●曹貴裁監督(湘南):
「おつかれさまでした。前節、まだまだなところはあるんですけど、良いゲーム内容で勝ったあとでホームに帰ってきましたので、前節以上の試合をしようということで選手たちを送り出しました。前半、相手のハードワークに少し苦しんで、ボールの動かし方とか、ちょっと中盤での安易なイージーミスが続いて、リズムはどっちつかずだったという感じでした。大槻の1点目、セットプレーでもう1点取って、そこから後半は自分たちの形で狙いにしていた形で点を取った。確か3点目は縦パスを入れたあとに、翔平(岡田)がそのあと拾ってくれたと思うんですけど、我々のスタイルはあのパス、あのプレーに象徴されていると思っています。ひとつのボールの支配率、パス数の多い少ないではなくて、いかにゴールを取るかということにこだわってずっとやってきているので、そのことを選手たちが理解してしっかりやってくれたことは感謝したいと思います。ただ、ほんとうに上には上がいる。昨日J1の試合もありましたが、ひとつのコントロールミス、シュートミス、それから判断のミスで失点する、得点が生まれるという世界を、ついこの前のように僕自身が体感しているので、今日もベンチに座りながら「まだまだだな」と思っていました。世界のサッカーを見ると、ドルトムントとバイエルンの試合はほんとうに素晴らしかったんですけど、ああいう試合をやっている選手たちもいるんだと。そのレベルに、ワールドカップでは日本全体で臨まなきければならないというところで言うと、我々の選手もそこに近づくようなアプローチ、プロセスを踏んでもらいたいと思うし、そういう意味では試合に勝った負けたで一喜一憂しないで、いま我々がやろうとしていることの質を高める。それを練習、それから練習以外の時間で、もう粛々と、淡々とやっていく、いい意味で。それしかないと思っています。いまのところ、負けなしできてますけど、とくに浮かれることなく、自分たちの足元を見つめながら次の横浜FC戦に臨みたいと思います」
Q:点差ほどの試合内容ではなかったと思うが、その差を生んだのはどこか
「1点差だからといって試合の内容が拮抗してるかどうかは見方によって色々だと思う。僕は点差ほどの試合かどうか、たとえばこのまえ6点離れたが、点差以上の内容とか点差通りの内容とか思ってないし、今日が点差ほどの内容じゃないとも思ってないです。軸は自分たちのサッカーがどれだけ相手に対してできたかどうかなので、もちろんそれを出させないようにしようという相手のしたたかさはありますが、そこをかいくぐって点も取れたし、点差ほど内容が拮抗していたとも思ってないし、逆に点差通りの試合内容とも思ってないです。自分たちがどれだけ精度を高めてどれだけやろうとしたことをやれたか。一概に点差で簡単に僕は捉えていない。複数得点を取れたのはよかったと思いますが、それもすべてではないです」
Q:ハーフタイムのコメント、右と左の温度差があるとは?
「その言葉の通りですね。きょう岡田翔平が左サイドで頑張ってくれたんですけど、(菊池)大介と三竿は、ここで言うのはなんですが、あの前半のプレー、自分たちのひとつの駒としてやっていいこといけないことを整理しながら彼らが45分間スイッチを入れてやれたかといったらやれていなかったと僕は思っています。彼らはやれる選手であって、やれるのにやらないのがいちばん悪で、できないならしょうがない、でもやれるのにやれないのは俺のなかではそれがいちばん許せなくて。翔平が何回もフリーランニングしているのにそこにパスを出さなかったらオフの選手は走らなくなるし、それをお互いに人間として思いやりをもってやれるかどうかなので、後半よくなりましたけど、彼ら2人の顔を見たらまったく今日も満足しなかったので。僕はあえてここで言いますが、彼らはそんな選手たちじゃないです。だからこそ彼らにはもっと成長してもらいたいし、その意味で、点が入ったからいいじゃなくて、あなたたちのプレーはどうだったのかというのは、僕の責任ですけど、彼ら自身も反省して次に向かってもらいたいなと思います」
Q:ハーフタイムのコメントでもう1つ、勘違いという言葉を使っているが、そういう雰囲気があったのか
