どんなに試合の流れをつかんでいても、最終的にこの競技で試合を決めるのはゴールだ。今季初の連勝と今季ホーム初勝利を目指していた仙台だが、この試合ではまたしてもゴールの重みがずしりとのしかかってしまった。
4月9日に就任したばかりの渡邉晋監督の下でチームの立て直しをはかっている仙台は、現在のベースを2012年当時のスタイルに置き、高い位置でのプレッシャーによってボールを奪うことを守備において優先している。これが前節にうまくはまって今季初勝利をあげることができたのだが、今節の相手・鳥栖はその点では噛み合わせが悪い相手だった。2012年にリーグ戦で2戦して2分。当時はロングボールでプレッシャーをかわされ、一気に最終ラインの裏を狙われるかたちから失点していた。
今回も鳥栖の最終ラインやボランチからのロングボールが最前線の豊田陽平に入ること、そしてそのセカンドボールを拾って攻撃に展開することに、それぞれ仙台は警戒が必要だった。特に後者について、渡邉監督も選手たちも事前に意識していた。角田誠を負傷で欠いていた仙台は、鎌田次郎をボランチに配置。渡辺広大と石川直樹を最終ライン中央に置き、中央で相手の2次攻撃に至るまでフィルターを掛ける守備を敷いていた。そして素早いカウンターで、鳥栖の裏を取る。ここまでは仙台のプラン通りだった。
現在負傷者が続出している鳥栖のセンターバックでは、この日は坂井達弥とキム・ミンヒョクがコンビを組んでおり、前半にまだ彼らの連係でミスがあったときには、赤嶺真吾とウイルソンの2トップが流動性を生かしてチャンスを作った。開始早々にウイルソンが挨拶代わりのシュートを打ったことに始まり、13分、27分、29分には赤嶺がシュートチャンスを迎えた。
「2列目もそこ(2トップ)に絡めたときはシュートにもって行けたのですが、そこで決めるか決めないかのところに、自分たちの足りない部分がある」と梁勇基は試合後に反省した。彼も含めて多くの選手がチャンスを作ったものの、仙台はゴールが奪えず。すると、44分にウイルソンがシュートを外してからわずか1分後に鳥栖が先制した。左サイドで安田理大が粘っているうちに逆サイドが空き、そこにそれまで攻撃参加を控えていた丹羽竜平がここぞとばかりにチャンスを逃さず飛びこんだ。シュートは関憲太郎のセーブも苦にせず、仙台ゴールに押しこまれた。
殊勲の丹羽が「いい時間帯に取れてよかった」と言うように、彼の攻撃参加のタイミングも、取った時間も、相手にダメージを与えた。
それでも仙台は後半の攻勢の流れを手放さなかったのだが、59分にオウンゴールで追加点を許したことで完全に鳥栖の注文相撲にはまってしまった。56分に仙台ベンチは二見宏志に代えてクロスが得意な鈴木規郎を左サイドバックに送りこんでいたのだが、4バックの配置が整わないうちに同サイドの水沼宏太にクロスを送られ、それがゴールに繋がってしまった。
悪いことが続いてしまった仙台にとって、この2点目は「ダメージが大きかった」(渡邉監督)。攻撃には焦りを生み、攻撃に出た分、守備が薄くなるリスクはある。仙台が攻撃に人数をかけた分、鳥栖は守備に人数をかけ、仙台のシュートチャンスでは坂井らがしっかりシュートブロックに入っていた。そして90分、薄くなっていた仙台最終ラインの裏に途中出場の早坂良太が抜け出し、試合を決定づけるゴールを奪い取った。
チャンス自体がなかなか作れなかった今季のこれまでと比べれば、仙台はシュート数18本という数字を出すまでもなく決定機を多数作ることができていた。それでもゴールが決まらなければ勝負には勝てない。逆に、相手に対策を取られながらも、耐えるべき時に耐え、決めるべき時に決めた鳥栖は、最終的に仙台を注文相撲にはめることができた。
決定力の差が残酷なまでに表れた試合だったが、どちらも、次も同じとは限らない。後半戦での再戦の日までに、「日々のトレーニングから質を上げる」という渡邉監督の下で、仙台はどれだけ決定力と得点力を上げることができるか。
以上
2014.04.20 Reported by 板垣晴朗
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