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【J2日記】岐阜:全身全霊フットボーラー(14.05.05)

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第10節・群馬戦でプロ入り後初のPKを決めた難波宏明(右)

第10節・群馬戦。第5節・愛媛戦で負傷して以来の初先発を飾ると、そのときはやって来た。32分、高地系治のFKに飛び込んだ難波宏明は、相手に倒されながら、PKを知らせる主審の笛を聞いた。キッカーはもちろん背番号24。気持ちを乗せたシュートが、GKの逆を突くゴールとして、決勝点として、そして4試合ぶりのホーム戦勝利として実った瞬間だった。

しかし実は、プロ入り後にPKのキッカーを務めるのは初めてのことだった。「僕はJリーグで1試合もPKを蹴ったことがなかった。大学最後の試合で僕がPKを外して負けたことがあって、いままで蹴りに行けなかった」。気持ちを前面に押し出すことを身上とする彼にとっては意外なエピソードだが、この日は違った。

開幕から3試合連続ゴール。会心のスタートを切った難波だが、その後は負傷に苦しんでいた。練習に復帰しても、途中出場を果たしても、「思った以上にブランクを感じる」と自身のプレー感覚に違和感が消えず、この間、チームもなかなか勝てなかった。「ゴールや勝利に向かう姿勢や気持ちが欠けている」。自省も含め、そんな思いを強くしていた中での、先発復帰。過去のジンクスなど、どうでもよかった。「ゴール前は気持ちだ」と自らに言い聞かせ、迷うことなくペナルティースポットに立っていたのである。

とはいっても、難波の言う「気持ちの不足」は決してゴールだけを差すモノではない。ゴールへの執着心、勝利への執着心、球際への執着心。いつも「チームのために」と繰り返し、全身全霊のプレーを見せてきた。そして先発を離れていた間にさらに強くしたそんな思いが、前節・東京V戦でチームの2連勝をも呼び込む。苦しい展開を強いられる中で前線からしつこく相手を追いかけ回し、40分には右クロスを泥臭く押し込んで2試合連続の決勝ゴール。肩から激しく落下するシーンもあったが、それでも痛めた箇所をテープでグルグル巻きに固定し、最後までピッチで闘い続けていた。新加入会見で語ったあの言葉が思い出される。

「僕には赤い血しか流れていません。ただ、この緑のユニフォーム、FC岐阜の勝利のためにこの赤い血、一滴残らず注ぎたいと思います」

緑の血は流れていなくとも、赤い血すべてをチームのために注ぎ込む――。先発に復帰して2試合。チームを2連勝に導いたその背中に、”全身全霊フットボーラー”としての矜持を見た気がする。

以上


2014.05.05 Reported by 村本 裕太
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