栃木はこの試合、【4-1-4-1】ではなく、【4-2-3-1】を採用。この狙いはFWナザリトへのマークの強化と、セカンドボールを拾った後のカウンターへの意識付けに取れた。
実際に試合を観てみると、前半、187cmのナザリトには186cmのドゥドゥがマンマーク気味に見て、さらにボランチに置いた190cmの岡根直哉が競り合いの際は必ずプレスバックに入って、ナザリトを封じると、ボランチの一角の小野寺達也と、CBチョ・ヨンファンがセカンドボールを積極的に拾って、前線の4人に素早くボールを送り込む。非常に役割が明確化された戦い方をしてきた。
「相手のストロングポイントは分かっているので、そこをどういう風にケアをすればいいか。岡根の調子も上がってきたので、このタイミングで起用した」
栃木・阪倉裕二監督は、試合後の会見で筆者の質問に対し、『狙い』をはぐらかすようにこう語ったが、この言葉の裏にはしっかりと準備をした対岐阜策に対する自信がみなぎっていた。
それもそのはずで、この戦い方が非常にハマった。12分にトップ下の廣瀬浩二が飛び出して、GKと1対1に。これはGK川口能活のファインブロックに阻まれるが、18分、カウンターから1トップの瀬沼優司がドリブルで切れ込む。瀬沼とDFと交錯したボールがこぼれた先に待っていたMF近藤祐介が豪快に左足を振り抜くと、ボールはゴール左ポストをたたき、そのまま右サイドネットに吸い込まれた。
1点のリードを奪った栃木は、その後も狙いを忠実に遂行する。それに対し、岐阜はリズムが掴めなくなり、中盤が完全に間延び。攻撃もロングボールからの単調なものとなり、苦しい戦いを強いられた。
後半、何とか現状を打破したい岐阜は、動きが悪く、相手カウンターの温床となっていたFW田中智大に代え、FW難波宏明を投入。対する栃木は、GK鈴木智幸に代えて、GK榎本達也を投入した。
すると岐阜は前半よりボールが動くようになり、ようやく流れを掴みかけたように見えた。しかし63分、目下絶好調男が岐阜の前に立ちはだかった。左サイドに流れてボールを受けた廣瀬のパスから、湯澤がGKと1対1になる。湯澤のシュートはGK川口が素晴らしい飛び出しで阻んだが、ボールがこぼれた先にいたのは瀬沼だった。素早く反応した瀬沼は、左足ダイレクトでボールを強烈に振り抜くと、スピードに乗ったボールは、カバーに戻ってきた岐阜DFを寄せ付けず、ゴールに突き刺さった。
あまりにも痛すぎる2点目だった。岐阜はその後、MF高地系治のスルーパスに難波が決定機を迎えるが、枠を捉えきれず。78分にMF太田圭輔の左からのクロスをナザリトがヘッドで押し込むが、85分、またしても一瞬の隙を栃木に突かれてしまう。中央で小野寺が起点となり、廣瀬につなぐ。この時、CBが低い位置にいたために廣瀬に簡単に前を向いてドリブルで運ばれてしまう。岐阜の守備が廣瀬に意識が行った瞬間、湯澤は中央から左に流れて、オフサイドを掻い潜りながら死角に入ると、廣瀬のパスを受けてそのままドリブルでカットイン。対応しきれぬDFを尻目に、「自分の得意な形」(湯澤)と右足を一閃。ボールはゴールに吸い込まれ、栃木が岐阜の反撃の機運を消し去る3点目を挙げた。
これで勝負は決した。1-3の敗戦。岐阜は要所で栃木の狙いにはまってしまった。栃木の試合運びの巧さと、湯澤と瀬沼の好調ホットラインの破壊力の凄さを目の当たりにしたが、それ以上に岐阜の試合運びの拙さが露呈した。
「俺がピッチに入ったらプレーで変えられるけど、ピッチの外からじゃ限界がある。ピッチの中の監督がいないと困るよ。選手たちはいっぱいいっぱいだった。もっと余裕を持ってやってほしい。それぞれの役割とプラスアルファを出してほしい」。
試合後、ラモス監督がこう語ったように、栃木が岐阜対策を講じてきたら、それを外して自分たちのペースにしていくしたたかさが必要だ。一度はまってしまったら、もう抜け出せなくなるでは本末転倒。ハマったら、どうすればそこから抜け出せるか。どこを突けば相手のリズムが崩れるか。それはピッチ上にいる選手が判断しなければならない。
「変化が無いと困る。相手の思う壺にはまった時間が多かった」(ラモス監督)。
ピッチ内のリーダー。高地、宮沢、木谷といったベテラン選手がいかに苦境に陥ったチームを舵取り出来るか。この部分でもチームの成熟度を高めないと、今後より結果から遠ざかってしまう危険性がある。この試合は一つの大きな警鐘として受け止めたい。
以上
2014.04.21 Reported by 安藤隆人
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