ピッチ上に突っ伏して、うずくまる中村俊輔の姿が忘れられない。崩れ落ちるようにピッチに手をついた姿を見て、中村俊輔があの試合に賭けていたものの大きさを理解した。2試合連続で自力優勝を決められる終盤の連敗で、タイトルを逃したチームリーダーの、まっとうな反応だった。
片や、最終節にしてシーズン最高位となる3位に滑り込み、ACLの出場権を手にした等々力のボルテージは最高潮に達していた。首位のチームを下して手にした順位は率直に喜ぶに値するもので、厳しい相手に勝てたからこその喜びだった。強力なライバルが居てこそで、彼らとの対戦を感謝しなければならないと思った。
昨季等々力に横浜FMを迎えて行われたいわゆる神奈川ダービーは、横浜FMが自力優勝を掛け最終節を戦うという大一番だった。勝てば文句なく優勝できる横浜FMと真っ向勝負を挑んだ川崎Fは、ホームのサポーターの後押しを受けて勝利。他会場の結果もあり逆転で今季のACLの出場権を確保した。またこの試合の結果、横浜FMは最終節で優勝を逃す結果となった。
その後、ともにACLに進出した川崎Fと横浜FMの今季は対照的な軌跡を描いてきた。ACLでは川崎Fはグループリーグを勝ち上がり、ラウンド16に進出。その一方で、横浜FMはグループリーグで敗退。Jリーグでは、川崎Fが12試合を終えて6勝3分け3敗の暫定6位に付けるのに対し、横浜FMは4勝2分け6敗の暫定15位となっている。
昨季の川崎FをACL圏内にまで牽引した2013年の得点王・大久保嘉人は引き続き好調で、12試合を終えて8ゴールと得点ランキング2位に付けている。また、その大久保とともにチームの攻撃を司っていた中村憲剛も相手チームの脅威になりうるパフォーマンスを見せている。レナトの突破力は健在で、ここに12試合6ゴールの小林悠を筆頭に森谷賢太郎、大島僚太といった若手選手が成長。攻撃陣の層の厚さは重厚感を感じさせるものがあるが、攻撃自体はテンポとスピード感のあるパスサッカーを展開している。
その一方で、横浜FMは昨季のリーグMVPの中村俊輔が思うような力を発揮できておらず、苦しんでいる。昨季は1試合を除く33試合に先発出場し、チームの攻撃の起点となる。しかし、今季は調子が上がっておらず、11節のG大阪戦では試合途中でベンチに下がり、続く13節の鳥栖戦では先発落ちを余儀なくされた。ただ、その鳥栖戦で途中交代出場して見事なミドルシュートを決めており復活の兆しが見えているのは気になるところだ。
今季の横浜FMは、攻撃面で不調が続いており12試合で10得点と振るわない。ただ、その一方で守備は12試合で10失点とリーグ2位の数字を残しており固さを見せている。CBの中澤佑二と栗原勇蔵のコンビがゴール前に立ちはだかっており、チームの不調を個で支えている。得点は奪えないまでも失点を抑えるという構図の横浜FMに対しては、小林悠が「真ん中の中澤さんとか栗原さんはヘッドが強いと思いますし、高さでは太刀打ち出来ないかもしれないので、地上戦というか足下で細かく繋げば剥がれると思いますし、そこは自分たちの良さを出せれば崩せるんじゃないかと思います」と述べ、川崎Fの強みを出せれば対抗できるのではないかと話す。横浜FMの守備力の高さに対し、攻撃力を売りにする川崎Fが対向する構図となるが、それについては田中裕介が「盾と矛の対決ですね」と笑顔を見せつつ「シュンさん(中村俊輔)も居ますし、前には(齋藤)学もいる。怖さは持ってますよね」と話す。また田中裕介は、中村俊輔について「(居るのと居ないのとでは)全然違います。たぶんうちの(中村)憲剛さんみたいなものなので。あとは駆け引きが上手くて、流れ悪いなという時に、キープしたりボールを落ち着かせたりすることに長けた選手。だからこそ、うちが攻めたいですね」と述べていた。
川崎Fは水曜日にアウェイでACLを戦っており、2−1でソウルに勝利。しかし2戦合計で残念ながら敗退する事となった。すでにACLを敗退していた横浜FMに試合がなかったことと合わせて、肉体的、精神的なダメージが懸念される状況ではあったが、その件について中村憲剛は「勝って勝ち上がれないというのは複雑でした」と述べつつ「チームとしてこのACLの8試合は確実にムダじゃなかった」と手応えを口にする。またACLとJリーグを並行して戦った事により「自分達のスタイルがより深まったところはある」と話し、「来年もう一度ACLに出るために、次の試合もそうですし、結果を出さなければならない」とこの横浜FMとのリーグ戦を見据えた。来季のACLへの出場権については、田中裕介も「来年また挑戦するためにも、やっぱり上位に行かなければならないと思います」と言及しており、すでに気持ちをリーグ戦に切り替えていた。
メンバーを入れ替えるなど、試行錯誤が続く横浜FMとの対戦ではあるが、それでもサポーターが見たくなる試合であるのは間違いない。川崎Fからは5月10日にチケットの完売がアナウンスされており、当日券の販売も行われない。等々力は両チームのサポーターで埋め尽くされることが確実で、そうした状況については小林悠が「ダービーということで、サポーターがたくさん来てくれるし、大勢のサポーターの中で負けるのは絶対にうちとしては嫌だし、勝って喜んでもらいたいです」と力を込めた。
ホームの川崎Fは、できれば勝って中断期を迎えたいと考えており、堅守の横浜FMをどう攻め崩すのかは試合の見所の一つとなる。またワールドカップブラジル大会を戦う代表チームに招集された、大久保嘉人、齋藤学の両選手のプレーぶりにも注目が集まる。ワールドカップ開催前の最後のリーグ戦でありどんな試合になるのか、楽しみな一戦である。
以上
2014.05.17 Reported by 江藤高志
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