この試合唯一のゴールが生まれたのは後半アディショナルタイム。左サイド、石川竜也からのスローインを敵陣ペナルティーエリア内で受けたのは萬代宏樹。回り込んでシュート態勢に入るかに見えた山崎雅人が相手の隙を突き、さら敵陣深く食い込んでパスを受けると富山の守備は山崎に食いつき、その瞬間、フリーになった萬代のもとに再びボールが戻ってきた。コントロールから間を置かずに放ったシュートは内側からサイドネットを揺らした。後半だけでシュート10本、コーナーキック10本の山形にとっては、多くのチャンスがようやく実を結んだ瞬間であり、耐え続けてきた富山にとっては勝点を逃した瞬間でもあった。「山崎からの萬代のゴール。本当に代わった2人がいい仕事をしてくれたんじゃないかなと思います」と石崎信弘監督も起用に応えた2人の活躍を讃えた。特に萬代にとっては、「いざ試合に出て、短い時間でもチャンスが来た時に決めれる準備をしておかないと。いざとなって慌てたりすることがないようにできればいいなと思って」と連日続けてきた居残り練習の成果がひとつ実を結んだゴールとなった。
互いの浅いラインの裏にロングボールがグイグイ押し込まれ、それでもラインを上げ返す立ち上がりは、それゆえに、ディエゴを起点に川西翔太のクロスにつながる山形のカウンターや、苔口卓也が左スペースで起点となり白崎凌兵があと一歩届かなかったクロスといった一触即発のシーンにつながっていた。前半45分をとおして攻撃でミスが多く、シュート数が積み重ならない時間は多かったが、「お互い、セカンドボールの争いを本当に根気強く競い、そのなかで出たチャンスを防ぎ、防がれ、進めていったのかなと思います」(富山・安間貴義監督)と、それは守備での潰しと攻守の入れ替わりの早い、締まりのある展開でもあった。
ホームゲーム2連敗中の山形は「ここ最近、前半のスイッチが入ってなかったので、そこで失点してしまったり、難しい展開になってしまっていた。まず前半から出しきって、もっともっと前から行こうと、攻撃もシンプルに裏を取ることだったりを徹底して今日はやった」(山田拓巳)と常に高い位置からボールへのプレッシャーをかけ続け、アタッキングサードにも人数をかけるシーンが多くあった。苔口の裏への飛び出しにも最終ラインでは怯むことなく、オフサイドも多く取っていたが、34分、苔口に抜け出されてゴールエリアまでボールを運ばれ、直後のコーナーキックでは放物線とグラウンドが交わる直前、飛び込んだ三上陽輔の足で合わされた。この富山の決定機はシュートが浮いて事なきを得たが、そのあたりから押し込まれる時間帯が続く。40分にもコーナーキックの流れから、中島翔哉のクロスに三上がシュートまで持ち込んだが、これもGK清水健太がニアでキャッチ。富山の決定力の問題もあるなかで、山形は課題の前半を無失点で折り返した。
後半は富山の数少ないカウンターを除けば、敵陣深くえぐり、コーナーキック、フリーキックを量産した山形の一方的なペース。そのなかで目立つ活躍を見せたのは、サイドハーフでプレーした秋葉勝だった。50分、オーバーラップした石川からのクロスをヘディングで合わせたのは、タイミングよくニアに入り込んだ秋葉。ここはキーパーの攻守に防がれたものの、その4分後、宮阪政樹のサイドチェンジを右スペースで受けると、川西のシュートをお膳立て。69分には中央でキープする川西から右サイドでスルーパスを受けてゴールライン際で粘り折り返し、74分にはオーバーラップする山田をクイックターンからのスルーパスで狙った。「裏に出て相手のディフェンスラインを下げれればいいかなと思ってプレーしてました。チームのためにしなきゃいけない動きをやったり、相手が嫌がるポジションはどこかということを考えながらやっています」という秋葉のクレバーで献身的な動きが、これまでの山形の攻撃に不足する重要なエッセンスを注入していた。
ただし、これほど押し込んでも山形が得点を奪えなかった裏には、体を張った富山のディフェンスがあったが、なかでもGK飯田健巳の再三にわたるビッグセーブを抜きには語れない。戦術の50分の秋葉のヘディングを素早い反応でセーブすると、59分にはディエゴがディフェンダーとの間に入れてきたクロスも前に出てキャッチ。62分のCKではファーサイドで叩きつけたイ ジュヨンのヘディングシュートをいったんは弾きながら押さえ込み、アディショナルタイム直前には、途中出場の萬代のクロスをファーで合わせた中島のヘディングシュートも防いでみせた。「やっててコーナー危ないなとかそういうのは…。みんな声出してたし、止まってる選手もどこにもいなかった」と飯田は失点する可能性を微塵も纏わずにプレーを続けていたが、「だからこそやっぱり勝点1は欲しかったですよね、最低限」と悔やまれるのが最後に喫した失点だった。
試合後の安間監督は「後半、徐々に押し込まれてきて、コーナーキック、フリーキックが増えてきたんですが、うちの課題であるコーナーキック、フリーキックを山形さん相手にしっかりと防げたのが次にもつながると思いますし、続けなければいけないところだと思っています」と、ここまで課題とされてきたセットプレーの守備克服へ大きな感触を感じているようだった。「ただ最後の4分の3のスローインのところでやられたのもゲームが止まったときなので、それも含めて防ぎ、パーフェクトにもっていけたらなと思います」と隙がのぞいた失点シーンを新たな教訓に次の勝利に向かう。
「この勝利で浮かれてるやつがいたらケツ叩いときます。それぐらい強い気持ちで、次に向かって連勝、連勝で勝ちを伸ばしていかないとダメだなと思います」と話したのは、今季初先発で90分プレーした松岡亮輔。高い目標を掲げているからこそ、いまだ二桁の順位にとどまり、この試合でも多くのチャンスをつくりながら1得点にとどまったチームの現状に喝を入れる。そして、上位進出のためにまだ手にしていないものがある。「今シーズン連勝がないのでなんとしてでも連勝ができるように頑張っていきたい」。石崎監督は今シーズンの口癖のような言葉で次節への思いを表現した。
以上
2014.05.04 Reported by 佐藤円
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