「いや、まったくなかったです。よく2−0の点差は危ないというけど俺は危ないと思ってないと。俺が危ないと思っているのはお前たちの勘違いだと。一緒のことだが言葉を変えて言っただけです。2−0で大丈夫だという雰囲気もなかったし、むしろアラートでした。でもこのチームのいまの選手たちは僕のその言葉を受ける前に自分たちで整理しているので、いい意味で僕の言葉をいいふうに捉える事ができると思っているので、べつに勘違いしているとも思わなかった。ただそのままでいいよというつもりもなかった。勘違いすることだけが怖いから、2−0だろうが1−0だろうがそんなことは怖くない、2−0だからビビッてやる必要はない、でも自分たちの勘違いだけは俺は怖い、だから後半0−0のつもりでやってくれと話して送りました」
Q:遠藤選手を3バックの右にコンバートしてからの成長についてどう見ているか
「あいつも19、20歳でキャプテンマークを巻く試合もある。海外では主力の年代になりつつあって、Jリーグで25歳でやっていることをドイツとかでは20歳ぐらいで経験しているのではないかと感覚的にあるので、彼もひとりの選手としてプレッシャーをたくさん抱えてやっていると思います。ひとつはJリーグのなかで自分がたくさん試合に出ることによる自分への自信、もうひとつはポジションを変えることによって新しい自分を見つける、それがチームの向上に繋がるのが一番よくて、彼ができることをやらせる、勝つためにできることをやらせるという時代もありますし、年月が経つともっと彼ができることを増やすという側面もあるので、選手の成長とチームの勝利のベクトルが比例してチームが上がっていくことが本来のチームの姿だと僕は思うので、今日ボランチもさせましたが、3バックの真ん中も4バックの真ん中もサイドバックも選手としてはできたほうがよくて、そういうマルチなところでいろんなことを覚えながら成長してもらいたいし、それがチームの勝利を引き出すというタイミングだなと思ったのであのポジションをやらせている。ただこの先も色々彼も成長しなければいけないと思いますので、べつに3バックの右がいちばん彼のいいポジションかどうかは経験や次の成功体験で変わってくるかもしれないし、それはある意味ファジーにしていっていいんじゃないかなと。今後の彼の可能性に期待するというかたちで僕がいろんな可能性を引き出していけばいいんじゃないかといまのところは思っています」
Q:田坂監督が湘南はいま勢いがあると言ったが、バイタルエリアでフリーで打った1点目など勢いだけではない部分が見れたと思うが
「田坂監督がどう言ったか分からないが、勢いで彼らがやってるとは僕自身は思ってないです。勢いは絶対にチームには必要で、ないよりもあったほうがいい。でも相手の状況によって裏に出すのか足元に出すのかを決められるのがほんとうの勢いで、全部裏に出して行って来いのサッカーだと、それはノーディシジョンですよね。だからあそこで周平が間で受けてターンしてシュートというのは練習で何回も繰り返しているが、あいつもこのまえ点を取れなくて責任を感じていて、それこそ一蹴入魂じゃないが絶対決めてやると思って打ちましたよね。やはりシュートって決めようと思って打たなきゃいけなくて、このコースにこの角度でこうやって打とうなんてやったって試合中絶対に入らないですよ。やはりヨーロッパの選手は決めようと思って打つ、ただシュートを打たされるのか自分で決めようと思って打つのかって全然違って、そこは単なる勢いから生まれるものではないと僕は思います。彼自身の気持ちがボールに乗り移っただけで、べつにほんとうにシュート練習であれだけのシュートが田坂監督が言うように行かないかもしれないですけど、俺はあいつのそういう気持ちが球に乗り移ったんじゃないかなと思っています。いいシュートだと思います」
Q:一喜一憂しないということだったが、開幕8連勝については?
「本当に何度も言うようですけど、去年ここで何度も敗者の弁ばかり言っていたので、勝ってる気がしないんですよね。1年目(2012年)の時のほうがなんとなく勝ってるかなという気がしていましたけど、今は家に帰ってテレビを見て、あ、勝ったんだというくらいで。本当に去年ここで何回も負けたので、それに比べるとまだまだだなという想いしかなくて。嬉しいんですけど、満足はできないというか」
Q:前半、永木が最終ラインに下がってきて、遠藤や三竿などサイドのDFが上がって行っていたが後半はやらなくなったように見えた。その意図は?
