「日程は既に決まっている。あとは、自分たちでコンディションを整えて戦うだけ」と石原直樹は試合後に言い切った。これは、彼だけでなくこの日ピッチに立った選手、ベンチに入った選手、そしてスタッフ全員の置かれている状態を代弁したものであろう。
お互いに中2日での試合となった第10節・鳥栖対広島。現状でできる最高のプレー、出せるパワー、見せるパフォーマンスを90分間通してやり続けた試合だった。
この試合まで鳥栖は3連勝中で、他の試合結果次第では首位になる可能性があった。広島は前節の鹿島戦で0-3と完敗を喫し、なんとしても連敗を避けたいところだった。この3位鳥栖と4位広島の戦いを見ようとスタンドには17,339人のサポーターが駆けつけていた。
勢いを持った鳥栖に対し、ACLも含めて連戦が続く広島は前節から多くのメンバーを入れ替えてきた。試合の2日前には完全オフを取り、試合前日はランニングを中心とした練習でコンディションを整えた。森保一監督は、試合開始から勝負をかけるのではなく、流れの中で一気に勝負をつけるつもりだったのかもしれない。
「ホテルを出る直前まで色々と考えて…」(森保監督)決めた先発メンバーは、1トップに石原直樹、トップ下には今季初先発のMF森崎浩司、センターバックには塩谷司を入れた。「一人一人が役割を果たしてくれた」(森保監督)と試合後に語った言葉には、感謝と慰労と選手に対する信頼が凝縮されていたように感じた。
試合は序盤に鳥栖がペースを握った。
11分には、右サイドバック丹羽竜平のフィードに中央に走り込んだMF金民友が右足で合わせたが、GKにブロックされた。13分には、左に流れたMF水沼宏太のクロスに中央で金民友が頭で合わせ、FW豊田陽平がそのボールをスルーし、走り込んだ水沼宏太が豪快なシュートを決めた。
広島も慌てることなく、14分に左DF水本裕貴からのロングフィードをFW石原が中央で収め、森崎浩司の左足からのシュートを導いた。17分には、右サイドから展開されたボールを左MF山岸智がGK林彰洋(鳥栖)の位置を見て、クロス気味にシュートを放ち同点とした。お互いに前半からシュートまでは遠かったものの、現状で持てる力を出していた。
この姿勢は後半になっても変わらなかった。鳥栖は47分、中央からMF高橋義希の縦パスを受けた水沼が、グラウンダーのクロスを右サイドから入れた。このクロスを豊田はうまく合わせることはできなかったが、得意とするサイドからFW豊田のフィニッシュまでを幾度となく試みてはいた。65分には、左サイドバック安田理大のクロスボールからこぼれたボールをMF藤田直之が左足でシュート。これは広島DFのブロックで阻止された。67分には、右CKから途中出場のMF早坂良太がヘディングで合わせたが、ゴールの上に逸れた。「あのシュートを決めていれば流れは確実に変わった」と語る早坂の表情から、その悔しさは十分に感じ取ることができた。
残り30分となったところで、森保監督が勝負に出た。FWに佐藤寿人を入れ、石原直樹をシャドーの位置に下げたのである。この交代の意図をくみ取った広島の選手たちは一気に加速を始めた。75分には、石原のパスを受けた佐藤が左足でシュート。GK林にキャッチされはしたものの、鳥栖を追い込むプレーが続いた。81分には、途中出場の高萩洋次郎の左からのクロスに、右MF柏好文がダイビングヘッドを見せたが、これもGK林の好セーブに拒まれた。
試合が動いたのは82分。右サイドから柏のクロスに佐藤がボレーで合わせ、こぼれたボールを石原が蹴り込んで決勝点をあげた。鳥栖も終了間際の後半アディショナルタイム、豊田がDFからのロングフィードを受けたがシュートまで持っていくことはできなかった。
両チームのシュート数合計は17本。厳しい日程の中でも、ゴールに迫る気持ちとプレーを最後まで見せてくれた。一進一退の攻防の中、確実に好機に決めた広島が勝ったが、鳥栖も勝ちきるチャンスは幾度となく作った。
「日程は既に決まっている。あとは、自分たちでコンディションを整えて戦うだけ」
決勝点をあげた石原直樹の言葉にすべてが凝縮され、この試合に関わったすべての人の気持ちを代弁してくれている。スタンドを埋めた多くのサポーターも、結果にかかわらず大きな拍手と歓声で慰労し健闘を讃えた。
「選手たちもあきらめずに結果を求めて戦い抜いてくれたことは、良かったと思います」と尹晶煥監督。「このスタジアムは雰囲気がいいですし、鳥栖のサポーターも素晴らしい。サンフレッチェのサポーターも多く駆けつけてくれて、いつものホームと同じくらいの雰囲気作りをしてくれているので、今日も選手が最後まで走って戦い抜けたと思っています」と試合後に語ったのは森保監督。勝敗以外にも、サッカーの持つ魅力を見せてくれた試合だった。
サッカーの面白さはゴールだけではない。そこに至るまでの過程やそれを阻止するプレーを見ていても面白い。見ている側はそこに惹きこまれ、90分間をそこに没頭してしまう。選手が必死にゴールを目指す分だけ、見ている側も惹きこまれてしまう。サッカーは、どこを切り取っても魅力が詰まっているスポーツなのである。
以上
2014.04.30 Reported by サカクラゲン
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