およそ35,000人の観客を集めた日産スタジアムで、ホームの横浜F・マリノスが8試合ぶりの勝利を挙げた。AFCチャンピオンズリーグ(ACL)との関係で、次節・広島戦が7月に延期となったため、この試合が連戦の最後を締めくくる横浜FM。4月のリーグ戦では無得点と振るわなかった攻撃陣がようやく目を覚まし、第5節・鹿島戦以来の得点、第3節・徳島戦以来の勝点3を獲得した。
昨季以来、ずっと慣れ親しんだ4−2−3−1のシステムを、この試合では4−2−2−2に変更した横浜FM。試合途中で2トップに変更することはあっても、試合のスタートからこのフォーメーションで臨むのは今季初めてだった。前線のターゲットを2枚に増やし、攻撃の推進力を上げるという樋口靖洋監督の狙いが現れていた。試合はその2トップを組んだ藤田祥史、伊藤翔のコンビによる得点を初め、チームが得意とするセットプレーから、中澤佑二が今季初得点をマークした。
「2トップの2人で点を取れたのは大きいし、2人にとっても自信になる」と語ったのは、MF藤本淳吾。自らも後半、中村俊輔に代わってコーナーキックを蹴り、中澤の得点をアシストしている。
待望の先取点は後半7分。中村の縦パスを受けた伊藤が切れ込んで、左足で低いクロス。ここに走り込んだ藤田が得意の左足でゴール逆サイドに流し込んだ。「あれは結構、好きな形。(伊藤)翔も僕がニアに欲しいということを、わかってくれていた。翔に感謝したいです」と、藤田は満足顔に笑った。先制点から9分後の16分には、コーナーキックから中澤が技ありのゴール。普段はニアサイドに入り込むことの多い中澤だが、このときは中央で待っていた。ニアで競ろうとする選手たちの頭を越えたボールを、スタンディング・ヘッドで鮮やかに流し込んだ。早い時間帯に2点をリードした横浜FMが、あとは落ち着いて試合を優位に進め、無失点で切り抜けた。
とはいえ、立ち上がりはどちらに転ぶかわからない展開だった。横浜FMは前節・浦和戦に続いて、両ボランチは小椋祥平、三門雄大のコンビ。「最初から90分もたそうとは思っていなかった」(小椋)くらい、立ち上がりから機を見て前から仕掛けたのが、ボランチの2人だった。「チャンスがあれば、どちらかが出て行こうと話していた」と三門は強い体を生かし、前で潰れながらも味方を生かすプレーが前半から目立った。小椋も得意のタックルによるボール奪取から、積極的に攻撃に転じた。
また、システムが4−2−2−2となったことから、二列目の人数が少ない分、両サイドバックは高い位置を取ることが求められた。左サイドバックの下平匠は、前半の18分にはアーリークロスからチャンスを演出し、32分にも下平のクロスから中村がゴールを狙う。そして41分には中村の長いパスから、下平が裏にうまく抜け出してボレーでゴールネットを揺らしたが、これはオフサイドだった。いずれにせよ、両ボランチの押し上げが、2トップ、両サイドハーフに自由をもたらし、積極性が生まれた新システムで、チーム全体も活性化した。
一方、ガンバ大阪のキーマンはやはり、MF遠藤保仁。試合によっては、フォワードの近くでプレーすることもある遠藤だが、この試合では本来のボランチ。後ろからゲームを組み立て、セットプレーを獲得し、得意のキックで得点をうかがった。好位置でのフリーキックを得たのは前半28分。右足を振りぬき、ゴール左上を狙ったキックはとらえきれなかった。前半のG大阪は、立ち上がりの早い時間に左サイドバックの藤春廣輝が抜け出して放ったシュートが最大のチャンスだった。しかし、これは横浜FMのGK・榎本哲也が落ち着いたセーブで防いだ。
後半2点リードされて、FW宇佐美貴史をピッチに送ったG大阪だったが、サイドで起点になろうとしては囲まれ、自由にプレーをさせてもらえなかった。後半39分には右からの折り返しをダイレクトに狙ったシュートは、クロスバーを越えた。
ACLを交えての7連戦を戦った横浜FMは、最後となるこの試合で長いトンネルを抜け出した。次のリーグ戦(鳥栖戦)まで1週間の時間があるので、コンディションを整えつつ、新システムの精度をさらに高めたいところだ。「練習で突き詰めないと、この試合も、ただフォーメーションを変えただけの試合になってしまう」と語った中村。なお、中村が後半7分にピッチを退いたのは、前半から「体が全然動かなかった」(中村)ことから、自ら交代を希望していたため。「ベンチには本来スタメン組の(齋藤)学もいるし、ヒョウ(兵藤慎剛)、マチ(中町公祐)もいるから。仲間を信じて」。中村は交代直前のプレーで、先制点につながる伊藤へのパスを繰り出した。後半、キャプテン不在のピッチでも、代わった選手を含めて全員が自分の役割を果たした。今後のチーム力を上げていく意味でも、大きな勝利だったといえるだろう。
かたや敗れたG大阪は、依然勝ち切れない試合が続いているが、内容自体は悪くない。横浜FMの中村は「もともと手数を掛けて攻めるスタイルで、自分も好きなサッカー」と相手をリスペクトし、「今Jリーグでは3−4−3のスタイルが増えているなか、4バックのチームが押されているけれど」と、同じスタイルをもつライバルへのエールとも言えるコメントを残した。ともかく、横浜FMとともに、G大阪も早く自分たちのサッカーを結果につなげたいところ。両チームの巻き返しが、今後のJ1リーグを盛り上げてくれることを期待したい。
以上
2014.05.04 Reported by 近藤泰秀(インサイド)
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