その最たるものが、移動だ。広島には、在来線で行けるアウェイゲームはない。新幹線での広島→新神戸間(1時間15分)がもっとも近いのだが、これは新横浜→浜松(58分)や大宮→仙台(1時間6分)よりも遠く、新横浜→名古屋(1時間22分)や新宿→甲府(1時間29分)と同レベルの距離である。
たとえば第8節の新潟戦のために遠征しようとすれば、最短で4時間。まず広島から博多まで新幹線で赴き、福岡空港に向かってそこから新潟空港まで飛んで、新潟市内中央部まではバスで移動。これで約4時間だが、もし時間がうまくあわなければ、新幹線を乗り継いでの6時間20分の旅が待っている。そしてこれは経験則なのだが、乗り継ぎはそれだけで肉体的にも心理的にも負担のかかるもの。広島→新潟の旅でいえば、2度の乗り継ぎを必要とする前者の方法では、眠ることもままならない。むしろ後者の方が、寝る時間を確保できる分、楽なのかもしれない。そこはもう、好みの問題になってしまうのだろうか。
さて、この第8節の時はさらに前段がある。実は広島はこの3日前、北京から帰国したばかりだったということ。ACLで0−2から追いつくという離れ業(結果的にこの試合での勝点1が決勝トーナメント進出に大きくつながった)を演じた広島の北京遠征にかかった総移動時間は往復で約9時間。そして帰国の2日後には新潟に向けて約4時間。ただでさえ、精神的にも肉体的にも大きな負荷がかかったアウェイの北京戦の後、長時間の移動を経て新潟へ乗り込んだ広島の選手たちの蓄積疲労は、同行していた僕には実感できる。
新潟戦での広島は、ありえないほど厳しい状態だった。公式記録上のシュート数はわずかシュート1本。その数字で表す印象よりも、プレーの内容は厳しかった。ミスにつぐミス。極度の疲労から運動量はガタ落ちで相手にボールを渡すことも一度や二度ではなかった。3人目の動きなどにも全く対応できず、特に後半は完全に足が止まった。長いこと広島を見てきたが、これほど酷い状態のチームを見たのは、少なくとも2009年のJ1復帰以降は初めてだった。そんな中でも引き分けることができたのは、新潟側の疲労もさることながら、広島の選手たちが最後の最後、必死になって身体を張った成果である。
さらに、この試合から中2日連戦が4試合も連続する(ACLを含む)中で、選手たちはさらに疲労を積み重ね、回復する暇もない。新潟戦以降の5試合で2勝2分1敗と結果は何とかつなげているが、その内容は広島らしい美しさは影を潜め、我慢に我慢を重ねた最低限の結果でしかなかった。森保一監督は以前から「中2日と中3日では全然違う。中2日は過酷すぎる」と語っていたが、それを自ら率いるチームの状態で証明してしまった。
どんなスポーツでも、選手のパフォーマンスを最大限に発揮するためのコンディション調整が、最終的には試合結果を左右する。だからこそ、コンディショニングにはどんな指揮官も細かな神経を使うものだが、長距離移動と中2日が重なれば、サッカーの場合は非常に難しくなる。そして今節は、全てのチームが中2日。GW連戦の最終盤ということで蓄積疲労も半端ない。その中で、たとえば札幌に遠征する熊本や富山でゲームをする北九州、仙台に向かった神戸など、長距離移動も伴ったチームの厳しさは容易に想像できる。
ただ、広島の例を見てもわかるように、だからといって負けるということではない。厳しいコンディションではあるが、チームがそことどう立ち向かい、どういう解決策を提示するか。そこがプロとしての矜持なのである。
totoを買う側の立場とすれば、チームのそういう状況まで読みを深めると、さらに興味深くなるだろう。移動距離や選手の固定度などから蓄積疲労は読み取れるし、サブメンバーの充実度は果たしてどうなのか、ベテランへの依存度の濃淡も含め、徹底して「コンディション」という視点で予想を進めてみても面白いのではないか。
正直に言えば、リーグ戦は「週1回」せめて「中3日」でやらせてやりたい。もちろん、今節がGWという特別な期間であることは重々承知しているが、なんとか「リーグ戦の中3日」を確保する方法はないものだろうか。来季以降、そこはぜひ関係各所に頭をひねっていただきたいと切実に思うが、いざ自分で考えてみると「うーん、やっぱり難しいのかなあ」とカレンダーを見ながら唸ってしまうのである。
以上
2014.05.05 Reported by 中野和也(広島担当)