柏はこの試合の前までの今季公式戦１０試合中、６試合が引き分け。前節の川崎Ｆ戦とヤマザキナビスコカップの大宮戦も１−１で引き分けと、勝ち切れない試合が続く。対する横浜FMはAFCチャンピオンズリーグでは連勝中も、リーグ戦では４試合勝ち星がない。

こうした状況を打破しようという意識の表れか、両チームとも試合の入り自体は悪くはなかった。４分には、中村俊輔の左クロスのこぼれ球から齋藤学がミドルシュートを狙うがわずかに枠を逸れた。１３分には、ゴール前での混戦からの兵藤慎剛と藤田祥史の至近距離のシュートが柏守備陣の身を呈したブロックに阻まれる。
また、１５分には柏も、橋本和のクロスからゴール前でフリーの田中順也がボレーを放つが、ヒットせずにＧＫ榎本哲也にキャッチされ、２５分にも高山薫のクサビのパスからレアンドロがダイレクトでＤＦの背後に落とし、フリーの工藤壮人が決定機を迎えたがシュートは榎本が足でセーブした。

「前半３０分ぐらいから、前から行こうという話になった」（中澤佑二）というように、横浜FMが前半の途中から、前線が積極的に柏の最終ラインへプレスを仕掛けていくと、それまでの試合の流れに変化をきたす。横浜FMの圧力に負けた柏はビルドアップができなくなり、加えて、前半終了間際のレアンドロの負傷によって、前線でのボールの収めどころを失ってしまう。

ボールを持てなくなった柏に対し、ポゼッションでは横浜FMが圧倒、中村を中心に中盤の５枚が柏のプレスをいなしながら敵陣へ攻め込んでいく展開になった。
「ペナルティーエリアの角近くまでは行くが、最終的にボックス内に際どいボールが入らない」とは樋口靖洋監督の言葉だが、横浜FMはボールを保持してもその先には入れず、際どいシーンを作り出すことができない。
「学にドリブルしてくださいというシーンが多くて、個人技しかない」（中澤佑二）。手詰まりになった結果、最後は齋藤のドリブル突破に委ねる傾向が強くなる。ポゼッションで上回る横浜FMが齋藤のいる左サイドでの仕掛けが多くなる分、両チームのせめぎ合いは横浜FMの左サイド、柏で言う右サイドに偏り、その反対サイドにはなかなかボールが渡らないアンバランスな展開も見られた。

そして、その齋藤のドリブルに対しては「持って中に入ってくる時は俺が付いて、カットインに対してはドゥーさん（近藤直也）やナベ君（渡部博文）が近い位置でサポートするというのは狙い通りできた」（鈴木大輔）と、柏の３バックが連動した守備を見せ、危険ゾーンへの侵入を阻止。さらに横浜FMの１トップである藤田、途中出場の伊藤翔も、１対１のマッチアップで近藤が完全封鎖。「後ろは崩されることはなかった。最終ラインはしっかり付けていたので、守備は問題なかった」（近藤）。

だが柏はボールを奪っても、横浜FMのプレスを受けると苦し紛れにロングボールを放り込むだけで、中澤と栗原勇蔵、横浜FMの両センターバックに簡単に弾き返されるだけ。前線でボールが収まらない柏の攻撃の手段は、ほぼカウンターのみ。時折良い形のカウンターで数的に相手を上回った好機も少なくはなかったのだが、いずれも精度を欠いたパスミスでチャンスをフイにし、カウンターを完結させるどころか、可能性の感じられない拙攻に終わる。

９０分を通じて、シュートも少なければ決定機も少ない試合。それは両チームの守備が安定していたとも取れるし、レアンドロをケガで失う不測の事態や、厳しいアジアの戦いを並行していることなど、それぞれ影響が出たことも否めない。それらを踏まえた上で、どう攻撃を仕掛けていくのか。その策をチーム全体で見出さなければ、リーグ戦５試合目の引き分けと勝ち切れない試合が続く柏、リーグ戦３試合連続無得点で５戦未勝利の横浜FM、お互い状況打破には至らないだろう。
逆に言えば、守備が安定しているからこそ、攻撃の打開策を見つけ出せば、柏も横浜FMも必ず状態は上向くはずだ。

以上

2014.04.20 Reported by 鈴木潤