徳島戦を前に戦線を離脱していた小林悠に加え、レナト、森島康仁が徳島戦で負傷。さらに、この柏戦を前に大島僚太が負傷しており、欠場を余儀なくされていた。3枚の攻撃陣に加え、このチームの心臓部であるボランチにも欠場者が出たことで、この柏戦は川崎Fにとって難しい試合になってしまった。
負傷者の発生による選手の入れ替えの影響について中村憲剛は「無いといえば嘘になります。誰が出ても同じ形ではないので」と率直に述べる。また大久保嘉人も「誰と誰が組もうといいんですが」と代わって出場した選手に気を使いつつも「強いチームは誰が出ても変わらないサッカーをするので、そうなれるように、今年中になれるように、やっていきたいと思います」と述べ、選手の入れ替わりの影響を暗に認めている。つまり川崎Fは連携面で問題を抱えていたのである。そんな川崎Fに対し、柏が前半の立ち上がりから見せた厳しい守備は実に効果的だった。ファールどころかカードすらいとわないハードな守備は川崎Fの選手に極限の技術と素早い判断とを強いる事となる。
ともに主導権を握ろうとする中、迎えた前半5分。柏は中盤でパスを受けた大谷秀和がスルスルとドリブルで持ち上がる。不意を突かれた形の川崎Fの守備陣は、混乱の中でクリアする事ができず、セカンドボールがレアンドロの足下に。レアンドロは、ここしか無いというコースにシュートを流し込み、柏が先制する。
ただでさえ連携で難しさを残す川崎Fの戦いはこの失点で一気に難しさのレベルを上げてしまった。同じように前半開始早々に失点したACLのアウェイでのウエスタンシドニー戦を脳裏に思い浮かべながら、川崎Fは苦しい前半を過ごす事となった。
本人は「いい緊張感の中でやれていた」のだと話すが、それにしてもパスの受け手としてミスが散見され、そして動き回りすぎだとの指摘を大久保から受けていた安柄俊は、結局試合の中に入りきれずにいた。緻密にパスを繋ぐ川崎Fのサッカーにおいては、パスワークは試合を左右する生命線となる。一人でも乗り切れない選手がいると、途端にリズムは悪くなる。そういう点で、後半開始からその安に代えて稲本潤一を投入し、ボランチに置く采配はパスワークの復活を意図したものとしては妥当なものであろう。川崎Fは後半から大久保を1トップにし、中村を1列前に出した布陣を採用して流れを掴む。
もちろん柏が1点をリードしていた点。前半に見せていたハードワークの影響が出つつあったのは間違いない。そんな中、川崎Fが柏を押しこむ後半の流れを決定づけたのが、後半62分のパウリーニョから金久保順への交代采配である。
「今日は最初のプレーでいいかなと思えたので、そのまま流れに乗れました」と話す金久保は、持ち前の技術の高さを発揮し、ボールを前に運び続けた。その結果、川崎Fは守備意識の高まった柏を押し込む。3バックの柏は、両WBが守備時には最終ラインにまで落ちることでサイドのスペースを埋め、それによって堅牢な守備ブロックを築いていた。しかしそれはボールを奪ったあとの、攻撃の難しさとのトレードオフによって得る安定でもある。
そんな柏の戦いについて大谷秀和は「両サイドの選手が深い位置に下がっているので、出て行くのもきついと思います」と分析。また鈴木大輔は「なかなか前に出られなかった。低い位置でボールを奪っていたということがあるので、もう少し前から行く、引っ掛けるところのメリハリを付ける必要があったと思います」と話しており、守備に偏っていたことは明らかだ。
川崎Fに得点の匂いが漂い始めた後半。同点ゴールは73分に決まる。川崎Fのパスワークに応じ、守備陣がスライドする柏の特徴を逆手に取った森谷賢太郎がドリブルで柏陣内へとボールを運ぶ。この日、前半から川崎Fを苦しめてきたハン・グギョンをかわした森谷が中村にパスをつなげると、絶妙なスルーパスが山本真希へと通った。
この場面、その場所に上がっていた山本は「(なぜそこに居たのか)わかりません(笑)。なんだろう、するするっと上がっていったらゴール前に居た」と振り返る。ただ、中村にボールが渡った瞬間に「これは来るなと思って(飛び出した)」と話す絶妙な飛び出しによってGKと1対1となり、これを豪快に決めた。風間監督をして「みなさん。綺麗なものだったと思いますよね。私もああいうシーンをもっと沢山見たいなと思います」と言わしめた同点ゴールによって川崎Fが柏ゴールへの圧力を強めた。
川崎Fが逆転ゴールを狙った試合終盤の雰囲気については大久保が「後半の最後らへんはいつ入ってもおかしくない展開でしたね」と話す状態にあった。しかし、後半アディショナルタイムの決定機も決めきれず。結果的に1−1に追いつくのが精一杯だった。後半、柏を圧倒した川崎Fは、体力を使いながらなんとか同点に追いついた。しかし結果的に勝ちきれなかった。そんな試合を振り返り大久保は「前半からああやって(後半のように)回されればすごく向こうもすごく体力を使いますし(中略)それを毎試合やれるようにやっていきたいです」と反省。「負けよりは、0よりはいいと思いますが、ホームなんでね。勝ちたかったというのはあります。(良かった後半の)45分しかしてない感じでそれは悔しいですね」と表情を曇らせた。
一方、結果的に同点に追いつかれた柏の戦いについて鈴木大輔は「ここ何試合か、先制した後に受けていたイメージがあったので、自分たちのペースで90分をやることをもう少し考えないといけないかなと思います。チーム全体でボール保持する時間を長くするということですかね」と今後の課題を口にした。
試合は結果的に1−1の痛み分けで、共に課題を残す形となった。なお、川崎Fは日曜日には中国へと移動し、来週火曜日のACL第5節・貴州戦に臨む。一方の柏は、水曜日に大宮で行われるヤマザキナビスコカップ第3節を戦う事となる。
以上
2014.04.12 Reported by 江藤高志
J’s GOALニュース
一覧へ【J1:第7節 川崎F vs 柏】レポート:ケガ人続出の川崎F、試合運びに難を残した柏の一戦は、1−1の痛み分け(14.04.12)
- 2024 明治安田Jリーグ終盤戦特集
- アウォーズ2024
- 2024J1昇格プレーオフ
- 2024J2昇格プレーオフ
- J3・JFL入れ替え戦
- bluelock2024
- 2024JリーグYBCルヴァンカップ
- Jリーグ×小野伸二 スマイルフットボールツアーfor a Sustainable Future supported by 明治安田
- AFCチャンピオンズリーグエリート2024/25
- AFCチャンピオンズリーグ2 2024/25
- はじめてのJリーグ
- FIFAワールドカップ26 アジア最終予選 特集ページ
- 2024天皇杯
- 明治安田Jリーグ 月間表彰
- 2024Jユースカップ
- シャレン Jリーグ社会連携
- Jリーグ気候アクション
- Jリーグ公式試合での写真・動画のSNS投稿ガイドライン
- J.LEAGUE CORPORATE SITE
テレビ放送
一覧へ明治安田J1リーグ 第37節
2024年11月30日(土)14:00 Kick off