「僕はどちらかというと、前半はもっと行ってもらいたかったんです。行けてたというより行けてなかったと思っていて。後半、大介(菊池)や三竿は僕に言われたので、アイツらは高校生みたいなところがあるので、行かないようにしたのかなと思うんですけど、僕は後半のほうがよかったと思っています。僕たちの基準で言うと、全体的には後半のほうがよかったと思います。それは、一つひとつのプレーに繋がりがあったし、一つひとつのプレーにメッセージがあった。前半は一人のプレーがいいメッセージを出しているのに、そのメッセージを受け取れなかったり、逆にメッセージを出せなかったりと、僕自身は思っています。映像を見なければ分からないですけど、感覚的には後半のほうが、我々のやろうとしていることの軸は戻ったかなと思います。前半は、自分たちの形はそこそこ作れるんですけど、その形が本当に、ここ、ここ、ここってタイミングで繋がっているというよりは、なんとなくタイミングが遅れても、ボール取られなかったらいいじゃんというプレーが多かったかなと思います。形を作るということが目的になっていて。だから3点目のゴールは祐市(丸山)が縦パスを入れて、そのボールを翔平(岡田)が取って入れたんですけど、僕はあれがシンプルに一番いいゴールだと思っています。ゴールを取るために余計なことはしなくていい、と。必要だったらパスをしなければいけないけど、意味のないパスは必要ないと。それはずっと言っていること。相手にとって何が一番怖いか。ゴール前に来られることだと。単純にロングボールを蹴ってこられることではなくて、やっぱりあそこでボールを受けられたらDFラインは下げなければいけないし、越されたらついていかなければいけない。ついていくということは、前線に人はいなくなる。そのリズムを作っていくことが大事。3点目はいい得点だったと思います」
Q:攻守に渡って、全員サッカーのお手本のような試合をしていると思うが?
「そう言っていただけるのは有難いのですが…さっきも言った通りまだまだだなと思うので。ワンタイミング遅いなとか、ワンタイミング早いなとか、そのクロスはこっちを選択したほうがよかったんじゃないかとか。彼らが選ぶことを否定しているわけじゃないですよ。でも、攻撃も守備もまだまだだと思っています。選手がそういうことをやり切ろうとする意欲はすごく高いし、彼らは本当に素晴らしいと思います。でも、ここで足を止めているわけにはいかないと思っています」
Q:GWの連戦となるが?
「まぁでも、相手も一緒なので。コンディションの悪い選手は試合のピッチには立てないだろうし、考えてやらなければいけないと思います。ただ、J1はヤマザキナビスコカップとリーグ戦をやっていて、ヨーロッパはチャンピオンズリーグとリーグ戦をやっていて、下手したら代表も含めて1週間に3試合ある選手もいるので、そのタフさに負けないようにするには、そういうことに負けちゃいけないですね」
Q:この3年間の一番大きな進化とは?
「一番は1点取った後に、守ろうとしなくなったことです。1年目は2点目を取りにいけって言ってるけど選手は成功体験がないので、言ってはみたものの、僕も本気で言えていたかどうかは疑問です。今は、彼らがやってきたこと、プロセス、特長をゲームに落とす時に、1点で後ろに下がってボールを回されて、時間を使われるよりも、2点目3点目を取ったほうが相手にとってダメージだし、自分たちのよさを活かせるなということは体験的に思えるようになりました。でもそれは、僕がこうなるだろうと準備したことではなくて、そういうことをもちろん目指していましたけど、なぜそうなったかと聞かれると、ちょっと分からないです。それは今年のチームを預かってキャンプから試合に臨むにあたって、彼らの伸びしろというか、そういうことを経験値として自分の中に入れてアウトプットする力が、以前よりは少し上がっていて。航がセンタフォワードの仕事をしなければいけないし、ウェリントンがセンターバックの仕事をしなければいけない。でも「俺守備嫌だな」とか「俺はDFだから攻撃は苦手だ」と思った瞬間にチームの伸びしろって終わっちゃうんですよね。ひとつ言うと、チームに対するロマンというか、チームに対する夢というか。そういうものを僕が持ち続けないと、彼らがやれることしかやれなくなる。1-0で勝った、勝点3よかった…ということしか勝利の基準がなくなってしまう。さっきのご質問にありましたが、全員攻撃・全員守備というのは決してやらされてはいけないと思います。全員で攻めろ、全員で守れなんて誰でも言えるんですけど、それを本当に「そうだな」と思わせなければいけない。それは結果もそうですけど、トレーニングとかプロセスが一番大事。リスクを冒したミスは絶対に咎めない、でも今日の大介、三竿の僕の感覚でのああいうプレーは、よくても言うっていう風にしていかないと、僕は変わっていかないと思います。いいか悪いか分からないですけど、でもその連続だと捉えています」
Q:キーワードは「意思」か?
「意思とか意識って僕は変わると思う。選手は誰でも成功したい、うまくなりたいと思っている。逆に意思がなければ指導者はやってはいけない。戦術が優れていても、どうしたいという意思をチームに植え付けないといけない。彼らをどれだけ本気にさせるかということが、僕の中での毎日の格闘。本気でやらなければ。選手はミスをして、経験して、失敗して、負けの責任を自分で負う中でこれではいけないと思って、初めて人間には意思が生まれると思う。順風満帆にはいかない。我々も来週から何連敗もするかもしれない。でも、常に選手たちにそのメッセージを送っておかないと、勝ったからいい、負けたからダメということではつまらないと思います。すいません、熱く話すことじゃないですが(笑)」
以上
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