった。田中達は雄叫びを挙げ、正面スタンドを指さした。0-1の前半11分、右サイドで川又堅碁を起点に田中亜土夢からパスが出る。それに合わせてゴール正面に持ち込むと、相手守備が戻り切らない状況を逃さずに左足を振り抜いた。待ちに待ったリーグ戦今季初得点で試合を振り出しに戻した。
「亜土夢からいいボールが来た。打つだけだった」。中央にスペースができる名古屋の最終ラインの隙をきっちりと突いた。リーグ戦出場は第10節神戸戦以来で、スタメンは第2節Ｇ大阪戦以来。新潟サポーターに堂々と雄姿を披露した。

苦しい序盤戦だった。Ｇ大阪戦後、腰痛で一時離脱。その後もコンディションの回復に手間取った。スタメンを鈴木武蔵、岡本英也に譲る形に。「もやもやしていた」。なかなか戻らない体調と、試合に出られないもどかしさが募った。
だからこそ、欲しかったゴール。「でも、勝点3が欲しかった」と自身の結果よりも、まずチームの勝利にこだわる。「この1点ではまだ足りない。もっとチームのためにやっていきたい」。復調は実感した。本当に喜ぶのはゴールと勝利が直結したときだ。

田中達のゴールはあったが、新潟の攻撃は全体的には精度を欠いていた。特に後半は名古屋をシュート0に抑え、6本のシュートを放ったが、決勝点は奪えなかった。後半37分、レオ・シルバ、田中亜とつないで、川又がフリーになったがシュートはポストを直撃。形を作りながらも最後の精度を欠く。11試合ぶりに敗れた前節の柏戦同様、好内容の戦いをしながら勝点3を奪えなかった。

新潟の柳下正明監督は言った。「チームとしてやることは続けていく」。前線からのプレスと奪ってからのショートカウンターが効果的だった。そこで得点し、チャンスも作った。局面で細かくパスをつなぐ形もできている。目指す方向は明確だ。一方で、「最終的にゴールを入れられないのなら、ゴールできる人を連れてくるなど、そういったことも考えないといけない」と言う。決定力不足解消が上位進出への大きな必須条件になった。

名古屋にとっては、この試合が今季初の引き分けとなった。前半5分、枝村匠馬のパスに合わせて裏を取った永井が先制点。相手守備を完璧に崩した。前半は素早い攻守の切り替えと、組織的なボール回しを見せた。その後、決定的な形を作る場面は少なかった。放ったシュートは前半の3本のみ。後半は新潟の機動力に押し込まれる場面が続いた。
ボールを奪いに行く姿勢は最後まで続いた。局面では、2人、3人と体を張って守った。「引き分けたのは収穫の1つ」と永井が言うように、押されながらも勝点を手にした粘りは自信になる。ただ、攻守ともに全体的な連動の精度が、最後まで続かなかったことも確か。「全体をコンパクトにした、前半のような戦いを続けていくことが必要」。名古屋の西野朗監督は反省点を挙げた。

どちらも勝ち切れなかった。そこから見えた課題の解消を、再開後のリーグ戦で求められる。

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2014.05.18 Reported by 斎藤慎一郎（ニューズ・ライン）