Ｊ１残留をかけて挑んだ２シーズン前の最終節。神戸は０−１で敗れ、Ｊ２降格という屈辱を味わった。その試合の対戦相手が王者・広島だった。

あの日以来、神戸にとって広島は一つの目標であり、越えるべき壁となった。約１年半ぶりに行われる広島との対戦は、いわばリベンジマッチである。ただ、あの屈辱の一戦を知る小川慶治朗は「２年前のリベンジよりも、今は勝てばまた首位に立てる可能性がある上位対決ということの方がモチベーションになっている」と言う。森岡亮太も「（リベンジについて）そういう気持ちはもうない。この広島戦は、今の神戸がどこまでできるのかが見えてくる試合だと思うので、そっちの方がモチベーションとしては高い」と話す。
初タイトルを狙う神戸にとって、過去の屈辱よりも、この先の可能性の方が大切というわけである。

今節の広島戦は、神戸に“勝者のメンタリティ”を根付かせるための重要なミッションとなる。神戸の安達亮監督は「（第８節の）鹿島戦に勝って一度、首位に立った。それによってクラブ全体が今季は１位になれるという確信のようなものが少し芽生えたと思う。その後のＣ大阪と新潟に引き分けて３位に下がった時は、みんな本当に悔しい気持ちになったし、こういうのをくり返すことで首位争いが当たり前だという雰囲気にもなってくると思う。勝者のメンタリティを持った広島に勝つことは重要だと思う」と話す。
ＪリーグとＡＣＬを並行して戦いながら、どちらでも結果を出している広島は強い。前節の鳥栖戦ではスタメン５人を入れ替えて挑みながらも、しっかりと勝点３を奪っているあたりはさすが王者と言える。
ただ、神戸の安達監督はこう続ける。「攻守でシステムを変えてくる広島への対応は、どのチームもある程度はできてきていると思う。Ｆ東京や新潟も広島を崩せていたと思うしね。それでも勝たせなかった広島はやっぱりすごいけれど、（第９節で３−０の勝利を収めた）鹿島のように点を取る質の高さがあれば試合を決めることはできると思う」
神戸は現在、鹿島に次ぐリーグ２位の21ゴールを挙げている。その立役者で、Ｊ１得点ランキング１位タイの７ゴールを決めているペドロ ジュニオールは「広島は完成度の高いチームだと思う。でも、個人的に広島との相性はいいし、自分のコンディションは100％。ゴールを取りたい」と自信をのぞかせている。撃ち合いでは負けない。

さらに守備に関しても、神戸のCB岩波拓也はこう宣言する。三浦知良（横浜FC）に並ぶＪ１歴代通算得点３位タイ（139得点）まであと１ゴールと迫る佐藤寿人が、記録に並んだらカズダンスを踊ると公言している件に対して、「（カズダンス）見たいっす（笑）。でも、次節以降でやってもらいます」とピシャリ。
リーグ２連覇中の王者・広島、そしてカズに並ぶ通算得点を狙う佐藤寿人。２つの“キング”を阻止し、神戸は勝点３を積上げられるか。FIFAワールドカップブラジル大会によるＪ１リーグ中断まで残り４節。首位奪還を目指す神戸にとって、いよいよ大一番が始まる。

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2014.05.02 Reported by 白井邦彦